2019年11月16日 【コラボ回?】いい芋を爆散させたかった日
2019年11月16日
真凛「今日はのんびりお料理をしますよぉ~っ☆」
いつもほわほわでニコニコな凶悪なサイコパス、真凛は朗らかにそう言った。赤みがかった髪がふわりと揺れ、ポチョンと重力に逆らったアホ毛もぴょこぴょこと動いている美少女だ。
西香「わたくしケーキが食べたいですわ~」
そう返したのは世の男性を魅了する最高の美貌と、世の女性から忌避される最低の性格を併せ持った美少女お嬢様、西香である。あざといまでの黒髪ロング姫カットは艷やかに肩からサラリと流れている。
真凛「うーん、ケーキかぁ。実は今日に合わせて使いたい食材があって……」
衣玖「ひょっとしてお芋?」
真凛の言葉に先んじて答えを出したのは最強の頭脳、3億を数えるIQを持った衣玖である。その頭脳と対照的に体は小さく、少しボサついたような、あまり気遣いの感じられない髪は色んな方向に遊んでいるが、やはり美少女である。
真凛「あっ!よくわかりましたねぇー☆」
衣玖「今日はいい(11)いも(16)の日だからね。自然薯でも買ってきたの?」
真凛「自然薯ではないんですけど、はいこれです☆」
テーブルに置かれた一つのお芋。見るからにじゃがいもである。
留音「おっ、じゃがいも。あたしじゃがいも料理好きだよ」
反応を示した彼女の名前は留音。最強の格闘家である彼女は、この家の中でも特に引き締まった体と、高めの身長によく似合う、少し長めでふわっとしたブロンドロブを携えた少し男勝りな美少女である。
真凛「んっふっふ……実はこれ、ただのじゃがいもじゃないんですよぉ☆今日お買い物に行ったらですねぇ、裏路地にいた怪しいおじさんから『これは異世界から転がってきた由緒正しくないお芋だよ、無料だよ』って言われて、頂いちゃったんです~!」
そう、それは変なお芋だった。お芋世界から転がってくるかもしれないお芋の民のために今回はキャラ説明盛り盛り多めなのである。
衣玖「それはすごいわね、全部怪しいわ」
留音「珍しいな。真凛がそんな出どころのしれないもの仕入れてくるの」
真凛「はい……わたしも最初は遠慮しようかと思ったんですけどぉ……でもほら見て下さい、このお芋さん、手と足が生えてるんです。面白いな~って思って」
真凛はそのお芋をツンツンと突いてころりと回転させると、本当にそのお芋の四方から手足のようなものがだらりとくっついていることを全員が認識した。
衣玖「あっ、ホントだ。黒くて細長いのが生えてるわね。付けたものじゃなくて本当に生えてるみたい……電流通して反応見ても良い?」
西香「ちょっと待って下さい。真凛さん、あなた手足の生えた謎の芋を料理しようとしてたんですの?」
真凛「中身がどうなってるか気になりませんか?」
そんな話をしているとお芋の手足のような部分がぴくんと動き、のそのそと体を動かし始めて起き上がったのだ。それから顔のないじゃがいもが何か言葉を発した。
お芋さん「っていうかこの子らめっちゃ怖い。もう起きるわ(寝てない)」
留音「うぉっ、起き上がったし喋ってんだけどこの芋ぉ?!」
お芋はちょこんと座り、片手をやっほいと挙げている。それから立ち上がってぐるりと自分を見ている少女たちを見て回る。
真凛「わぁっ!異世界のじゃがいもは喋るんだ!中身見てみたいです~!」
お芋さん「悲報 ポテトマン 美少女だけの世界にしれっと入ったけど中身抜かれる模様」
衣玖「言語系は同じだけどやや独特ね。妙にキャラが濃ゆいわ」
それに対して真凛はとてもワクワクした様子でいつの間にか持ってきていた包丁を片手に言う。
真凛「中身見たらなんでかわかるんじゃないかな!」
西香「なんで真凛さんそんなに張り切ってるんですの?」
お芋さん「許してください!何でもしますから!(なんでもするとは言ってない)」
留音「いやこれ絶対食べられないぞ……タオルとかにくるんで捨てようぜ……?」
衣玖「ねぇお芋、あなたは何者なの?会話は出来るのよね?」
