2019年11月14日 人生100年時代の日
2019年11月14日
真凛「さぁ皆さん!今日はアンチエイジングの日ですよぉ☆いつまで経っても若くいられるように、色々試してみましょう~♪」
衣玖「そうね。アンチエイジングを重ねれば活き活きと活動できるし、見た目の若さも保てるわ」
あの子「(⁎˃ᴗ˂⁎)」
真凛はいつものようにニコニコと朗らかに、そして衣玖もいつものように、理知的な声でそう言った。あの子もいつもの神々しさを発揮している。その一方で……。
留音「エッチングかぃ?エッチングパアツは、初心者には大変よぉ……?」
西香「嫌ですよぉ留音さんったら……ご飯の時間ですってばぁ」
留音と西香はしゃがれた声のしわくちゃのおばあちゃんになっていた。この二人だけ。
真凛「若さを保つんですよ~、エッチングじゃなくてアンチエイジングです~」
衣玖「とは言え、もう齢100を越えた私達にアンチエイジングは必要かという話になってくるのだけど」
真凛「そうですねぇ。もうなんていうか……色々限界になってきてますもんね」
椅子に腰掛け、カーディガンやひざ掛けブランケットを付けてゆったり座っている留音や西香を見た真凛がそう言った。それを聞いた留音はすぐそばの机に身を乗り出し、何かを手に持つと言った。
留音「なに言ってるのよぉ真凛さんや。あたしゃ、ほれ、まだまだ現役よぉ……ガンプラだって、まだ一人で作れるんですからねぇ……ほれ、ニッパーだって、まだチョキチョキと」
幸い運動をしっかりしていたこともあるのか手に震えは殆どなかったが。
西香「留音さん嫌ですよぉ、それは爪切りじゃあありませんかぁ……」
衣玖「それは私が最近好きになった芋けんぴよ。ニッパーでも爪切りでもないわ」
ここ数年で落ち着いた飲食物を好むようになった衣玖が机の上の芋けんぴをポリっとかじりながら言った。
真凛「限界ですねぇ……仕方がありません。既に人生100年時代と言われてから100年が経過しましたが、やっぱり流石に現役は難しいみたいですし、衣玖さん、今日の日めくりは私と衣玖さん、それからあの子と三人でやりましょう。お二人はお留守番しておいてくださいね」
真凛は脇に置いてある毛布を二人にかけてやるとテレビのリモコンを手渡した。
留音「そうかい?悪いねぇ……西香さんや。今日はお休みですってねぇ……」
西香「嫌ですよぉ留音さん……わたくしのファンクラブは、まだ会員が22名ばかしは残っているんですからねぇ……」
あの子「(。・_・。)」
衣玖「えっ、二人だけ残していくのが心配……?まぁそれもそうね。でも日めくり100年の歴史を途絶えさせるわけにも行かないし……え、あなたが残ってくれるの?」
あの子「(๑•᎑•๑)」
真凛「えーっ、なんか悪いですよぉ……いいんですかぁ?」
留音「西香さんや、この子があたし達のために、残ってくれるんですってよぉ……」
西香「うぇっ、はぅっ……うぅっ……もういけませんねぇ……すっかり涙腺が緩んでしまって……ありがとねぇ……」
留音「本当に、若返るというものですねぇ……」
西香「ほんとよぉ……こうして100を越えて生きていられるのも、この子のおかげですねぇ……」
衣玖「なんか満足そうにしてる……まぁ仕方ないわね、行きましょうか真凛。みんなにはお土産でも買ってきましょう」
真凛「そうですね……それじゃあお二人の事お願いしますねっ^^」
ということで、あの子に笑顔で見送られた真凛と衣玖であった。
衣玖「で、目的地だけど……アンチエイジングの効果の代表ではないのだけど、私ももう100歳を越えているし、今日という日にかこつけて温泉にでも入れたら嬉しいわね」
真凛「じゃあそうしましょ~っ☆温泉でアンチエイジングです☆帰りは温泉まんじゅうかな~!」
そうして二人は軽い足取りで家を出ると、この時代に普及している空中交通・エアタクシーを止めて大きな温泉街に向かった。
衣玖「しかし改めて見ると真凛は本当に老けないわよね。宇宙的に100年生きるっていうのはどういう扱いなの?」
真凛「別にどういう扱いでもありませんよぉ。わたしはブラックホール経由で時間なんてどちらにでも捻じ曲げてしまいますので……それを言ったら衣玖さんとあの子だって全く老けないで、日めくりを始めた頃の姿のままじゃないですかぁっ」
衣玖「そうかしら。まぁ老けるっていう発想が凡人的とは思ってるけどね。あの子は人間の全盛期の姿を保って欲しいという宇宙の意志が働いてるから老けないんでしょうけど、おばあちゃんになっても素敵だろうな……」
真凛「そうですねぇ、しみじみしちゃいます……あっ、見えてきましたよぉ、温泉街っ」
衣玖「私の発明が無くてもそこそこ便利になって、やっぱり長生きはするものよね。今日は健康生活路線で日めくりましょう」
人が100年生きる時代。でも彼女達は永遠なのだ。