2019年8月6日(その1)はちr 広島平和記念日
2019年 8月6日
衣玖「んむー!!んっむー!!!むむむむ!!むー!!」
衣玖はふんじばりのぐるぐる巻にされて放置されていた。犯人は留音である。
真凛「あれ?留音さん、衣玖さんのこの状態はどうしたんですかぁ?」
部屋に入ってきた真凛がおよよと首を傾げて、悩み込んでいる様子の留音に声をかけた。
留音「いやな……今日の日めくりネタのためっていうか……衣玖はやむをえず封印した」
真凛「え~なんでですかぁっ、可哀想ですよぅ。お口までガムテープできっちり閉じちゃって……」
そう言って真凛は衣玖にテテテと近づいていくと、ベリベリとガムテープを(ニコニコしながら)ゆっくりはずした。衣玖も「んぬぃ!んぬぃ!!(痛い!痛い!!)」と一番痛い外し方に抗議している。いっそベリ!っと一瞬でやってほしいところだが、声を解放された衣玖は涙目になりながら叫んだ。
衣玖「ハチロクの日!!今日はハチロクの日!!だからイニシャルDの話するの!!イニシャルDの日なの!!!!藤原拓海の不敗神話とかっこよすぎるユーロビートの話をむー!!!」
衣玖の発言で展開を察した真凛は楽しそうだった表情を一転し、哀れみの瞳を浮かべてガムテープで再び衣玖の口を閉じさせた。鼻も一緒に閉じようかなと思ったが、流石にやめておくことにした。
真凛「なるほど、これは封印ですねぇ……」
留音「だろ?流石にこんな短期間でオタク会話3べんもいれらんねぇよ……先日も変なパロやっちゃったばっかりだし……」
衣玖「むー!!んむうー!!むんむんむん!!」
真凛「じゃあ……今日はどういう感じの日めくりにするんですかぁ?」
留音「うん。取り上げるかはすごい迷ったんだよ、ハムの日とかにしてお茶を濁すかのようにテンションでごまかす手もあるからさ。でもあたしらとは合わないかもしれないナイーブさもある話題だけど、今日は広島平和記念日って事を取り上げることにした」
真凛「はぇー。世界危機を1万文字以内で救ったり、早ければ1行で世界を破壊するわたし達が取り上げていい話題なんでしょうか……」
留音「そういうとこだよな、迷ったのは。でもまぁ、これに関してはそれなりに意見があるんだよ。あたしは元々広島で育ってるからさ」
真凛「そうなんですか?」
留音「うん。小学校だとこれくらいの季節には戦争の勉強を他の地域よりたくさんするんだ。それくらいの時期に転校もしてるから、広島から出て一番驚いたことは戦争の授業がほとんどなかったことだったんだよな」
真凛「へぇーっ。真面目な話してますねぇ」
留音「今日は割と本気で大事な日だからな。広島の小学校では映画とか見ててさ、戦争のすっげぇ怖いやつ。トラウマばりに戦争は絶対ダメだって思うようになったね。あと原爆の資料館とかも何度か行って……今は被爆再現した人形は撤去されてんだけど、あれは本当に怖かった。ドロドロに溶けていく途中の人の形でさ。だからこそあたしは置いておくことも大事だって思ってたんだけど、撤去は時代の流れなんだろうな。ひね曲がった自転車とか、原爆の光で家の壁に焼き付いた人の影とかの記録とか、あそこに行くだけで戦争は怖いって仕込まれると思うんだ。現物で置いてあるって衝撃は今でも忘れないからな」
とても怖いからこそ見た人の心の焼き付くというものであったが、被爆者の人の公聴会ではあれほど怖い人形ですらまだ真実ではなく、現実はもっとずっと酷かったという話を聞いたことを、留音は思い出した。
真凛「はえー……」
留音「あたしは戦争ゲームとかは普通に遊ぶけどさ、実際の話は本当にナイーブなんだよな。今日みたいな日は広島を離れた今も毎年思い出すんだよ」
真凛「良いことだと思いますぅ……でもなんか……正直ちょっといつもと違うアプローチすぎてどう反応すればいいのか戸惑いますよう……」
衣玖「……」
一同はしんみりと黙り込む。
留音「……で、この空気感はどうしたらいいんだ?」
真凛「さぁ……取り扱ったことのない空気なのでわたしにはなんとも……」
留音「良い感じの話のまま終わらせられると思ったんだけどなー……」
真凛「うーん……」
真凛は助けを求めるかのように衣玖のガムテープを再び(ゆっくり)外した。「どう思いますか?衣玖さん」ベリベリベリ……「んぬー!んぬい!!」……再び涙目になっている衣玖が芋虫のまま答える。
衣玖「だからハチロクパンダトレノからイニDの話ってしたかったのよ!」
留音「でもたまにはいいだろ、こういうのも」
衣玖「それはそれとして、慣性ドリフトとそのミームについて今からでも語らない?」
留音「語らないッ」
戦争は絶対ダメ。