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2020年1月7日 七草の日

2020年1月7日


真凛(まりん)「せり……なずな……ごぎょう……はこべら……くっくっく……」


 いつものように真凛(まりん)は台所でニコニコしながら料理に興じている。今日は気合を入れているのか、大きな鍋をグツグツさせながらゆっくりゆっくり中を回し、まるで呪詛のように春の七草を唱えている。


西香(さいか)「あら真凛(まりん)さん、それは七草粥というやつですの?わたくし草っ葉ばかりのお粥なんて絶対食べたくありませんわよ。ちゃんと美味しくしてくださいな」


真凛(まりん)「大丈夫ですよぉ☆ これは食べるものではありませんから^^」


西香(さいか)「あらそうですの。見ればご飯は入ってませんわね。っていうか鍋、大きすぎませんの?」


 西香(さいか)の前には飲食店にもなかなか無いような大きさの、小さな子どものお風呂になってしまうようなサイズの鍋だった。


真凛(まりん)「……^^」


 真凛(まりん)は無言でそれをかき混ぜ続け、やがてまた呪詛を唱え始める。


真凛(まりん)「……ほとけのざ……すずな……すずしろ……けっけっけ……」


西香(さいか)「なんだかよくわかりませんが不気味な感じですわね。まぁ草っ葉ご飯を食べないで済むのならそれでいいですわ」


真凛(まりん)「よぉく煮込んで……」


 それから数分後、七草がよく煮込まれた事に満足した真凛(まりん)。「出来た☆」と鍋を持つと、真凛(まりん)の目の前の空間が歪み始め、「よいしょっ」とそこに入れてしまう。どこかの異空間に送ったようだ。それから何やら手紙を書きはじめ、それも同じように異空間行きである。


真凛(まりん)「さて、ちょっとお出かけしてきまーす^^」


 真凛(まりん)はニコニコと家を出ていった。


―――――――


アンジー「ねぇみんな、こんな手紙置いてあったっけ?


聖美(きよみ)「んん? 真凛(まりん)ちゃんから……イリスちゃん受け取ったの?」


イリス「知らないわ。聖美(きよみ)の家族が置いといてくれたんじゃない?」


聖美(きよみ)「読んでみよう。えっと……」


 いつの間にか置いてあった手紙は、封筒などに入れられてはいなかった。丁寧に折りたたまれたものがそのまま置かれているほど自然にそこにあり、聖美(きよみ)がそれを開いて読み始める。


『皆さん、今日は七草の日です。ところで知ってますか? 七草を浸したお水やお湯に爪を付けて、柔らかくしてから爪を切るとその年は風邪をひかないっていわれていたんだそうです。すごいですよね』


聖美(きよみ)「……だって」


イリス「はぁっ? なにこれ。何がいいたいの? うんちく?」


アンジー「あれ? 続きがあるよ? ……『みんなで外に出てください』? あれ、さっきこんな文章あった?」


聖美(きよみ)「わーっ、真凛(まりん)ちゃんから呼び出しかなぁっ? 行ってみよ! どこに行けばいいんだろう?」


イリス「怪しいわね。念の為魔力のチャージは怠らずにいよう」


 そうして外に出て、家のすぐ前に真凛(まりん)はいた。


真凛(まりん)「こんにちはー^^」


聖美(きよみ)「あっ、真凛(まりん)ちゃん!」


アンジー「どうしたの? 突然来るなんて珍しいね?」


 真凛(まりん)はニコニコ笑いながら、脇に鍋を置いている。


真凛(まりん)「ええっと、手紙は読んでくれましたぁ?」


イリス「読んだけど、なんなのあれ。さっぱり意図がわからないんだけど」


真凛(まりん)「わからないですかぁ? つまりですね、日本では古くから七草の水は体に良い効果を与えるって事が言われてきたみたいでぇ……今日はみなさんに七草の効能を味わってもらおうと思いまして^^」


アンジー「えっ! もしかしてそのお鍋、七草粥でも入ってるの?」


 真凛(まりん)は首を横に振りながら鍋のフタを開け、その裏に隠して置いてあったポンプ式の水鉄砲ショットガンタイプを取り出した。どうやらチューブを水の中に入れておくとそこから水を吸い出して発射できるタイプらしい。


真凛(まりん)「そぉれ☆」


 真凛(まりん)は取り出した水鉄砲をシュコシュコしながらためらわずにトリガーを引いた。顔は満面の笑みである。


イリス「ひゃあー! つめッ……あっつ!? あつ!!」


聖美(きよみ)「なになになに!? 真凛(まりん)ちゃん!?」


アンジー「あっつあっつあっつ!」


 逃げようとする全員をショットガンを持ちながら笑顔で追い回す真凛(まりん)。鍋の方はフローターでもついているのか、真凛(まりん)に合わせて軽々動いて追従する。


イリス「くっ! よくわからないけど襲撃ということね! 皆気をつけて! 真凛(まりん)はあたし達を驚異に感じて風邪をひかせて排除するつもりよ!」


真凛(まりん)「違います^^」


聖美(きよみ)「いやー! あっついー! でもさむいー! 濡れたところが寒いよぉー!」


アンジー「なんでー?! 真凛(まりん)ちゃんなんで!?」


真凛(まりん)「別に大した理由じゃありませんよぉ。爪を濡らして切るだけで風邪を引かないほどの七草水だったら、体を濡らせばもっと健康になれるはずだと思ったんでーす^^^^」


聖美(きよみ)「あれっ? 真凛(まりん)ちゃんもしかして……なんか怒ってない!?」


真凛(まりん)「全然怒ってないです~^^ わたしは心配してるんですよぉ? 昨日トチ狂った皆さんですからね、頭がとっても悪くなってしまったようなので、今日はちょうど七草の日ですから、これでよくなって欲しいなーって思って^^^^^^^^^」


アンジー「あっついあっつい!」


真凛(まりん)「我慢してくださいね~、これを体で浴びればきっと風邪はもちろん意味不明な考えをする悪い頭も良くなりますから^^^^^^^」


イリス「それあんたたちでしょうが! ってかお前が一番浴びろー!」


 春の七草の知られざる効果の紹介であった。(迷信?)

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― 新着の感想 ―
[一言] 怖い。真凛ちゃん、怖い。 笑いながらのところがすっごく怖い(^_^;
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