お芋さん「僕?どっちかというと出来る」
真凛「お名前は何ていうんですかぁ?」
お芋さん「芋ですよろしくお願いします。芋でした」
真凛「お料理に使ってもいいですかぁ?^^」
お芋さん「名前聞いてから殺害予告?やったぜ(コロンビア)」
衣玖「本当に異世界のお芋なの?……まぁ喋れる時点でアレだけど……何しに来たの?」
お芋さん「キルラ○ルはいいぞ。これ以上語ることある?(褒)」
衣玖「えっ、アニメの布教に来たの?」
留音「……ちょっともう捨てよう。なんか侵食されてる気がする。どこ持ちゃいいんだこれ。このひょろひょろ動いてる手足はあんまり触りたくないぞ……」
お芋さん「ロン毛ぇ!高身長ォ!」
真凛「あっ、留音さんに向かってお芋さんがぁー!」
お芋はぴょーんとダイブで留音に向かうが、彼女は咄嗟にそれをバシン!とはたき落とした。
留音「うわぁっ!あっ!やべ!!」
衝撃でお芋は砕け散ってしまった。
衣玖「あー!まだ研究したかったのに!」
真凛「……中身ただの芋だぁ……」
しかしお芋は不死身であった。ことこと動いてパーツを一所に集めている。
留音「なんか動いてんだけど……」
お芋さん「凝視は恥ずかしいので適度に見ろ」
西香「まだ死んでないみたいですけど。それどころか再生してますわよ、このお芋さん」
衣玖「本当ね……興味深い」
お芋さん「興味ないふりして横目でガッツリ見るように見ろ」
真凛「うわぁ~、切り刻んだり煮込んだりすり潰したりしたらどうなるんだろぉ~、無限に再生するのかなぁ……楽しみだなぁ~……」
留音「やめとけよ……絶対そんなの食べたら爪が抜け落ちたりするからさぁ……」
真凛「そんなことありませんよぉ。実は繊細で優しい味かもしれませんよぉ?えへへへ……」
真凛は興味津々で包丁片手に形状を直していったお芋を調理するのが楽しみだと微笑みながら覗き込んでいる。
お芋さん「やめろそれは俺に効く」
西香「お芋さん、なんだか口らしき場所からデンプン質のようなものを吐き出してますけど……」
真凛「うわぁっ、かわいい~☆」
ワクワク!真凛は卵から孵るひな鳥でも見ているかのような笑顔でお芋を見つめる。するとお芋はプルプルと震えだし、やがて。
お芋さん「モッキャオ!」
そう叫んで砕け散り、跡形もなく消滅したのだった。
留音「……なんか爆散したんだけど、芋……」
真凛「えっ……そんな……」
衣玖「ん、何か残したみたい。……これ、ハガネね」
西香「なんでお芋の中からハガネが出てくるんですの?」
真凛「そんなことより……わーん!お料理したかったですぅー!あのお芋さんは焼いたり炙ったりスライスしたりおろしたりグズグズに形がなくなるほど煮込んでカレーの材料にしたり煮っ転がしとかマッシュポテトになってもらって最終的に木っ端微塵にする予定だったのに~!」
予定であった。
最後に五人目の全宇宙最初で最後の美少女……その神々しさから普段は描写されず、言葉すら凡人には聞き取ることも出来ない最高の美少女のあの子から一言。
あの子「お芋さん、お芋の日おめでとうございます」
留音「(……めでたいのか?)」
衣玖「(なんか扱いアレなことしちゃったし、お芋の記念日押しにして乗り切るのよ)」
西香「(っていうか本人に無断で活動報告から言葉抜き取ってセリフになるアバターって……わたくしだったらめちゃくちゃ嫌ですわよ……)」
真凛「あーん!!ぐちゃぐちょに潰したり、めきょめきょに砕いたり、グツグツに煮込んだりしたかったですぅー!」
今日はいい芋の日。異世界にはハガネを生む芋が存在するそうだ。
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爆散芋さん連載中 ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜
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