2019年12月27日 ピーターパンの日
2019年12月27日
イリス「聖美! そっち行った!!」
聖美「わっ!と、とまってー!」
ミニーズの三人はある場所、森の中でホタルのようななにかを追いかけている。
アンジー「そ……そやーっ!」
アンジーは瓶の中に何かをばっちり捕まえた。中には小さな女の子のような見た目をした発光するなにかが入っている。
聖美「や、やった……アンジーちゃん! やったね!」
イリス「でかしたわよアンジー。さて、この子の粉をちょうだいしましょうか」
中に入った小さな小さな女の子はプイッとそっぽを向き、動く度にリンリンリンと鈴のような音が鳴っている。それに動く度に体全体からキラキラと光る粉が舞っている。どうやら妖精の類の生物のようだ。
アンジー「わー……ごめんね、ベルちゃん、ボクたち君の粉が欲しくて……」
聖美のこともイリスのことも見ようとしないそのベルちゃんだったが、アンジーの声は少し反応し、少し顔を向けてアンジーの話を聞いた。すると体をプルプル震わせて粉を落とし、どうだ満足かという顔を向けて、瓶を開けるように指示した。
イリス「やった! すごいわねアンジー、伝承だとこのフェアリーは女の子に辛辣で殺そうとするまであったらしいの。よく話を聞いてもらえたわね」
アンジー「まっ! ボクってば男らしいところあるからね!」
アンジーは優しく蓋を開け、妖精に「ありがとっ」と言うと、妖精はツーンとした態度で顔を赤くしてどこかに飛んでいった。並の女の子より可愛い男の娘に緊張でもしていたのかもしれない。
イリス「さて、これでもうネヴァーランドには用はないわ。さて、次は聖美が頑張る番ね。現実世界に戻るわよ」
聖美「う、うん!」
イリス「脱出魔法!」
こうして妖精の粉を手に入れたミニーズたち。聖美宅に帰るとイリスの魔法工房に入った。
アンジー「それにしてもイリスちゃん、このネヴァーランドの妖精からもらった粉でなにをするの?」
聖美「これ、空が飛べるようになる粉だよね……?」
イリス「やっぱりそういう認識なのね。実はこの粉は単に空が飛べるようになるだけの粉じゃないの。みんな勘違いしてるけどね」
アンジー「あの映画ではそんな感じに見えたけど……」
イリス「ノンノンよ。魔法世界でもこのフェアリーの存在は教典に書かれてるけど、実際のこの粉の効果は違うの。本当のところはね、これは信じたことを具現化させてしまう、という力があるのよ」
この妖精の粉は振りかけることで空を飛べるようになる、と思われているだけなのである。妖精の粉であるという点からその程度の可愛らしい効果だと思われているが、実際はそうではない。
これはプラシーボ効果を強く誘発するものなのだ。それは無機質にも反応し、みんなが『飛べるようになると思っている粉が何かに振られた』と認識した瞬間、木造の船であっても空を飛ぶようになる。それほどまでにこの粉の効力は凄まじい。
アンジー「でもイリスちゃん、これどう使うの……?」
イリス「ふふ、思いついたのよ。この『あると思ったことが実現する』粉をヤツらに振りかける。そしてヤツらに冬で日本が舞台のホラーやパニックものの映画を見せるの。そうすればどうなると思う?」
アンジー「みんなはホラーやパニックの現象に襲われる……?」
イリス「ご明察。この粉の効果でとんでもない事が起きるわ。それもヤツらだけにね。そこを叩く。もし頼ってきたならあたしたちが支配下に置く」
聖美「うー、ちょっと可哀想だよ……」
イリス「でも聖美、これはとても日めくり的な攻撃方法よ。なんてったって今日はピーターパンの日。パンの相棒であるベルちゃんの粉の正しい解釈を持ってヤツらを攻めるの。日めくりとしてね」
聖美「日めくりとして……そっか、そうだよね。五人少女ちゃんたちも日めくりネタで攻撃されるなら本望だよね……だってプロだもん」
アンジー「聖美ちゃん?」
聖美「わかった、やろう二人共! きっと五人少女ちゃんたちも望んでるし、ありがとうって言ってくれる! そうだよっ! ピーターパンは信じれば叶うって言ってた! その時に使った粉を使って、なにかを信じたらみんなはそういう目に合うんだね! それってとっても日めくり的だよ!」
イリス「ヤツらは日めくりを実行したことにもなるってわけ。どう? これなら聖美も悪くないでしょ? ただし……ヤツらには恐怖を味わってもらうことになるけどねっ!」
聖美「いいよいいよ! きっと恐怖なんて五人少女ちゃんたちが日めくりを実行する上では些細なことだもん! むしろ嬉しいって思ってくれる! わぁっ、私達がみんなの日めくりを手伝えるんだ……行こーっ!」
アンジー「……そっか、聖美ちゃんって多分ヤンデレ気質なんだなー……」
――――――――
で、見事に粉をばらまかれ、いろんな映画を見てすっかり彼女たちの現実にホラーやパニックの世界が組み込まれたのだが。
西香「なんかピエロの格好で殺人でも犯していそうな方が現れたんですけど、わたくしがあまりにも可愛いから好かれてしまいましたわ。ファンクラブに入れたんですけど、すっかりノリノリになっちゃって」
留音「あたしもさっき巨大怪獣が暴れかけてたけど一撃で葬ってしまったぞ」
衣玖「なにそれ。私も突然ロボットの大反乱に見舞われたんだけど二秒でハッキングして鎮圧したばっかりよ」
真凛「そうなんですかぁ? わたしはさっき巨大隕石が落ちてきそうだったのをぽいって払っといたんですけど……今日は色々起こりますねぇ」
みんな動じていなかったのである。強いてあげればあの子だけ、自分にはなんの力も無いと思っていることもあり、少し怯える目にあったのだが、この子は『みんなが一緒ならきっとなんとかなる』という仲間を信じる気持ちでパニックを乗り越えた。
という様子を外で観察していたのがミニーズだ。
聖美「わぁっ……流石みんなだよぉ! 日めくりのネタは崩壊しちゃってるけど……でもすごーいっ! みんな自分を信じて乗り越えちゃったんだぁ!」
イリス「くっそ……あいつら、万能感強すぎなんじゃないの!? もうちょっと自分の能力不信になって現実と向き合う大人になりなさいよ……ッ!」
アンジー「ここがネバーランドだったねぇ~……思いがけず素敵な事言っちゃった」
心にピーターパン、というかネバーランドを忘れない五人少女であった。