2019年11月17日 将棋の日 ルール知らない二人のエクストリーム将棋エンカウント
2019年11月17日
いつものリビングに二人。留音と西香がとあるものに気付いたようだ。
留音「ええっとなになに?『今日は将棋の日です。二人で対戦してみて』だって」
西香「はぁ。これですわね、将棋?」
留音「対戦って言われてもな。西香これのルール知ってる?」
西香「さぁ。お互いにこの小さい駒を何かしらやって勝敗を決めるのでしょう?」
留音「うん。王を取られると負けなんだっけか。まぁとりあえずフィーリングでやってみよう。じゃあ西香からでいいよ」
西香「えっ。なんでですの?先の方が不利なんですの?」
留音「いや知らんけど……あたしからでいいの?」
西香「いえ、それでしたらわたくしから。確かこの駒同士を重ねる感じで戦っていたような気がしますわね……どうすればいいのでしょう……ではわたくしはこの角行さんをこの下にある桂さんのお宅のお馬さんに乗せますわ」
留音「あぁなるほど、そうやって装備していく感じなのか。……角行って誰?」
西香「多分、この将棋の国の中での武将ですわ。きっとこの名もなき歩兵達を一騎当千する強さを持った方ですわよ」
留音「あぁ武将の名前か。……でも将ってついた駒が四つもあるぞ?これは?王将も含めて五人?」
西香「よく見てくださいな留音さん。馬と書かれたユニットが二つ、車と書かれたユニットが三つあるでしょう?それぞれ何かに乗せることが最初の手の使い方なんですのよ」
留音「なるほどなぁ。お前さてはこれ遊んだことあるだろ。じゃあ……あたしは一番強そうなこの飛ぶ車ってのに王を乗せるぞ」
西香「飛ぶ車……将棋って古いゲームかと思いましたが、意外に近未来な一面もあるんですのね。ではわたくしは突撃隊長ということで銀の将軍に飛ぶ車を与えましょう」
留音「かわりばんこにやるのだるいな。もう全員なにかに乗せてからで良くないか?」
西香「そうですわね。ではこっちの金と銀の将軍を……あれっ、待って下さいな。金と銀……?これはひょっとして将軍ではなくて、財政を司る政府の者なのでは……?」
留音「あっ、そういう事?自国の石高みたいなの管理してる感じの人?」
西香「きっとそうですわよ……お金の管理を任された役職でしょうから、きっと金も銀も攻撃のステータスは低めに違いありませんわ」
留音「あ~っ、なるほど、そこが戦略に繋がってくるのか。弱い財務省のお偉いさんを戦場に引っ張るのか、この前に沢山いる歩兵を馬に乗せるかって?」
西香「わたくしやっぱり飛ばない方の馬と車はそれぞれ歩兵に割り当てますわ。というわけで、この良い香りの車でそちらに突撃!」
留音「うわ!!来たか……車相手じゃ歩兵三人くらいかかるだろ。じゃあこのへんの歩兵でお前の車を一斉に包囲したぜ。これでもうその車は動けないー」
西香「ならばこちらから馬に乗った角行さんがかけつけますわ。はいどーん!歩兵三人くらい真の武将である角行さんにかかれば一瞬ですわよ」
留音「出たか角行!じゃああたしは財務省の四人と歩兵全員で角行を打ち取るか。流石の角行もこの人数相手じゃ立ち回れないだろ。しかも財務省の金と銀の一人ずつは馬に乗せてるからスピードでも馬にのった角行と互角くらいだからな」
西香「くっ、でも角行さんは真の武将ですわ。馬に乗っている人は打ち損じてしまうかもしれませんが、馬に乗っていない兵士たちは一網打尽ですわよ」
留音「さすが角行だな……じゃあ仕方ない。あたしの角行は香りの良い車にのってそっちの陣営に突撃させる。で、こっちも歩兵を一騎当千だな」
西香「あぁー!歩兵がっ!でもそんな雑兵はいりませんわ。わたくしは財務省の四人が健在ですので、この方たちでそちらの角行さんを包囲いたします」
