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2020年1月17日 おむすびの日

2020年1月17日


聖美(きよみ)「はい、それじゃあ具材もご飯もしっかり準備したから、好きに作ってねー!」


 聖美(きよみ)は自宅に五人少女らを招待し、大きなおひつにご飯を入れて、その脇におむすびの具材になりそうな物をいくつも用意して広げている。


真凛(まりん)「わぁ~、こんなに沢山……すごいですねーっ、よぉし、頑張っちゃうぞぉ☆」


 今日はおむすびの日。聖美(きよみ)はおむすびをみんなで作って、みんなで食べる日にしたいと思いつき、みんなを招待したのだ。


留音(るね)「あたしあんまりちゃんとおむすびって作ったこと無いんだけど……うまく出来るかな」


聖美(きよみ)「大丈夫っ! 好きな形で作って、みんなで交換して食べよっ?」


 おむすびとおにぎり。言い方は違うが、聖美(きよみ)は今日は『おむすび』にこだわりを持っている。


イリス「……まぁ、今日くらいは休戦してあげるわ。聖美(きよみ)とアンジーのお願いだしね」


 イリスも髪を縛ってエプロンをし、留音(るね)と机を挟んで立っていた。


衣玖(いく)「オレンジのグミはないの? プリンと醤油は? あとバニラアイス」


アンジー「な、何を作るつもりなの……?」


 みんな思い思いにご飯を手に持ち、むぎゅむぎゅと手に力を込めて形を作り始めている。


西香(さいか)「ではわたくしも……」


真凛(まりん)「あ! 駄目ですよ西香(さいか)さんは! おトイレに入って手を洗わない人は駄目です! 誰かが毒物を食べることになるじゃないですか!」


西香(さいか)「失敬な! いくら汚れる事をしない体質のわたくしでも、流石に洗いましたわよ!」


真凛(まりん)「石鹸でですか?」


西香(さいか)「お水で!」


真凛(まりん)「出直してきてください!」


 西香(さいか)のことはあの子が連れていき、一緒に手を洗うようだ。別の場所では髪をまとめてあげた留音(るね)が気合を入れて黒い巨大な物体を押しつぶしながら用意された海苔を強引にくっつけようとしている。


留音(るね)「意外と形つくるの難しいな。海苔で固めちゃえば良いと思ったのになー」


イリス「あんた具材入れすぎよ……っていうかデカすぎだし……爆弾みたいになってるじゃない……」


衣玖(いく)「実際あるのよね、爆弾おむすび」


 衣玖(いく)は甘い香りを漂う物をかき混ぜながらそう言った。元々肌色と焦げ茶色の層だったものをかき混ぜて不思議な色合いになっている。


留音(るね)「好きなんだよな~、全部入れの最強おむすびじゃん。ママがなんでも入れてくれたんだ。唐揚げとソーセージとツナとおかかと……懐かしいぜ……で、お前は何やってんの……」


 衣玖(いく)が混ぜていたのはプリンだ。そしてそれに納豆を追加しているのを見て留音(るね)は流石に引いたような表情を見せている。


衣玖(いく)「具材を調合しているの」


 子供の実験のような表情で衣玖(いく)は納豆を混ぜ込んでおり、納豆とプリンの混ざった不思議な匂いが漂う。普段嗅がないような匂いが漂うのはイリスの経験ではよくあることのようだ。


イリス「もしかして錬金術なの?」


衣玖(いく)「未来料理よ」


 衣玖(いく)はその納豆プリンをご飯に詰めた。もう一方の小皿には少量のバニラアイスを入れて醤油を垂らした上でご飯を混ぜて水分を緩和し、それをおむすびの中央に塗りたくった。


留音(るね)「ヤバそうなのが出来てる……」


衣玖(いく)「大丈夫、絶対美味しいから。甘味と旨味と塩味の配分も抜群だから科学的に美味しいはずよ。新たなおむすびスイーツとして売り出せるわよ」


 その話を少し離れたところにいた西香(さいか)の耳がキャッチしている。あの子と一緒に手をちゃんと洗ってきたようだ。真凛(まりん)の許しを得ておむすびを作りながら「商売をするのならわたくしも協力しますわよ」と申し出ていた。


 更に別の区画では女子力が高い二人がキャッキャと女子数値の高いおむすびを製造している。


アンジー「出来たー」


真凛(まりん)「わ~っ、アンジーさんは器用なんですね~♪ いろんな形のおむすびかわいいです☆」


アンジー「ありがと~っ。丸形でしょ、俵型に、四角にしてみたのと……中身は全部ボクの好きなシーチキンなんだけどね。見た目色々するのは得意かもしれなーい♡」


 まさにアンジーらしいアプローチのおむすびだ。見た目はどれも小さな手の女の子が頑張って作ったんだろうなという感じが漂っている。


聖美(きよみ)「他にもやってみようよ! 星型とかハート型って出来ないかな?」


アンジー「やってみよっか♡」


 最終的にたくさんのおむすびが出来た。真凛(まりん)を始めとした数人はオーソドックスなおむすびを作り、留音(るね)は爆弾おむすびを大中小と生産した。衣玖(いく)の方は中身がとんでもないおむすびを作って、半ばロシアンルーレットのような状態となったのだが、食べてみると意外と美味しいもので、おむすび文化の浅いイリスなどは興味深そうに食べていたようだ。


 それぞれ好きなおむすびを手にとって、いただきますで一緒に食べる。


 今日はそれだけの日めくり。


 ただ。


 今日はおにぎりの日ではなく『おむすびの日』なのである。今日は握られたご飯を食べる事を制定した記念日ではなく、かの大災害があった時に炊きだされたおむすびによって人々が「つながり、むすばれた日」だから、おむすびの日なのだそうだ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  い、衣玖ちゃんの作ったおむすび、た、食べてみたいナ。ホントーに、ココロから。ワタシ、ウソイワナイヨ。
[一言] アンジーちゃん女子力高いしw。 やはり。「おにぎり」ではなく「おむすび」ですよね。
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