2019年10月29日 ホームビデオの日 四つ子ちゃん成長記録
2019年10月29日
あなたは幸運にも四つ子を授かりました。とても元気な四人の女の子です。あなたの伴侶となったあの人もとても幸せそうに四つ子を抱きしめ、愛情たっぷりに子どもたちの名前を呼びます。
子どもたちはすくすくと成長していきます。あなたはその子どもたちの成長を収めるためにビデオカメラを購入しました。
~1歳~
「あ~じょうずだね~!あんよできたね~!いくちゃんいい子だね~!おいでおいで~!」
いくちゃんはよろよろと壁伝いにあなたの撮影するカメラを横切り、もう少し離れたところにいた伴侶のあの人の元へと頑張ってよちよち歩いていきます。自分の力だけで、はいはいをせずに親の元へ辿り着けたのはこのいくちゃんが最後だったのです。一番早かったのはまりんちゃん。次がるねちゃん、そしてさいかちゃんが続いて、少し遅れていくちゃんがあんよを覚えたのです。
おっと、それには語弊があるかもしれません。なぜならまりんちゃんはその方法が少し違いました。
まりん「きゃっきゃっ☆」
「あー!まりんちゃん!また浮いてる!!捕まえっ、あーっ!どこ行くの―!もう月の石はいらないよー!」
そしてその横を……
るね「ゔぁあああーーー」
るねちゃんはすごい速度で走っていきました。とても楽しい1歳の家庭です。
~4歳~
幼稚園に入った四つ子達は、少しずつ言葉を覚え始めます。歩けるようになった順番とは正反対に、言葉を覚えたのはいくちゃんやさいかちゃんが最も早いものでした。
さいか「はい!どーじょ!くまさん!」
良い子のさいかちゃんはみんなにしっかりおもちゃをわたします。子供がしがちな独占なんてしませんでした。
いく「ありがとうー、オーカー色のくまさんだね。それにこれはポリエステル製っていうんだよ、ふわふわで可愛いね。欣快を覚えるよ」
「わー……いくちゃん、きんかいってどういう意味なんだろー……?」
いく「とっても嬉しいって意味だよ」
4歳のいくちゃんはとっても賢くて、大人でも知らないような言葉を魔術師のように操りました。
さいか「きんかい?きんかいはうれしい?」
いく「うん」
そこにるねちゃんがやってきます。るねちゃんはいくちゃんから無言でくまさんをひったくりました。
るね「へへへへーゔぁあうあうあーーーー」
いく「あー!ドメスティックバイオレンスだー!訴訟も辞さない―!」
およそ4歳児とは思えない会話内容でしたが、あなたの伴侶はとても幸せそうにニコニコしていました。
~8歳~
「さぁ、まりんちゃんの初めてのお料理体験です……何を作っているのでしょうか……まりんちゃーん」
まりん「しー!今教えてもらってるの!じゃましないで!」
あなたの伴侶はまりんちゃんの隣に立ち、熱心に包丁を握るまりんちゃんをとても優しい瞳で見守っています。
「大丈夫?怪我しない?気をつけてね?」
まりん「わかってるー!しーぃ!!」
あなたはまりんちゃんに押し出され、キッチンを追い出されてしまいました。仕方がないのでキッチンの外からビデオカメラ越しに真剣な表情のまりんちゃんを収めます。そうして30分ほどした頃でしょうか。
まりん「できたー!みんな集合ー!テーブルにすわってくーださーい!」
すると家のリビングに何事かと集まってくる家族達。まりんちゃんはパパもママも離れちゃだめ、とテーブルの席に押し込み、キッチンで準備をしています。それが終わるとお盆にたくさんの器を載せて、よろよろとダイニングテーブルにそれらを並べ始めました。
「うわぁ……お味噌汁だ!まりんちゃんが作ったの!?」
まりん「うんっ、ごはんもねー、教えてもらって自分で炊いたんだ―」
見れば味噌汁にご飯も添えられて、非常に質素ではありましたが、しっかりと定食の体を成した「料理」が並びました。これには両親とも強い感動を覚えました。
まりん「はい!じゃあみんな手を合わせて!いただきます!」
るね「いただきます!」
いく「あ、おいしいー。塩分とのバランスもいつものと同じくらいだー」
さいか「おいしいー!これ500円くらいで売れそうだね!」
まりん「えへへへ、やったぁ^^」
その日がまりんちゃんのお料理デビューの日でした。みんなに喜んで貰えたまりんちゃんはこの日をきっかけにみるみる料理を覚えて行きました。
