表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/414

2019年10月31日 ダークハロウィン

2019年10月31日


 五人の少女たちはハロウィンというイベントについて、渋谷なんかに繰り出して楽しもうとは思わず、家でみんなで過ごしていた。


留音(るね)「なぁ、なんで家で仮装しなきゃならないんだよー」


真凛(まりん)「だってみんなで可愛い格好したいじゃないですかぁ♪」


西香(さいか)「わたくしのこんな格好、普通の方なら泣いて喜ぶんですのよ?」


あの子「ヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”」


 みんなはそれぞれ思い思いのハロウィン仮装をしていた。留音(るね)は体全体に包帯を巻き付けている。キュキュット締められた包帯は留音(るね)の体には少しセクシーに作用している。


 反面、真凛(まりん)はダボッとした黒いローブを纏い、大きな帽子を目深に被って魔法使いスタイルだ。ここで最も重要なのは、常に箒を持っていられることらしい。ステッキではなくちゃんと竹箒を選ぶあたりお掃除狂の真凛(まりん)らしいというものだろう。


 そして西香(さいか)は猫耳を付けて、少し不機嫌な獣少女になっていた。真凛(まりん)ほどには気合は入っていないものの、ちゃんとしっぽも付けられている。衣玖(いく)の発明で脳波に連動して動作する高性能なしっぽアクセサリーはゆらゆらと動いていた。


 あの子はみんなから用意された天使のコスチュームに身を包んでいる。頭にはしっかり光輪を掲げ、常に後光が差している。


 それからみんなに遅れて、最後に衣玖(いく)が部屋に入ってきた。両手を肩の高さに挙げ、ひたりひたりと短い歩幅で呻きながらだ。


衣玖(いく)「ゔああああー……」


留音(るね)「うわ、ひとりだけ本気なのが来た」


 留音(るね)はハハハと笑いながら衣玖(いく)のゾンビメイクをじっと見た。衣玖(いく)はライブに行くときはゾンビメイクをして行くこともあるので手慣れていることもあり、その完成度は折り紙付きといったところで、腐臭も含めて完全に歩く死体だ。西香(さいか)は呆れている。


西香(さいか)「あーいかわらず衣玖(いく)さんのゾンビメイクはキんモいですわねぇ……」


衣玖(いく)「ゔぁー……うー……」


 衣玖(いく)はひたひたと歩きながら留音(るね)に迫り、残り一歩半というところで留音(るね)の方に倒れ込み「ぐああー!」と言いながら留音(るね)の首筋に噛み付いた!


あの子「∑(°口°๑)」


留音(るね)「うわぁ!?いってぇいってぇ!なにしてんだ衣玖(いく)!?」


真凛(まりん)「そうですよぉ!そういう一歩踏み込んだ関係性の示唆が無い安心感もわたしたちの要素の一つじゃなかったんですかぁー!?」


衣玖(いく)「がうあうー!」


 留音(るね)によって衣玖(いく)が引き剥がされ壁まで押し返された。だが衣玖(いく)は痛いとも言わずにゆっくりと立ち上がると、再びひたひたと留音(るね)の方に向かう。


留音(るね)「なんか……様子がおかしくないか……?」


 留音(るね)は息を切らし噛まれたあたりを撫でながら衣玖(いく)のおかしな様子を距離を取りながら見守っている。


西香(さいか)「まさか衣玖(いく)さん……本物のゾンビになってしまったのではありませんの……?!」


留音(るね)「そういやあいつ、ハロウィンは渋谷じゃなくて……暗黒界ダークランドで行われる、SAN値削りまくりの超絶怖いダークハロウィンに参加するって言ってた……本物のゾンビもいるって……」


西香(さいか)「ということは、そこで衣玖(いく)さんはゾンビの病気をもらって……!」


真凛(まりん)「自分もゾンビになってしまったんですかぁ!」


あの子「ฅ(º ロ º ฅ)」


留音(るね)「ハロウィンではしゃいで問題起こすバカと変わんねぇじゃねぇかー!」


 すると衣玖(いく)ゾンビはうぅー、といううめき声を控えめにして……。


衣玖(いく)ゾンビ「失敬な……っていうか……ルーの体、かったい……もっと……柔らかい肉……西香(さいか)……真凛(まりん)……ひとかみさせて……」


 普通に喋り始めた。


西香(さいか)「なんか言ってますわよ!?」


 衣玖(いく)は両手を前に掲げながら、流暢さこそ失ったもののしっかりと日本語を発していたのだ。


衣玖(いく)ゾンビ「あたりまえ……でしょ……IQ、3億が……ゾンビ化、で、IQ、99.9999%低くなっても……結局IQ300……天才……天才ゾンビ……」


留音(るね)「心強いんだかなんなんだか……でもさっきあたしのこと噛んだじゃん!」


衣玖(いく)ゾンビ(天才)「おにく……たべたい……じんにく……おいしそう……という閃き……あと、映画とかで……ゾンビ出たら、必須項目……だから……」


西香(さいか)「まぁゾンビが出たらひと噛みは無いと始まりませんものね……」


真凛(まりん)「じゃあ……えっと……みんなハロウィンコスプレで集まりましたし……ハロウィンパーティ、始めますかぁっ☆」


衣玖(いく)「……(満足そう)」


留音(るね)「コスプレっていうか本物いるけど……ってかあたし噛まれてるけど……」


衣玖(いく)「その……いつ隣人が、何かに変異するかも、って……緊張感……は、今のたるんだ……日本に……コミットする……」


西香(さいか)「この発言の謎さ……ゾンビになっても衣玖(いく)さんは衣玖(いく)さんですわね」


真凛(まりん)「とりあえず焼いといたパンプキンパイを食べましょ~!留音(るね)さんからパンデミックが起きたらその時はその時ということで!」


留音(るね)「えー……ワクチンないのかよー?あたしもゾンビ化すんのぉー?」


衣玖(いく)「っていうか……うごく、マミー……あぁ、おにく……たべたい……」


真凛(まりん)「ミートローフも作ってますよぉ♪」


衣玖(いく)「……(満足そう)」


西香(さいか)「っていうか衣玖(いく)さん、臭いですわよ。死体とは言え最低限のエチケットくらい守って頂きたいのですが」


衣玖(いく)「これが……ダークハロウィン、流……」


 ちなみにその後、あの子が痛そうだと擦ったことで留音(るね)の内部に入り込んだゾンビウィルスは超善玉菌と成り代わって留音(るね)を最高の健康状態にした。衣玖(いく)もあの子に頭を撫でてもらったら天才の細胞が自動的に体内でゾンビ化の免疫を作り出して全てを修正したので何も起きなかった。


 渋谷のハロウィンでも、人が多く集まればその中に1人くらいは本物がいるかもしれない。参加する際はご注意を。念の為、最低でも十字架くらいは用意しておくべきである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