2019年12月22日 衣玖&西香のラブラブサンドの日
2019年12月22日
もう年末も近くなり、あなたはいわゆる冬休みというのを、この時期からもらっていた。
あなたの家には美少女たちが住んでいて、あなたを暇にさせることはない。最近は衣玖というオタク少女に誘われて、あなたはなんとなくスマホ向けのカードゲームを始めていた。
今日は予定がなにもないあなたは、こたつに深々と入り込んで机の上に置かれたみかんを食べながらスマホでそのゲームをプレイしている。
カードゲームでありながらリアルタイムの状況判断が必要とされるそのゲームは、自分と相手のカード効果の把握はもちろん、リーダーキャラのスキルの戦略、そしてまるでアクションゲームのように相手のカードに効果を重ねて発動するシステムの奥深さから、通常のカードゲームよりも更にマルチタスクな処理が必要なゲームである。
まだまだあなたのランクは低い。ちなみに衣玖はチャンピオンランクにまで入っており、始まったばかりのリーグ戦では既に決勝進出を決めている。
あなたがスマホに向かってピロピロやっていると、こたつの向かいに誰かが座った。
衣玖「う~、今日も冷えるわね。さぶさぶ」
衣玖はこたつに肩まで入り、顎を机の上にのっけている。衣玖がこたつの中に入った時に二人の足同士が触れたが、お互い何事もなかったように位置を変えてこたつのスペースを探した。
衣玖「何やってるの?」
衣玖はあなたが真剣にプレイしている様子を気にかけながら、あなたが剥いたみかんの一粒をひょいと片手で取り、自分の口に入れた。みかんは目の前にあるのだから自分で剥けばいいのだが、こんな事はしょっちゅうあることで、今更指摘する必要はなかった。
あなたは衣玖に、この前教えられたゲームを遊んでいると伝えると、衣玖は「ふーん」と、もぎゅもぎゅみかんを頬張っている。
あなたのゲームの勝負は佳境である。既にあなたのリーダーキャラの体力はわずかであり、巻き返しが相当難しい状況ではあったが、粘りに粘ってかなりの接戦に持ち込んだのだが負けてしまった。とても僅差であったため、あなたは小さなため息を吐いた。
衣玖「負けちゃった?」
あなたは衣玖に、難しいね、と照れ笑いをすると、衣玖はもぞもぞとこたつの中に潜り、あなたの隣からのそっと現れた。
衣玖「どれどれ、デッキ見てあげるわ。今は何色のリーダー使ってるの?」
衣玖はあなたの持っているスマホを覗き込み、横から細くて白い指を伸ばしてあなたのスマホをタッチする。お互い気遣って肩が触れないように絶妙な距離感を保っていた。
衣玖「ふーん、紫の4コス積みか、シナジー重視のコンボデッキは使ってて面白いわよね」
衣玖は細かいデッキ編成を見るためにこたつから身を乗り出し、あなたにもっと近づいた。その後ろから別の声がする。
西香「あら、お二人で何のゲームやってるんですの?」
西香はあなたと衣玖が見ているスマホの画面を、衣玖と反対側の肩越しから覗き込んだ。あなたの両隣に美少女の小さな顔が2つあって身動きが取れなくなった。
衣玖「前に布教したゲーム。西香はやってるの?」
西香「あぁ、あのやたら難しい……やってませんわよ。ガチャ引くだけ引いてカードは揃えましたけどね。お見せしますわ」
西香はそう言うと西香はあなたの肩を押して、この小さなこたつの一つの辺の部分に無理やり入り込んできた。いくら西香も衣玖も細身とはいえ、普通のこたつは一辺に三人が入るようには出来ていない。
あなたがスマホを置いてずれようとすると、衣玖はデッキの吟味の為にあなたのスマホを取って一緒に横にずれていく。衣玖はこたつの足のところまで行き、あなたも衣玖の肩がどうしたってあたってしまうくらいの近さまで来た。
西香「っとに寒いですわね。はい、わたくしのデータですわ。キラキラもシークレットも含めて全部獲得済みですわよ」
西香は机に携帯を起き、後は自分で見ろと催促して自分はこたつの中に両手をしまっている。
あなたは西香のライブラリ100%のデータに驚愕する。「これだったらどんなデッキでも組めて最強になれそう」なんて思いながら最高レアであるレジェンダリーカードを眺めていた。あなたが目を輝かせている様子を見た西香が横からグイっとあなたのことなどお構いなしに身を寄せている。
西香「どうです? 羨ましいでしょう。このゲームのルールはほとんどわかりませんでしたけど、とりあえず全てのレジェンダリーレアを全部デッキに入れた最強のデッキも作ってありますわよ」
ふふん、と鼻を鳴らす西香はあなたの持つ端末を操作しようと手を伸ばし、端末を持っているあなたの手に触れる。こたつの中でも温まりきらなかったらしい冷たい手だったが、一瞬触れた感触はすべすべしていて、あなたの背中にゾクっとした快感を走らせた。
だが西香の言葉に衣玖がはぁ?とあなたが操作している端末を覗き込む。
衣玖「全レジェンド入れても使えないわよ。ポイントに補正が入って場に出せなくなるんだから。同じ色にするか、テーマに沿って……うっわ、シクまで3枚入ってる……いくら課金されてるのこれ……」
西香「さぁ? ファンクラブから貢がれたお金ですからね。わたくしは出るまで引いただけですわ」
呆れ顔の衣玖はその端末をペラペラ触って、手持ちをオーバーしたカードが売られていない事に気付いたようだ。そのデータに興奮してあなたの事など忘れてしまったのか。ゲーム操作の為にあなたの肩に寄り添うような形になりながらゲームを操作する衣玖。その様子をじーっと見る西香もまた、あなたの肩に身を寄せて、あなたの心臓を高鳴らせた。
衣玖「なにこれカード余り過ぎじゃないの……普通ある程度揃ったら余ったカードを売ってゲーム内通貨で足りないのを揃えるのよ……」
西香「そうなんですの。庶民的ですわね。でもガチャで当てたほうがかっこいいでしょう?」
あなたはスマホの画面を中心にして衣玖と西香にギュッと詰め寄られて、おしくらまんじゅう状態にある。
衣玖「そうだ。西香のデータで前チャンピオンのデッキ組むから、私と一戦やりましょう。私はあなたのデッキを使って戦い方をレクチャーしてあげる」
西香「まぁっ、チャンピオンのデッキとは強そうですわね! ぜひ作ってくださいなっ!」
二人の体を通して感じる暖かさの方がこたつよりもずっと身にしみる。そんなことを考えているのはあなただけだろう。ドキドキする心臓の鼓動があなたの体に血液を循環させて、よりあなたの体をポカポカにしていった。
今日は毎月記念日のラブラブサンドの日。本来は食べ物のサンドイッチの事だが、これも一つのラブラブサンド、なのかもしれない。