2019年12月14日 討ち入りの日
2019年12月14日
イリス「今日は討ち入りの日ってあるんだけど、知ってる?」
アンジー「あー、忠臣蔵だよね。ボク聞いたことあるよ」
聖美「たしか仇討ちの話だっけ……よく知らないけど……」
イリス「ま、何かを倒すことが達成された日って事みたいよ。面白い。あたしたちも赤穂浪士とやらに倣って討ち入りをしましょう」
アンジー「わかった、本家ちゃんの家に攻め込むって事だね?」
イリス「あぁ……それも考えたんだけどね、今日はやめましょう」
聖美「じゃあどこに討ち入りするの……?」
イリス「それがね……近くでスイーツ食べ放題のイベントをやっている店があることを発見したのよ!! 今日はここに討ち入りするのよ!!」
聖美「え!!! そうなの!? 行きたい!!」
アンジー「わ~っ、ボクも一人じゃ行かないから……みんなでいこーっ♡」
イリス「討ち入りよー!」
―――――――
留音「……で、なんでこいつらがいるんだ?」
真凛「あ、変顔の聖美さんだ~☆」
聖美「ひゃー! 真凛ちゃーん! こんにちはー!」
イリス「今日で会ったが数日目……本家五人少女共! あんた達もこのスイーツ・カフェパラダイス銀扇店に来てスイーツ食べ放題に参加しようとしていたとはね! しかも三人しかいないとは好都合!」
あの子「(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)」
アンジー「(ドキドキ、あの子いる……いいとこ見せたい!)」
イリス「吉良上野介に挑んだ赤穂浪士の如くあんたらに決闘を申し込む!! 留音! それから真凛とあん……あなた! あたし達とスイーツどれだけたくさん食べられるか勝負をしなさい!!」
聖美「え、えぇ……私は普通に食べたい……」
アンジー「(大食いって可愛いのかな……あの子に可愛いって思われるかな……?どうだろ……)」
留音「おもしれぇ……言っておくがあたしはな、ここにはスイーツを食べに来てないんだ。一緒に出されるピザとか寿司とかで腹一杯にして帰ろうって、朝ご飯ろくに食わずに来てんだぞ?そんなあたしに敵うかな?」
イリス「上等よ。スイーツを飲み込むお腹はブラックホール並と言われたこのあたしの胃袋がここの軽食ごと飲み込んであげましょう」
真凛「もう、やるなら二人でやってくださいね。わたしはこの子とのんびり食べますから」
アンジー「あっ……ぼ、ボクも普通に食べたいかも~……」
聖美「私も……」
イリス「ちょっとぉ! 協力してよぉ!? せっかく3対1でボコすチャンスなのに!」
留音「へっ、怖気づいたか、テンプレ金髪ツインテ。一対一じゃあたしに敵わないって悟ってんだな?」
イリス「ぬっ……! 良いわ! 受けて立つ! 留音! お前にはオーディション会場で味わされた辛酸をこの甘いスイーツで返してやるわ!」
留音「上等! ケーキのコーナーはあっちだ!早速行くぞ!」
イリス「超楽しみよ!」
と、速歩きでそちらへ向かっていく留音とイリスの背中を見ながら聖美が呟く。
聖美「スイーツ好きなんだね、イリスちゃん……」
真凛「じゃあわたしたちはあっちでのんびり食べましょー☆変顔の聖美さんも可愛いアンジーさんも一緒に食べますかぁ?」
アンジー「え!? いいの!? ボクも一緒に食べたい!」
聖美「やったー! 私もー!」
真凛「席は自由ですからね~。この店はですねぇ、食べ放題の店の中ではしっかり清潔なんですよぉ。他の店より値段が高いというのはありますけど……でもお皿がちゃんと洗われてておすすめなんです^^食べ放題の店は汚かったりすることがあるとすごくげんなりするんですけどね、この店は安心なんだぁー☆」
聖美「そうなんだ~! あの、ところで真凛ちゃん、西香ちゃんと衣玖ちゃんは今日はいないの?」
真凛「うんとぉ、西香さんは安い食べ放題なんて貧乏人みたいでプライドが許さない、なんて言って来なかったんですよぉ。衣玖さんは元々あんまり食べませんし、人がいっぱいいるから遠慮しておくって、お留守番してるんです」
聖美「へぇ~! そっかぁー! はぁー! 留音さんかイリスちゃん、どっちかが食べすぎで倒れたらここにいる五人で五人少女みたいになるかもー!」
アンジー「聖美ちゃん、なんかたまにそういうこと言うよね……でも今はボクもそれ賛成!ねぇねぇ! ボク達後輩だし、真凛ちゃんと……あ、あのっ、あなたの食べたいスイーツ持ってきます!何が食べたいですか……?」
アンジーはあの子を直視できないで、それでも一生懸命言葉を聞こうと手をぎゅっと握りながら訊ねている。
