齢百歳で童貞のまま大往生ワイは、神と契約を交わすことにした。
何も無い、白い空間…。ワイは死んだはずじゃ…。
百年を一人で過ごしてきた。別に友人がいなかった訳では無い。ただワイは多くのの友人達を見送ってきた。それが自分にも回ってきた、それだけのこと。
ただ死に方には不満が…、いやそんなになかった。ワイに身内は居ない。親兄弟は既に他界。親戚とは距離的になかなか会えない。嫁は、“画面の中であった”。ただ、誰かに看取られ眠るように息を引き取る…、それが八十を超えた辺りからの夢であった…。
六十で定年を迎える迄は、仕事に打ち込んだ。仕事にも不満も無く、気付けば役員の一人までになった。定年後は、時々会社にも顔を出したり、晴れては土いじり、雨降れば読書。まさに晴耕雨読。それは穏やかで静かに…。ご近所さんと仲良く清掃活動もした。それも、一人で死ぬのが嫌だったからかもしれない…。
そんなワイの死因は、交通事故。信号待ちの際に子供が交差点にワイに横を走りすぎて行った。気付けば、子供を歩道へ投げ飛ばし、自分も空を舞っていた。地面に落ちて、歩道を見れば子供は泣きじゃくっていた。泣くな少年…、男だろう?まさか言ってみたいセリフを言えるとは、ワイの人生も捨てた物じゃないか…。
思い出せば、ワイの人生はどうであったか?好きになった女性は居る…。その人に告白はできなった…。へタレであったからか?ワイに自信が無かったからか?ワイはイケメンではない。あるのはお金ぐらいか?性格は悪くないと思う、多くの友人もいたし、部下からも慕われていたと思う。女性が怖かったからか?裏切られるのが嫌だったからか?社会的な地位を得ているからこそ、恐怖をしていたのか?
それも言い訳だろうか?結局ワイは、女性関係を除けば世間一般的な独身貴族であったと言うことであろう。
友人からは、「枯れている」「ホ○?」「はよ結婚しろ。」等言われた。別に、できるならしたいが今となっては後の祭りだろう。そんな友人も先に旅立っていった。温かい家族に囲まれ幸せそうに、息を引き取る様は羨ましいとも思った。
「やぁ。」
何も無い空間で、そんな他愛も無い回想をしていると、六十代程で白い髭を蓄えた、某竜の玉に出てきた仙人を真面目にしたような老人がいた。
「ここは?そしてあなたは?」
「まぁ、落ち着いて。時間はあるから。」
火急速やかな行動が必要な訳では無いようなので、ゆっくりと事情を把握することに努める。
結局彼が語ることを要約すれば、
・彼=転生を司る“モノ”≒転生神
・彼のような神は、それこそ八百万を超える。
・神とは、生物には過ぎた力を持って理を越えた“モノ”である。
・生と死。世界と世界。ここは、その狭間である。
・やはりワイは、童貞のまま齢百歳で子供を庇い死んだらしい。
・恩恵とかあげるから、剣と魔法の世界に転生しない?-おk。
↑今ココ
「転生するにあたって、使命的なものとかありますか?」
「君には“審判”をして欲しいかな。」
「“審判”?」
「そう。新しい神を誕生させる戦いを、その世界でするんだけれど、その審判。」
「具体的には何を?」
「特に何も。」
「ん?」
聞けば、新しい神を誕生させる戦いは今回で五回目らしく、神為的に神を誕生させるものらしい。その為に一つ世界を作ったらしい。ホヘ~…。
そんで、ワイは新しい神を誕生した際に、そいつを戦いの主催者である神へと連れて行く。それだけである。主催者である神、主神の場所は新しい神を誕生した際に、新しい神の居場所と共に教えてくれるらしい。
それぐらいやれと思うが、その世界で神が降臨すると、大惨事になるので使いの者がいるらしい。前任者は、寿命と共に神になってしまったので、新しくワイに話がきたらしい。
「何故、自分なのでしょうか?」
「ああ。それね。特に無いよ。強いて言うならタイミングかな?」
な、なるほどね…。
そう言えば今更だが、目の前の彼は、姿が老人であるのに、その声と喋り方は若い少年みたいだな…。本当に今更だが、ギャップが酷いな…。
「さて、君もその内神の座をに付くとして、ここまで質問はある?」
「特に無いです。」
「そう。じゃあ、君に転生特典をあげよう。君は何が欲しい?」
ちなみに、この転生特典は審判の役が終わる前に死なない様にするための物らしい。まぁ、そうだろうな、魔物なんかもいるらしいし。
さて、転生の特典ね~。無限の魔力。結界。万物鑑定。ん~…。
あ!!そうしよう。それは面白そうだ。
「あの。」
「ん?決まったかい。」
「いえ。相談です。」
「ふむ。聞かせて?」
「ええ。」
「で?」
今白い空間には、俺と転生を司る神様と、不機嫌そうな女神がいた。彼女は不機嫌であることを隠すつもりも無いのだろう、その美しい顔の眉間に皺を寄せる。それでさえも美しい。スタイルは所謂スレンダーな体型。チャイナ服のような服を着ており、側面の切れ目から見える綺麗な足に視線がいきそうになる。胸は微かに膨らんでいる程度。好みです!!
