2019年12月24日(前編) 五人の妹達とあなたのクリスマスパーティ
2019年12月24日
これは今日という日にお兄ちゃん時空へと入り込んだあなたと過ごす、五人の妹たちとのお話。
日も落ちきった夜の事。あなたが少し疲れて帰ってくると、家は何やら賑やかであった。ただいまー、とリビングに入ったあなたを妹たちは出迎えた。
留音「おかえりアニキ」
西香「もー! 遅いですわよお兄様! わたくしお腹ペコペコなんですからっ」
みんなはどうやらあなたの帰りを待っていたようだ。料理が得意な真凛が用意したのであろう豪勢なクリスマス料理は、全て手付かずで置いてある。
真凛「手、洗ってきて下さいね、お兄さん☆」
真凛はあなたの帰りに合わせ、最後の仕上げを始めるべくばたばた動き始めた。それを妹のあの子も手伝っている。
あなたは洗面所に向かい、しっかりと手を洗って、服装をゆるめてラフめな格好に切り替えて再びリビングに戻ると、シーリングライト証明は消されていた。
部屋を照らし出すのはテーブルに用意された燭台の上でゆらゆら動くろうそくの火と、クリスマスツリーに飾られた綺麗な電飾、それから衣玖がゲームセンターで取ってきた小さくてプラスチックのような材料で出来たクリスマスツリーの光るミニチュアから発せられるカラフルな青や赤の光だけである。
いつもよりもずっと幻想的なリビング。その中心のテーブルで、妹たちは戻ってきたあなたを見て「早く早く」と訴えかけている。
衣玖「お兄ちゃん、シャンパン買ってきた?」
みんなのワイングラスは空になっている。あなたは頷いて、帰り際に買ってきたシャンパン……ジュースとして売り出されているシャンパンを取り出した。妹たちはまだ未成年で本物のワインは飲めないので、このジュースシャンパンが毎年の恒例である。
あなたはみんなのグラスにそれを注いであげることにした。その間に衣玖が端末を操作すると、家の中にはクリスマスソングが流れ始める。
真凛「さて、じゃあ皆で乾杯しましょ~!せーの……」
『メリー!クリスマース!』
みんなでコツンとグラスを当ててから、あなたはコクンと一口ジュースのシャンパンを喉に通した。みんなもそうして、留音は「ぷはっ!」と豪快に一口で全部飲んでしまったが、他の皆はグラスを置いてそれぞれ食べたい料理に手を伸ばす。
西香は先にクリスマスケーキを写真で撮っている。ネットに投稿するのだろう。
衣玖はクラッカーにチーズやきゅうり、サーモンなんかがマヨネーズだったりチーズやジャムなんかで色とりどりに飾り付けられた物から食べ始めた。
真凛やあの子、留音はチキンを食べ始めた。留音の食べ方は豪快だ、口の汚れなど気にせずにむしゃっと口を大きく開けてかじりついている。
あなたも気になったものから食べ始めて、シャンパンを挟んで。雑談をしながらみんなでクリスマスパーティだ。
真凛「は~っ、美味しいですね~!やっぱりクリスマスパーティは楽しいですね☆」
あの子「( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )」
真凛は本当に楽しそうにニコニコそう言って、あの子もうんうんと頷いている。そこに西香が口を出した。
西香「とは言えですわよ。お兄様、わたくしは心配ですわ。今日、この日に予定の一つも入らないなんて」
それを言ったらみんなについても同じ事が言えるのだが……しかしあなたは『何もなかったから妹たちと過ごす』事を選んだわけではないのだ。
あなたはこの年末の大事な日を、誰より家族と過ごしたかった。大事な妹たちと。あなたは率直にそう伝えた。妹たちは照れてるのか嬉しいのか、顔をほころばせている。
留音「あ、あっ、そうだ。なぁみんな、あれどうする……?」
留音はあなたにわからないことを思い出したように、みんなの表情を窺った。
真凛「出しちゃいましょっか、えへへへ……お兄さん、ちょっとまっててくださいね☆」
西香「まっ、期待して待っていなさいな。腰抜かしますわよ」
そう言って妹たちはみんなパタパタとリビングから出ていくと、小包だったり袋を持って戻ってくる。
一体なんだろう?あなたは少し首をかしげて彼女たちの行動を見ていると……。
留音「じゃ……はい、アニキ。これ、あたしからのクリスマスプレゼント……いつもありがと」
留音は顔を逸しながら、ん、と手を伸ばしてあなたに小さな箱を渡した。続いて衣玖も。
衣玖「これは私から。はいお兄ちゃん、メリクリ。いつもお疲れ様。後で一緒にやらせてね」
衣玖が渡してくれたのは小さめの本のようなサイズで、軽い箱型のものだ。一体なんだろうか、軽さから言うと本よりも
真凛「わたしは、このお料理やケーキもプレゼントですけどぉ……大好きなお兄さんに、はいっ、これもプレゼントです☆」
真凛は袋だ。少し大きめで、中のものはどうやらふわふわしているらしい。一体何が入っているのだろうか。
それからあの子もあなたにあるものを渡す。それはとても綺麗に編み込まれたマフラーで、袋に詰められていないし、商品タグもついていない。それに高級感のある糸はカシミアか何かだろう、あなたの事を思って編み込んだお手製の物だということははっきりと伝わってくる。
西香「さぁお兄様、驚愕しなさいな。わたくしはこれ。ゲームに課金するためのカードですわよ」
西香は自信満々にあなたにカードを突きつけた。周りから呆れ声が聞こえる。
留音「う、うわぁ……お前プレゼントの才能なさすぎ……」
衣玖「現金渡してるのと同じじゃない。風情もへったくれもないわ」
真凛「(しかも一番安いやつだぁ……)」
あの子「٩( *˙0˙*)۶」
西香「う、うるさいですわよ! わたくしがもらって一番うれしいものをプレゼントして何が悪いんですの!」
まぁ普通のプレゼントとしてもらうのであればなんとなく寂しいかもしれないそのカードだったが、でもあなたはわかっている。西香は本当に他人にプレゼントなんてしたことがないし、それに課金するためのカードなんて自分が一番使いたいはずなのに、それをあなたに贈ったのだ。値段や物はともかく置いておくとして、これは逆に気持ちが籠もっていると受け取った。
あなたはみんなにお礼を言った。みんな嬉しそうにしてくれたし、西香は「このカードで課金すれば最高レアの排出はほぼ確定したようなものですわ」と鼻高々である。
しかしお返しを用意していなかった。あなたからこの子たちに何かを差し出すことは出来ない事を伝えると、みんなはあなたにこんな事を言ってくれた。
西香「それは残念ですわ。でもま、お兄様はわたくし達の事を毎日面倒見てくださっていますし、それに毎日褒めてくださったりしてくれてますもの」
衣玖「そうそう、お兄ちゃんは毎日私達を気遣ってくれるし……私達のお人形まで作ってくれたりしてくれるし」
留音「それに絵書いてくれたりな。そういうの、あたしたちからちゃんとありがとって言いたくてさ。ま、クリスマスっぽくていいだろ?アニキっ」
真凛「そのためにみんなで予定を開けておいたんですもんね~☆お兄さん、大好きですよぉ♪」
あの子「これからも一緒にいようねっ」
可愛いサンタクロースたちはあなたに笑顔を向けて。
.。.:*♡メリークリスマス!☆゜・:*。+.