真凛「わぁ、いいんですかぁ? じゃあとりあえずフルーツタルトとモンブランから行こっかな~。この子はいつもショートケーキから行くんだぁー」
アンジー「お、おっけー! 聖美ちゃん! 用意してあげよ! 聖美ちゃんは真凛ちゃんのやつね!」
聖美「あ、う、うん!」
アンジーは聖美の手を引っ張り、目を凝らしてショートケーキを探した。
一方その頃イリスと留音。
イリス「しかし留音、あたしらの討ち入りの日に合わせて居合わせるとは災難だったわね……見なさい!このとりあえず一種類ずつ並べたケーキたちを!討ち入りを果たす赤穂浪士が如く合計で四十七個載っけたわ」
留音「……イリヤ、お前言っとくけど、食べ放題で取ったの残すとかしたらまじで印象悪いからな……?」
イリス「あたしはイリスよ……。それにちゃんと食べるし。余裕でしょこれくらい」
留音「ならいいんだけど……」
戻って聖美とアンジー。
アンジー「はい! こ、これどうぞ! ショートケーキ……っ」
あの子「(*ฅ́˘ฅ̀*)」
聖美「(ふぁー……ほんとこの子かわいいな~……)」
真凛「あ、わたしのもだ。ありがとう聖美さん、アンジーさん。わたしたちもドリンク用意しておきましたよぉ」
アンジー「えぇっ!? ボクの分も!?!?」
真凛「はい。この子が持ってこさせるだけじゃ悪いからって」
アンジー「この子が用意してくれたの!? ひあああああ!」
聖美「あ、アンジーちゃん?」
アンジー「あ、ごご、ごめんっ……(この子が触ったコップこの子が触ったコップこの子が触ったコップ)」
真凛「あれ? アンジーさん、顔真っ赤にしてどうしたんですかぁ?」
アンジー「お腹いっぱいになってきた……」
それから留音とイリスは食べ放題決闘を繰り広げ、チェックアウト数分前。
留音「……うぇっぷ……嘘だろお前……」
イリス「ここ大丈夫なのかしら、経営。こんなに美味しいのに食べ放題なんて。正直心配になるわ」
真凛「イリスさんはたくさん食べますねぇ~。これは留音さんの負けかなぁ」
留音「いやぁこれは無理無理、あたしの負けだぁ……イリス……じゃなかった、イリヤのペース落ちてねぇし……」
イリス「イリスよ。言ったでしょ、あたしの胃袋はスイーツブラックホールだって。悪いわね留音。コテンパンにやっつけてしまって。さて、大勝利を収めてしまったしそろそろお会計に行くとしましょうか」
聖美「そうだね~っ、あー楽しかったし美味しかった~!」
アンジー「ほんと最高だった……ボク絶対五人少女に入ってこの子とカップリング曲歌う!」
真凛「それは許されませんね^^」
そんなこんなでお会計を一人ずつ済ませていった。だが最後の一人というところで顔を青くしているのがいる。
イリス「……ちょ、ちょっと待って。聖美、お会計って一人ずつなの……?」
聖美「……えっ?」
イリス「……だ、だって食べ"放題"でしょ? 一人でたくさん食べる人もいれば、少ない人もいて……グループで一人が払えばいいのかなって……ここ高いし……あたし料金の半分とちょっとくらいのお金しか持ってきてない……」
聖美「え、えぇっ……! 私も自分の分を払えるお金とちょっとしか持ってきてないよぉ……!」
アンジー「ど、どうしよう……ボクもだ……本家の子にお金借りるなんて出来ないし……」
聖美「え、延長するって言って、その間にお金持ってくる……?」
イリス「ご、ごめん……あたしがなんにも知らなくて……」
店のレジ前で深刻そうな顔の三人に留音が気付いた。財布を出し合って青ざめているイリスの様子に何かを察したようだ。
留音「あー、イリヤ。討ち入りに負けたあたしは罰ゲームだな?」
イリス「……え?」
留音「と言ってもなぁ。あたし最強だし。しょうがね、お前の分の代金肩持ってやるよ。今日は負けたからなー」
イリス「へっ……?」
そう言って留音は半分ほどの料金を出して店から出ていった。半分ならイリスの持ってきたお金でなんとかなる。しっかり払って財布がほとんどすっからかんになったイリスは留音を必死に追いかけて言った。
イリス「留音!! 一体何のつもり!? あたしを浅野内匠頭ばりにバカにしたつもり!?」
留音「え? なんだそれ? いや、普通に罰ゲームってつもりだけど……」
イリス「絶対許さないんだから……! お金は今度絶対返す! そしてお前を倒す!! そして……お前に超上から目線で無償の施しを授けてやるんだからぁ!!!」
留音「何言ってんのお前?」
こうして更に対立が深まった。吉良家と赤穂浪士ばりに(?)因縁浅からぬ五人少女とミニーズであった。