2019年12月11日 胃腸の日と100円玉記念日
2019年12月11日
聖美「ねぇみんな、良いことを思いついたよ!」
アンジー「う?」
イリス「本家のヤツラを誅する妙案?」
聖美「う、うーん……倒すっていうか……みんなと仲良くなって取り入ることで本家入を目指そうって……」
イリス「聖美は甘ったるこいわね。でもあたしたちは気軽に意見出来る関係を作りたいからね、聞いたげるわ」
聖美「うんと……今日は胃腸の日でしょ、だから日めくり大使として意識の高い本家のみんなだったらきっとみんなでお腹を壊すと思うんだっ! 例え壊してなくても魔法とかでそうしたら本家の人たち助かると思うし……イリスちゃん、出来る?」
アンジー「聖美ちゃんから見た本家の人たちはそういう認識なんだね~……」
イリス「もちろんあたしの魔法で腹痛くらい起こしてやれるわよ」
聖美「良かったっ! それでねっ、私達は腹痛になったみんなに胃薬をプレゼントするの! そうしたら本家のみんなのお腹を治して『ありがとうミニーズ!』ってなって、今日の日めくりを一緒に出来るでしょっ? そうなっていったらいずれ自然とコラボが出来て、なんだかんだで本家入りしてくと思うんだぁ!」
アンジー「(なんだろうこの違和感。……ナイチンゲール……代理ミュンヒハウゼン……いや、違う……)」
イリス「なるほど、恩を売るという事ね。そしていずれヤツラの深部に入り込み壊滅させる……良い作戦ね!! やるじゃない聖美! 弱っていたら助ける、まではともかく、弱っていなかったら弱らせてから助けるって発想はこの子少し怖いなって感じるところもあるけど全体的に良い作戦だと思うわ!」
聖美「う、うん! じゃあ胃薬買って行こっか! 本家のみんなのところ!」
アンジー「よーっし、行こー。またあの子に会えるかなー……」
――――――――
西香「うっぅ……つらい……つらいですわっ……うっぐ……」
五人少女の家では西香が一人、机に突っ伏して涙を流していた。
西香「こんなのあんまりですわぁ……」
そこに現れるミニーズ達。窓から様子を窺い、苦しそうにうめいている西香を発見した聖美はダダっと駆けていって家に無断侵入した。
聖美「さ、西香さんっ、お腹痛いの!? お薬あるよ!!」
西香「は? ……お腹なんて痛くありませんわよ。っていうか突然現れてなんですのこの人……薬の押し売り……? こわぁ……」
聖美「ち、違うよ! 聖美だよぉ……ほら、変顔の……」
西香「あぁ、あなたですの……変顔さん、何しに来たんですの……? 他の皆さんはわたくしに残酷な仕打ちをしてどこかに買い物に行ってしまったのに、来るのは変顔の人なんて……」
イリス「あら、西香一人なの。……ひょっとして今だったらこの家制圧出来る……?」
アンジー「みんな買い物かぁ……あの子もいないよね。ざんねん」
聖美「西香さん、お腹痛くないの……?」
西香「だから痛くないって言ってるでしょうに」
聖美「日めくり……今日は胃腸の日なのに……? あっ、じゃあもしかしてみんなが買い物に行ったって、いつお腹が痛くなっても大丈夫なように薬局にお薬買いに行ったとか……?」
西香「はぁ? 違いますわよ。あのですね、今日は忌々しい100円玉記念日ですわ。それでトチ狂った真凛さんが『今日は100円のありがたみを味わうために駄菓子屋で100円分のお菓子を買いに行きましょ~☆』なんて言い出して!! 意味分かんないですわぁッッ!!!!」
アンジー「そんな叫ぶほどに?」
聖美「胃腸の日じゃなくて100円玉……そっかぁー、さすがだなぁー……」
西香「100円! 100円ですわよ!! 一体何が買えるというんですの!? 駄菓子て!! 考えられないじゃありませんかぁ!!!(机バン!)」
イリス「(びくっ)」
アンジー「100円あれば意外と買えるよ? 10円チョコとかグミとか、あとブタメンとかも結構お腹にたまるし」
西香「わたくしが! この高貴なわたくしが10円のチョコなんて食べたらお腹を壊してしまうかもしれなっ……はぁぁぁぁ! わたくし気付きましたわ!! あなたたち! それですの!? それでわたくしに胃薬を……! さては真凛さんの回し者ですわね!? わたくしにそうやって駄菓子を食べさせお腹を壊させて毒殺しようと……!」
聖美「毒殺なんて! そんなことするわけないよぉ!」
イリス「(西香、意外に鋭いわね。こいつも侮れないか)」
そして西香はどこからか取り出した刃渡り銃刀法ガチ違反のガチコロナイフを取り出した。
アンジー「うわ! ちょっとやめてよ西香ちゃん!」
西香「あなたたちが悪いんですのよ……真凛さんと組んだりするから……わたくしに小銭の使い方なんて教えようとするからっ……!お金は紙だけでいいの!100円玉なんていりませんわ!!」
イリス「くっ! まさか戦いになるとは! 下がりなさい聖美、アンジー! あたしが動きを止める! 『お腹痛くなる魔法』!!」
アンジー「あ! すごい! ちゃんと魔法使った!」
だがその魔法の光子を西香は難なくナイフで切り払った。
イリス「なな、なんで!? あたしの魔法がかき消された!?」
西香「100円じゃ何も買えないでしょうッ!!」
アンジー「まずいよ……西香さんはお金と特別な関係を持ってるんだ……それをボク達が壊そうとしてると思って……タガが外れちゃってる!」
イリス「お金と特別な関係!?」
西香「ヤンデレ突きィィ!!!」
聖美「きゃー! 撤退! てったーい!」
イリス「覚えてなさい! 五人少女共ー!」
アンジー「一人に負けたんじゃない! 一人とお金の絆にやられたんだ―!」
西香「100円なんて……100円なんて……! うっぅっぅ……」
――――――
一方その頃、他の子達は木造の古めかしい駄菓子屋に来ていた。ボロボロの見た目で、立て付けガタガタの戸は走らせるとガラガラと懐かしさを感じさせる音を持ってみんなを迎え入れた。
真凛「わー、ここが駄菓子屋かぁ……すごーい。可愛いお店ですね~」
衣玖「うわっ、まだあったのね、シンドウ屋。懐かしい……」
留音「小学校の時によく来たよなぁ、100円握りしめて」
あの子「(っ ‘ ᵕ ‘ c)」
真凛「留音さんと衣玖さんの想い出の店かぁ」
真凛とあの子はワクワクしながら店内を見回し、留音と衣玖は昔の配置を思い出しながら店の中を見ている。店内に貼ってあるポスターは同じだが、色合いは昔よりも味を出していた。当時から年中貼ってある『かき氷80円』の文字を見つけた留音が嬉しそうにしている。
衣玖「さて、ここに来たら私はポテトスナックとサイコロキャラメルとグレープ餅の黄金メンバーを探さないと」
留音「あ、ブタメン値上げしてる。あたしはヤングドーナツと、棒ゼリーと……」
衣玖「ない……ポテトスナックもサイコロキャラメルも……カルミンもない!あ、グレープ餅はあった……」
昔と違って値段が変わったり、生産が終了したお菓子も多かったが。
真凛「見てくださ―い! プリンちゃんチョコですって! かわいいー! わたしはこれと……わ、うんちょこ! あは、変なのー」
あの子「♡(。☌ᴗ☌。)」
駄菓子屋で100円縛りのワクワク感はやっぱりすごいのである。