これで、“転生を司る神様が知る中で、生命を司る美しい独身女神”というのだから、性格に問題があるのだろうか?
それよりも本題へ行こう。
「わざわざご足労いただきありがとうございます。」
「世辞はいいです。早く本題を言ってください。」
「失礼しました。実は、私と契約をしてほしいのです。」
「契約?」
そう契約だ。内容は、
1.ワイの転生する体を女神様に作成して欲しい。(転生する体は、転生する世界の番の子を利用するか、生命を司る神が作成するかの二通りがある。)
2.ワイの転生する体は、女神様の“好みで自由”に作成していい。
3.ワイが神なるまで童貞だったら、女神様にはワイの嫁になって欲しい。
4.夫婦になっても、最初の営みは女神様の同意無く行ってはならない。
5.仮に互いに思い人ができた場合、この契約は破棄される。
6ワイが神なるまでに死んだ場合、この契約は破棄される。
7.ワイが神なるまでに女神様が魂のみの状態になった場合、ワイの体を自由に使っていい。
8.この契約は破棄された場合、この契約は“無かったことにする。”
9..契約が継続する限り、ワイの転生特典は“無い”ものとする。
10.この契約は、正規の物であり、契約に関する嘘・偽り・隠し事は許されない。
11.この契約は、正規の物であり、契約者のどちらかの意思無く破棄はできない。
「は?」
「開いた口が塞がらないようだね。」
最後まで聞き驚きで固まったままの女神様と、対照的に笑いを堪えきれない転生神様がそう呟く。
まぁ、それもそうか。だって、この契約は俺にとってあまりにも“不利”なのだから。
「ねぇ?嫁って具体的には何をするのですか?」
驚きから固まっていた女神様が、そう聞いてきた。
「何も。」
「は?」
二度目の硬直。
「ですから、何も。いえ、言い方が悪いですね。あなたの思うお嫁さんでいいですよ?」
「へ?」
三度目の硬直。
「私から女神様に強要することはありません。敢えて上げるなら、私の傍に居て、話し相手になってくれればそれで。」
「なっ?!」
四度目の硬直。驚いた顔は、最初の綺麗な感じでは無く可愛いと思えて、笑ってしまった。
「どうです?この契約を私と結んでくれませんか?」
「何が狙いですか?」
そう訝しげに問う女神様。
「いえ、ちょっと寂しいと思っていまして。愛した人が“傍に”いると言うのは、どのような気持ちかなと…。」
「ワタクシが、途中で契約を破棄したいと望んだ場合は、どうするんですか?」
「勿論。応じますよ?」
「は?!」
五度目の硬直。
「別に無理強いはしたくないですし。実質女神様が破棄したければ、私に言ってくだされば、この契約は破棄できます。」
「愛なんだと言いつつ、結局誰でもいいと言うことですか?」
「女神様が来るまではそうでしたね。」
「ふん。結局そう言って、私よりスタイルのいい女が居れば、彼女の所に行くのでしょう?」
「どうでしょう、それは分かりませんよ?」
「何が言いたいのです?」
「そのままです。私がそのような方の元へ行くか、女神様の事を好いたままでいるかは、その時になってみないと分からないと言うことです。」
「ふん。つまり、可能性はあると?」
「数%ですが。」
限りなく0ですがね…。
「あまり期待しないでおいてあげます。」
「それでは。」
「ええ。契約いたしましょう。それが完全に履行されることなんてありえませんが。」
「では。」
そう言って、互いに書面に記されたそれを確認し、署名をして燃やす。これで、契約の破棄はもう一度書面にして、それを燃やすしか無くなった。
△△△
白い花が咲き乱れる庭園に佇む東屋に、一人の男がティーカップに注がれたお茶を飲みながら、空に浮かぶ岩石群を眺めていた。
その男の対面には、お腹が膨らんだ女性が微笑んでいる。
「どうしました?」
「ああ、君との“破棄した契約”を思い出していた。」
「あら?」
「ははは。」
「ふふふ。」
「パパ~、ママ~。」
その男女の元へ、どことなく彼らに似た幼い女の子が駆けてきた。その後ろには、メイド服を着た女性が追従する。
白い花の庭園に彼、彼女の優しい笑い声が響き渡り、穏やかで“温かい”そんな時間が流れる。
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