2019年12月6日【FA(フェルトアート)+FA(ファンアート)特別回】静かな衣玖ちゃん
2019年12月6日
五人少女たちの家から奇声が響き渡っている。
西香「ぶえっ!ぶええええああああああんん!!!ふええええええええん!!」
留音「めちゃんこ泣いている西香と……」
衣玖「はぁ~……(ぽや~)」
留音「乙女の吐息の衣玖。なるほど状況はわかった。どうやらまた絵が届いてしまったか……」
留音はこれまでに何度かあった状況に照らし合わせて、今のこのカオスな空間をそう推理した。だが真凛が静かに首を振る。
真凛「それが……違うんですよ留音さん……あれを見て下さい……」
あれって?留音が真凛の指先から視線を這わせて行くと、そこには……
可愛らしい人形が置かれていたのである。
留音「……なんだと……」
真凛「そうです。お人形さんです。羊毛フェルトで作られた衣玖さんのお人形さんです……」
真凛の説明に合わせ、床に転がる西香がドタドタと幼児ばりに暴れまわる。
西香「やあああああああ!!やあっ!やぁっ!!やぁだぁぁぁぁ~~!!びええええ!!」
衣玖「はぁ~……(つんつくつん)」
西香の奇声が届いていないのか、衣玖は一人だけで別の空気感でうっとりしながらちょこんと座った人形を指でつついていた。
留音「まじでか……一人だけ立体化したってのか……それは予想外だったな……にしても良く出来てるわこれ……」
真凛「ほらっ、お洋服までフードの可愛いの着てますよっ……いいなぁ~……」
留音「衣玖がファンアートもらったとき(↓参照)のやつじゃん!ひゃー……」
人形を衣玖のサイドから覗き込む二人。西香は起き上がり、目を真っ赤にしながら地団駄を踏みながら反論する。
西香「がわいぐない!!わだぐしの方が!可愛い服きてるもおおん!!」
留音と真凛はすっかり無視をして、人形をいろんな覚悟から見ている。
留音「髪とかもしっかり再現されてるなぁ、無造作っぽい感じで……いやぁ……フッツーに羨ましいぞこれ……」
西香「してな゛い!!ハゲ!!はぁげッ!!衣玖さんほんとはハゲなのに!!全然再現じでない!!!」
あの子が寄り添ってよしよしと撫でると、西香はその子を引き込むようにぎゅぎゅっと抱きしめてびええんとまた泣いた。
真凛「……西香さん……。実際髪が無くなったことはありましたけど……」
留音「流石にちょっと可哀想になってきた」
衣玖「西香。そう気を落とさないで」
西香は片目で見える程度に顔を動かして衣玖を見て、続く言葉に耳を傾けた。
衣玖「あなたにも世界に1人くらいファンはいるわよ、多分。……ってこのふわふわお人形の衣玖ちゃんも言ってるわ」
西香「……あ゛あ゛ああああああん!!がわいいい!!!ずゅるいいいいでずわああああ!!」
衣玖「はー……うれし……」
衣玖は想い出の写真でも眺めるかの如く人形を見つめて微笑んだ。
そして多分、いつか西香にも良いことはあるはずだ。