2019年11月18日 あのネズミの誕生日
2019年11月18日
衣玖「今日はあのネズミの誕生日よ」
なおネズミの描写はしないものとする。
留音「あの名前とか姿を出すとめちゃくちゃ怒られるらしい夢の国のネズミか」
西香「あのネズミ、なんであんなに人気なんでしょうね」
真凛「かわいいじゃないですかぁ。まんまるで、芸達者ですし」
西香「今でこそそうですけど、あれの1作目の映画って見たことありますの?意味不明でめちゃんこつまん」
留音「おっと伏せ字でも怖いからやめとけ?」
衣玖「あのネズミは実際たった数分の尺しかない映画で人気を獲得してきたのよ。時代的に競合する相手があまりいなかったことももちろんあるだろうけど、それでもほぼ単一の設定で表現豊かにたくさんの人を楽しませてきた作品として、私達に通じている部分がある」
留音「それこっち基準で考えんの?」
衣玖「まぁ私達も系統としてはそっち方向に入るつもりで活動してるからね。迎合するつもりは無いわよ。でもちょっと参考にしてみようかなって。というわけで、はい、それぞれこれ付けてね。私は普通のネズ耳。ルーは垂れ犬耳、真凛はリボン付きのネズ耳、西香は水兵帽子」
留音「なんだこれ? 夢の国のグッズかよ? あの子にはないのか?」
衣玖「グッズじゃないわ、私のお手製よ。だからつけるとその動物の特徴を得るわ。この子はやっぱりプリンセスじゃないとダメだと思ったし、今日は監督役に徹してもらうことにしたの」
真凛「うわ~っ、わたしミニーちゃんだ~☆」
真凛らは楽しそうにそれを装着している。西香もなんとなく被ってみた。くっつくように装着されたそれらのグッズは、衣玖や真凛には大きな耳を発現させている。
留音「出すな出すな、名前は怖いから」
言いながら、留音も犬耳をくっつける。長めの犬耳がちょろんと留音の頭に垂れた。ちなみにここには口癖もプラスされている。そして西香の方は……。
西香「うーん、わだくじゔぁドナュ……て゛ぇっ! ぢょっどぉ!? だんでぇ! わ゛たくし゛の声゛ごぉんなじゃがれ゛でる゛んですの゛ぉ!?」
一度聞いたら印象残りまくりのカスレ声というか、独特すぎる変声を遂げていた。
衣玖「アイデンティティだからね、ダックの」
留音「良かったなー、絵と音無くて……アッヒョ!」
戸惑う西香をよそに衣玖も装着。これで四人はネズミ中心のメインメンバーの特徴を得た。
衣玖「じゃあ始めるわよ。……ハハッ!(裏声)」
留音「っていうか何が始まんの? アッヒYO!」
衣玖「何って、そりゃああの作品の空気感をこの身で体験し少しでも一体化することで何かしら天啓を得ようという事よ。……やぁミニー!(裏声)」
真凛「まぁミッキー! こんにちはっ! ウフフフ」
裏声の衣玖に呼応して、真凛もお上品さを全面に押し出し、トロんとした高い声で笑う。
留音「アッヒョ!? 待てって! 名前はまずいって言ってんだろ! 変えろ変えろ、何かを特定できない形に変えた上で発言しろよ!? あと裏声の注釈はいらねぇから!」
西香「わだぐじのごゔぇをもどじでくださるぅ゛ー?! ぐわうわうわうわう!」
衣玖「なによ。ミッキーもミニーも普通の人名で呼ばれるんだから別に何もおかしくないのに……仕方ない。じゃあ改めて。……やぁミネルヴァ! 今日はとってもいい天気だね!」
真凛「こんにちは、マイケル。ウフフフっ↑、今日は絶好のデート日和ねっ」
衣玖「そうだね! ずっと楽しみにしていたんだ、さぁ行こうっ! ミネルヴァ!」
真凛「えぇっ、公園へ一緒にピクニックねっ♡」
西香「ぢょっどぉ!! わだぐじのご! ゔぇ!!」
衣玖「(ぐ~……)」
真凛「まぁっ! マイケルったらお腹が減っているのかしらっ?」
衣玖「ハハッ、実は朝ごはんを食べていなかったんだ、ミネルヴァの作る美味しい~! ランチをお腹いっぱい! 食べたくてねっ!」
真凛「ウフフフっ、もうマイケルったら! それじゃあ行きましょう♡」
衣玖と真凛はものすごいオーバーリアクションで手を大きく回したり、くるりと回りながら喋っている。それをついていけんと見ていた留音が腕組みしながら口を開いた。
留音「うーん……なんていうか……」
衣玖「何だいっ? 何か天啓が降りてきたのかいっ?」
留音「いや……やっぱりあの夢の世界ってさ。絵っていうか動きがあってこそなんだなぁって」
西香「どぼじでぇ! わだぐじだげっ! ごんな゛ごゔぇでずのぉ!?」
留音「なんていうか、あのキャラたちの会話ってやっぱりあのキャラが言ってるからこそ成立しているもんなんだよなって再確認したっていうか。それにマイケルとミネルヴァじゃなんか普通の洋ドラに出てくるただのバカップルっぽい」
真凛「こんな事言われてるわよぉ? マイケル」
衣玖「ハハッ、じゃあぼくたちのどこが普通の洋ドラに出てくるバカップルっぽいのか教えっ、ホントだわ。裏声じゃなかったら完全に普通のバカップルの会話ね」
留音「喋ってる途中で素に戻るなよ。でもそうなんだよな、実際に夢の国でもありそうな会話だけど、考えてみりゃあのネズミ達の話してる会話の内容って割と普通だよなーって」
西香「ぐわ! ぐゔぁー! へぶぶぶぶぶbbb……ぢょっどぉー!」
衣玖「なるほどね。非現実的でコミカルな動きであったり、独特でちょっと間の抜けた音の使い方であったり……セリフのほとんどないアニメであれほど人気が出たんだから、それはアニメーションの素晴らしさが彼らの人気の理由、ということね。会話だけ再現したところで仕方ない話か……」
留音「うん。多分動きありき、音ありきで面白くなるのがあのキャラ達でさ、きっと小説とかになったら彼らの持つ独特の温かみみたいなのが薄れちゃうんじゃないかなって思ったよ。ネズミの裏声も、アヒルの濁声も再現出来ないし、ただの文字には荷が重いよなって」
西香「ぢょっどぉ!? ぎいで、るんでずのぉ!? ごのごゔぇ!! どっでぼぉ! じゃべり゛にぐいでずわよぉ゛!!」
真凛「西香さんだけ薄れるどころか濃くなってますけど……」
西香「へvvvvvvv!! ゔぉぇっ! ごのじゃべりがだ!! はぎぞうに! なでぃばずゔぁ!!」
留音「……ぷ、ふっ……ぷふふ……」
衣玖「アニメーションの素晴らしさが理由といったけど補足しましょう。もし西香の言葉を文章で表したとしてもきっとどういう喋り方をしてるかわかる人もいるでしょうし、やっぱり一度確立したものってなんだかんだ強いってことね」
ちなみに真凛と衣玖は2013年にショートアニメで登場したあのネズミの作品「あの・ネズミ!」はかなり好きらしい。レトロとグロを合わせたような現代のあのネズミらしくないアメリカンな映像表現には感銘を受けたそうだ。