2020年1月5日 遺言といちごの日
2020年1月5日
イリス「……まさか、この作品で本当に人死が出るなんて思わなかった……」
衣玖「そうね……なんだかんだで昨日も鬱陶しく生きてたのに……」
聖美「うっ……うぅっ……ぐすっ……」
留音「ほんの数日前だぞ……? 数日前に今年もみんなで一緒にって言ったばっかりだったのに……」
アンジー「どうしてこんな事に……五人少女の席が一つ空いたとしても……こんなんじゃそこに入ることなんて出来ないよ……」
あの子「(;^△^)」
真凛「まさか……西香さんが死んでしまうなんて……」
一体何が原因だったのか、それは誰にもわからない。
前兆はなかった。いや、誰にもわからなかったというのが正しいのかも知れない。西香はいつもどおり鬱陶しく、うざく、自己中でがめつい、サービス精神のかけらもない生き方をしていた。
しかしその彼女が突然、死んでしまったのだ。死んだ原因も、場所も、時間も、誰にもわからない。しかし多分死んでしまったのだ。
ある遺言をのこして……。
衣玖「でも仕方ないっちゃ仕方ないわよね……故人の遺言に従って、真凛。今日はおやつにいちごを食べなきゃならない。用意はしてくれた?」
真凛「はい☆……あっ、はい……新鮮ないちごを使ったケーキなんですけど、下をタルト生地にしてみました……」
留音「……てんご、地獄にいる西香も……きっと満足してくれるよな、とっても美味しそうないちごのケーキ」
聖美「うっ、うぅっ……美味しそぉ……良かったね、西香ちゃん……」
アンジー「ねぇ、その遺言って……どんな内容だったの……?」
真凛「……これです」
真凛は仕舞われていた故人の遺言を取り出し、喪服のミニーズに見せた。ちなみに喪服を着ているのはミニーズだけである。
イリス「えっと……『今日はいちごの日ですから、いちごを使ったおやつにしましょう』……これだけなの? あいつ、最後まで日めくりのことを……?」
留音が静かに頷いた。
留音「あぁ。それだけ遺して、あいつは出かけていった。ほんの3時間前の出来事だよ……こんな律儀に遺言をのこしてさ……」
アンジー「えっ、本当に死んでるの? それ……」
衣玖「誰も見てないけどね……多分死んだわっ……」
アンジー「(そうなの?)」
イリス「……世の中、わからないものね……ホント、物事って突然起こるから……」
真凛「でも、本人の願いですから……ミニーズさんたちもよく来てくれました。一緒にいちごの日をこのケーキで堪能して、西香さんを偲びましょう☆ あっ、偲びましょう……」
聖美「うんっ……きっと西香ちゃんも嬉しいと思うっ……みんなに想われて逝けるんだから……」
留音「……しっかり成仏してもらわないとな」
衣玖「じゃあそういうわけで……いただきます」
イリス「いただきます……。あまり話したことはなかったから……うざそうだなって思うところしか見えてこなかったけど……こうしてあんた達や日めくりのことを考えていた人だったって知ると、ちょっと複雑ね……」
留音&衣玖&真凛「(スルー)」
イリスは悲しそうな表情でケーキのかけらをスプーンに乗せて口に運ぶ。生クリームの甘さが気分にそぐわず、でも西香のために食べるのである。
粛々とした雰囲気の中で食べられるケーキ。それを食べ始めて少し経っての事だった。
突然、みんな揃っているはずのリビングの扉が開いたのだ。
そこから現れたのは他でもない、西香だったのである。
西香「戻りましたわよ~、はぁー、新年初ファンクラブで大変でしたわ……」
イリス「ぎゃーっ! バケモノ!!」
西香「えっ? わたくしに言いました?」
留音「お前……西香なのか……? まさか……生きて、た……?」
西香「死にますか! 懐かしい流れを……」
衣玖「で、でもっ! 遺言までのこして……もう3時間半も帰ってこないからてっきり死んだものだと!」
西香「あなた。人を貶めるためにおバカになる癖は直したほうが良いですわよ」
真凛「ケーキ全部食べちゃいました☆」
西香「普通に酷すぎませんの?」
聖美「……西香ちゃん、ぐすっ……生きてたんだぁっ……」
イリス「ご、ごめん、バケモノなんて言って……べ、別に生きてたからってどうってことないけど!?」
西香「なんですのこの人たち……わたくしもケーキ食べたかったぁー! わたくしが提案したいちごの日の日めくりでしたのにー!!」
アンジー「良かったね~、生きてて。あ、上のいちごは残ってるから、ボクのいちご食べる?」
イリス「あっ、じゃああたしも……ほら、この下のタルト生地のところあげるわよ」
聖美「あっ、私もあげるねっ、背中の一番クリーム付いてるところ……おいしいよっ」
西香「ミニーズの皆さん……」
ミニーズはあまりノリ気では食べられなかったため、まだ半分以上残っていたケーキの一部分ずつを西香に差し出した。五人少女組は普通にパクパク食べていたので殆ど残っていない。しかしそれはそれとして。
西香「……あなた方、出てきて早々に失礼じゃありません? わたくしが人の食べ残しを食べるものですか。もういいですわ。今日はいつもの貢金に加えて、ファンクラブ会員の皆さんから別枠でお年玉もいただいたのです。これで真凛さんが作るよりも三千倍は美味しい超高級ケーキを食べてきますから。東京まで行ってですわよ!! ざまぁ見なさい庶民ど……」
そこにあの子が、念の為西香に半分残しておいたと言ってケーキを差し出そうとするのだが、西香が失礼だ、なんて言うものだからごめんねと自分のケーキを取り下げたのを見た。
西香は焦りながらあの子の下げたケーキに飛びつきながら言う。
西香「な、何をおっしゃいますの! あなたのケーキがいただけるのならわたくしそれはそれでとっても嬉しいですわ! ああミニーズの皆さん、それはご自分で食べてくださいな。わたくしいらないので」
イリス「……」
聖美「流石西香ちゃん……」
アンジー「じゃあ……食べよっか」
イリス「そうね……あたしがバカだった」
留音「お前たちはなんも悪くないよ」
今日は1と5で語呂合わせから遺言の日であり、いちごの日。