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2019年11月1日 犬の日わんわんわん

2019年11月1日


衣玖(いく)「でぇーい!ルー!覚悟ー!!」


留音(るね)「なぁにーッ?!うわあぁあー!」


 ビビビ!衣玖(いく)の手元の装置から放たれた怪光線は留音(るね)に直撃し、留音(るね)のシルエットをみるみるうちに小さくさせていった。そしてその形態は四足に変わっていく。


留音(るね)犬「きゃん!(なんじゃこりゃ!)」


衣玖(いく)「ふははははは!!ざまぁみなさい!あなたは今日からわんちゃんよ!!今日だけだけど!」


留音(るね)犬「うー!わん!(意味わかんねぇ!もとに戻せ!)」


 ことの発端はほんの数日前、猫に変わってしまった衣玖(いく)のプライバシー的なものを大いに侵害した事が原因である。詳しくは10月22日のキャットリボンの日参照のことだが、留音(るね)の一番問題となった一言は「あっ!この子女の子だ!」に集約されていると言える。衣玖(いく)の心はこれにトラウマを負ったのだ。その復讐を今日この犬の日に果たそうとしている。


衣玖(いく)「ふふ……これで存分に可愛がってあげるわよ、ルー……私が受けた辱めを受けるがいい……ほら……なでなでさせなさいよ……!」


 留音(るね)犬に恐る恐る手を伸ばす衣玖(いく)。昔大型犬にめちゃくちゃ吠えられた事があって犬には少し苦手意識を持っていたが、留音(るね)が变化させられたのは小さなミニチュアダックスフンドだ。金色のロングの被毛が留音(るね)の髪の特徴を残している。


留音(るね)犬「ふゃうー!(きいてんのか!)……ひゃん!わん!(なんのつもりだ衣玖(いく)!)」


衣玖(いく)「ふへ……何を言ってるかわからないわよ……はっ……すべすべ毛並み……」


 衣玖(いく)留音(るね)犬の頭を撫でる。そのつやつやな手触りにゴクリと息を呑み、新しい快感を知るかのように目を見開いていた。留音(るね)犬の方もどこか気持ちよさそうに衣玖(いく)の手を受け入れている。


衣玖(いく)「はぁ……すごい……ルー……あったかくて……すべすべで……か、かわいい……」


留音(るね)犬「わふっ……ふしゅ……(あれっ……気持ちいい……)」


 深く濃い息を吐きながら、衣玖(いく)留音(るね)犬の首筋に手を場して優しく撫で回す。


衣玖(いく)「あぁっ……猫もいいけど……犬も素敵……」


 留音(るね)犬は気持ちが良くなったのか衣玖(いく)に身を任せるように脱力して伏せっている。


衣玖(いく)「あぁっ……可愛いっ、可愛いよぉルー……もっと、もっとさせてっ!あったかい!すべすべ!きもちぃっ!」


 何かがエスカレートしていく衣玖(いく)は両手で留音(るね)犬を撫で回し、そのまま顔を留音(るね)犬の脇腹あたりに突っ込んでいく。留音(るね)犬は全く仕方がないやつだと言わんばかりに抵抗せずに伏せったままである。


衣玖(いく)「むにゅうー……あぁんルー!これ好きっ……好きぃっ……ずっとこうしてたい……ねぇいいっ?もっとしてもいいっ??いいよねっ?むにゅむにゅむにゅ……」


留音(るね)犬「わっふっしゅ……(なんだこいつこっわ……)」


 留音(るね)犬にはこの状況がよくわかっていないが、まぁ仕方ないやつだなという気持ちなのだろうか。衣玖(いく)の変人行動は昔から見られたもので、満足したらもとに戻してくれるだろうと抵抗はしていない。


衣玖(いく)「はぁ、はぁ……こんなこと普通じゃないわ……、幼馴染を犬にして弄ぶなんて……でもこの犬化光線で変わった対象は元に戻った時に犬だった頃の記憶は失われる……せめてもの情けよ……だから……あなたも局部を確認されるという辱めを受けるがいいわ……!はぁ、はぁ……」


留音(るね)犬「ばふっ!?(きょっ!?)」


衣玖(いく)「さぁ……抱かせてルー……!抱かせて!ぎゅって!ぎゅ~って!私もルーが気持ちよくなれるようにするから!いいでしょ?!それであなたの局部を私に見せて!!あなたが私にしたように!!」


 はぁはぁ!と息遣い荒く、衣玖(いく)は両手を広げて留音(るね)に迫る。なお、局部とはあくまでも体の一部という意味である。別に特定の部分を表す意味で用いられてはいない。


留音(るね)犬「わ、わんっ!(や、やめろ!)きゃん!きゃいーん!(落ち着け!あたしはそんなっ)」


 その後衣玖(いく)は結局留音(るね)犬の性別を判断することはなかった。留音(るね)犬を捕まえることは出来たにせよ、冷静に考えてものすごく恥ずかしくなってしまったのだ。それにやっぱりわんちゃんはわんちゃん。猫ちゃんは猫ちゃん。気にする必要はないのではないかと。衣玖(いく)はトラウマに建設的な決着を付けた。


 しかしこの話はまだ終わりではない。衣玖(いく)留音(るね)犬を愛でていた頃、そのリビングの扉の向こうに人影があったのだ。


真凛(まりん)「……えと……あの二人何をやってるんでしょうか……怖いんですけど……」


西香(さいか)衣玖(いく)さんが……留音(るね)さんのこと可愛い可愛とか……何を話しているんですの?」


真凛(まりん)「わかりませんよぉっ……扉開けてもいいのかなぁ……怖いんですけどぉっ……」


西香(さいか)「さぁ……衣玖(いく)さんの普段聞かれない声がしてますけど……局部がどうとか言って……」


真凛(まりん)「き、禁断の大好き同士になっちゃったのかな……今日ちょっと怖すぎますよぅ……」


 酷い誤解が生まれることになった。この日の衣玖(いく)は腫れ物に触られるようだったが、本人は特に気にせず、自分の密かな復讐心に前向きな気持ちを持って決着を付けたことで僅かな心の平穏を見出していたようだ。


 ワンワンワン。11月1日は犬の日である。

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