~14歳~
クリスマスの日。早起きしたあなたとあなたの伴侶は子どもたちが起きてくる前にリビングで過ごし、子どもたちがクリスマスツリーの下に置かれたプレゼントを開けて喜ぶ姿を取るのが毎年恒例でした。
最初に起きてきたのは西香ちゃんでした。これは10歳を越えたあたりから毎年変わりません。
「さいかちゃん、プレゼント来てるよ~」
西香「知ってますー。今年も撮って飽きない人ー……」
「そりゃあ毎年撮るよ、可愛い天使ちゃんたちの成長記録だもんー」
西香「(ツーン)」
西香ちゃんはいつからかツンツンし始めましたが、黙ってプレゼントを開けています。そして中に入っているブランド物のバッグを見て満足そうな表情を浮かべました。しかし他の子達のプレゼントが気になっているようです。
「開けちゃダメだよ?」
西香「わかってます!」
次に起きてきたのは留音ちゃんでした。「おはよーパパ、ママ」とソワソワした様子で入ってくると自分宛てに置かれたプレゼントを確認して、ぱぁっと表情を明るくしてそれを手に取りました。そして少し乱暴に封を解き、中から大きめの箱を取り出します。
留音「あっ!!!やったー!!エクシアリペアのMGだ!!!ほしかったやつー!!!やったやったやったー!」
西香「MGガンプラ5000円……よし」
西香ちゃんは何かを呟いていましたが留音ちゃんは箱を持って大喜びしています。
「ほしかったやつ貰えた?」
留音「うん!!やったー!……あっ」
留音ちゃんは袋の奥に何かがあるのに気づきました。ですがすぐにプラモの箱をその袋に押し込むと、そそくさと部屋に戻っていきました。西香ちゃんは不思議そうにしていましたが、あなたは知っています。実はプレゼントの中には可愛いぬいぐるみが入っていたのです。留音ちゃんは何故か隠していますが、こういう可愛いものも大好きなのです。あなたはしっかりそれを知っていて、サンタさんに頼んだのでしょう。
つづいて起きてきたのは衣玖ちゃんでした。
衣玖「うぅ……しゃんたさん来たぁ……?」
眠そうに瞳をこすりながら、回らない舌で尋ねます。あなたはにっこりと「来たよ」とツリーの根本を指し示しました。
衣玖「やった……今年はもう来ないかと思った……何かな……」
衣玖ちゃんはワクワクした表情で袋を破いていきます。中からはゲームソフトが一本出てきました。それは衣玖ちゃんの大好きなRPGシリーズです。その大好き度合いでいうと、衣玖ちゃんは枕を投げるというような攻撃的な行動を取る時にそのRPGの必殺技名を叫んでしまうほどでした。
西香「(テイルズ……7000円くらい。よしよし)」
西香ちゃんはまたも満足そうに衣玖ちゃんのプレゼントを見ています。それから噛みしめるように嬉しさを味わっている衣玖ちゃんを煽るようにこう言いました。
西香「はー、衣玖さんったらまーだサンタさんなんて信じてらっしゃるのー?」
衣玖「は?いるから。見えないだけでいるから。これだからロマンのないヤツはダメよ」
西香「ぷぷぷー、これだから変人はっ」
怒った衣玖ちゃん、脇にあったソファクッションを手に持つと、勢いよく両手で上から下に叩きつけるように西香ちゃんに投げつけました。
衣玖「紅蓮ッ剣!!!」
西香「いったぁー!パパぁー!ママぁー!衣玖さんが打った―!」
「はいはい、仲良くしてね。いくちゃん、暴力はだめ」
衣玖「バカには言ってもわかんないんだもん!部屋で遊んでるー!」
西香「やーい!中二病~!!」
衣玖ちゃんはバタンと扉を締めて自分の部屋に行ってしまいました。それすらも可愛らしくて、ビデオを回しながらあなたと伴侶のあの人は笑っています。
それから西香ちゃんは満足したように立ち上がり、部屋を出ていくようでした。
「まりんちゃんのプレゼントは確認しないでいいの?」
西香「いいのー」
その理由は単に真凛ちゃんが毎年あまり高いものをもらわないからでした。要は西香ちゃん的に、自分のプレゼントが値打ち的に一番高いのかが重要だったのです。それからビデオには真凛ちゃんが嬉しそうにプレゼントを受け取る様子が収められていました。
このホームビデオにはこの子達が元気に成長していく記録が残されていきました……これからもずっと。




