2019年11月9日 119番の日
2019年11月9日
ママリン「火の~よ~じ~ん」(カンカン)
太陽が斜めに射し込む夕方の街に拍子木の音が心地よく反響している。そしてママリンは昨日から滞在中なのである。
ママリン「こんな感じかなぁ?出来てますか?」
街に繰り出し、今日の『119番の日』に合わせて防火意識運動を行っている。時間はそろそろ夕飯の準備が始まりそうな時間帯。火に最も気をつけるべき時間帯だ。
留音「あ、はい。カンカンいい感じです」
ママリンと一緒に歩く留音がうなずきながら言う。今日の日めくりはなんとも普通なのだ。ママさんがいる前で大それた事はしにくいなという暗黙の判断が少女たちの中にあったのかもしれない。
ママリン「それにしても皆さん偉いですねぇ。決められた記念日を題材に活動しているなんて。毎日じゃ大変なんじゃないですかぁ?」
留音「そんなことないですよ、テキトーに楽しめる事やってるだけだし」
ママリン「そうですかぁ。まーちゃんはいい友達が出来たようでよかったです。……で、この運動は火が危ないよ、という事なんですよね?」
衣玖「この時期は乾燥してて火が回りやすいからね。燃えたら移るのも早いし、気をつけなきゃいけない時期ってことで、ここじゃその拍子木打ちながらそう言うの」
ママリン「そうなんだぁ。それにしてもとってもいい音がしますね、拍子木。鳴らしていても楽しいですよ」
留音「それは良かったです」
衣玖「……(ぼー)」
ちなみに真凛は拗ねているのかなんなのかあの子と留守番する事を選び、西香は面倒臭がって来なかった。衣玖も休みたかったが、留音が一人では間が持たん、と連れ出してきている。
自分から今日の日めくりネタの手伝いをしたい、と提案してくれたママリンは、今のように拍子木を持ちながら夜の街を歩く中で真凛の済む場所がどういう場所なのかという事を楽しそうに見て回っている、のだが。
留音「(なぁ衣玖……ママリンさんは楽しそうだけど……これは日めくり的に正解なのか……?)」
衣玖「(まぁたまにはこういうのも……)」
留音「(……なんかないのかよ?歩いてるだけなんだけど!)」
衣玖「……あっ、そう言えば今日って日本で太陽暦が導入された日なのよ。それで、旧暦との調整のためにね、明治の日本には1年だけ12月3日から30日までの時間が消失してるの年があるの。新しい暦の適応によって12月2日の次の朝に1月1日になった日があるのよ。すごいタイムスリップよね」
留音「へぇー、太陽暦って何?」
留音、よくわかってないがとりあえず相槌。
ママリン「あ、恒星を主星とした暦の読み方ですよね。でも公転による時間の図り方だと誤差を生じてしまいますよね。こちらにも宇宙膨張率で的確に時間を図る方法が普及すると便利なんですけどね」
衣玖「宇宙の加速膨張の速度を時間に置き換えるのね。そうすればうるう年が生まれない宇宙全体での時間の経過を知れるのか……なるほど、今度試してみよう。さすが外宇宙に住んでるママリンね」
ママリン「あっ、でも待って下さい。恒星……火の用心的にはちょっと危ないんじゃありませんか?ちょっと小さくしておきます?自然光だけでも発火してしまう可能性も無くもありませんよね?」
留音「えっ」
ママリン「むむむ、えいっ」
すると太陽は縮まるどころかその火が消え失せた。完全に鎮火して炭のような黒い星になっているようだが、地球上から太陽光が消えて何も見えなくなっている。
留音「(太陽暦の解説した直後に太陽消すタイプの人かー……)」
ママリン「あ、あららっ?戻さなきゃ……あらっ?太陽の色があんな感じでしたっけ?」
即座に太陽は元の位置から現れたが、今度は青い恒星になっている。
衣玖「違うけど……ちょっとかっこいいからこのままでもいいかも……」
留音「全然良くねぇよ、多分目に悪いよ」
ママリン「あら~?……久しぶりにやったら加減が……こうかなっ?」
今度は紫色に燃え始める太陽。
ママリン「命の灯火を奪うことは簡単なのになぁ」
留音「ママリンさん今なんか言ったぞ」
衣玖「あ……いい色……かっこいい」
ママリン「うーん、でもこれくらいだと色味が抑えられて自然光での発火はなさそうですよね。ほら、地球全体が気持ち薄暗くなりましたよぉ。地球人類皆さん向けの火の用心ですよぉ♪」
留音「宇宙クラスだなー……なぁ衣玖、これは大丈夫なのか……?」
衣玖「私は文句ないわよ。帰ったらドクロをかざして写真撮ろっと」
その後、真凛が責任を持って太陽をしっかり元に戻した。ママリンは真凛に怒られてしゅんとしていたのを、あの子が仲裁していたようだ。
今日は119番の日。この時期の火は怖いのでご注意を。