留音「無駄無駄。財務省の内勤マンに角行は討ち取れないから。はい角行でお前んとこの財務省全員撃破~」
西香「甘すぎですわよ留音さん。こちらに四人の財務省、そちらは残りの財務省が二人。どちらの国庫がより充実しているかは自明の理ですわ。わたくしの財務省たちはあなたの角行に賄賂をお渡しし、こちらについてもらいますわよ」
留音「でぇー!?そんなことできんのかよ!?あたしの財務省も残しておけばよかったー!」
西香「だから甘いんですのよ留音さんは。これは国と国との戦い。兵力はもちろん必要ですが、最終的に必要なのはお金ですわ」
留音「くっそ、どうしよ……いやでもさ、あたしの王、飛ぶ車に乗ってんだよな……これワンチャン飛んでって西香の王に強襲を仕掛けて打ち取れるんじゃないか……?よしっ、じゃあこの飛ぶ車でそっちの王に突撃!!」
西香「来ましたか……やると思っていましたわ。ではわたくしは成果があげられず金に昇格できない銀の財務省の方をこの飛ぶ車に乗せ、あなたの王に突撃させます。これで留音さんの王ミサイルをわたくしの銀ミサイルが相殺し、留音さんは王を失ってわたくしの勝ちですわ」
留音「あ!そうじゃん、そっちにも車あるんじゃん!……まぁ車の強度は同じだもんなぁ……そうか、この手段はもっと弱いキャラに乗せて突撃させるのがいいのかもな。はー、将棋って奥深いなー……ってちょっと待て」
西香「なんですの?」
留音「おい!あたしのやられた飛ぶ車、裏に龍って書いてある!!これ……ドラゴン封印されてる車かよ!」
西香「えぇっ!?なんなんですのその隠し玉!」
留音「ほら!これじゃああたしの王も死なねぇよ!飛ぶ車の爆発に放り出されても空中で龍がキャッチするだろ!これまだ行けるじゃーん!!」
西香「えー!留音さんだけずるいですわー!」
留音「しかもドラゴンだからな……ドラゴンブレスで攻撃!お前の王を中心に火が燃え広がって全員死ぬ!」
西香「あ~……卑怯すぎですわよ、まさかドラゴンが……飛ぶ車にドラゴンまで出てくるなんて、将棋って案外とんでも時空の戦略ゲームですわね……」
留音「でも多分それを読んで戦うんだろ?」
西香「でしょうけど……ちょ、ちょっと待って下さいな留音さん」
留音「え?」
西香「ほら、わたくしの王!よく見たらこれ王じゃありませんわよ!玉!玉って書いてありますわ!」
留音「うわ!ホントだ!なんでだ?!偽物かっ?!」
西香「そういうことですか……わたくしの王はきっとどこかで隠居してるんですのよ。ここでやられたのは偽物ですわ。というわけで、わたくしは負けていないということで」
留音「えー!それはずっけぇよー!でもあたしのドラゴンがお前の国全部焼き払うから絶対あたしの勝ちだぞ?!」
西香「でも将棋セットの中にもいませんもの。もしかしたら諸国漫遊中で留音さんの国に隠れてるかもしれませんわよ」
留音「それ出来るんだったら最強のアサシンじゃん!でもそんなこと言ってたら決着つかねぇよ?」
西香「それもそうですわね……多分真の王の駒は衣玖さんが失くしてしまったんでしょうね」
留音「あいつちゃんと片付けないからなー。しょうがない。じゃあドローってことで」
西香「そうですわね。なかなか拮抗した白熱の戦いでしたわ」
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真凛「衣玖先生、ただいまご覧いただいたのがエクストリーム将棋の新しいルールを用いた対戦の様子です。採用なさいますか?」
衣玖「全く問題ないわ。エクストリーム将棋の新ルールとして今年から正式に採用する」