第67回緊急国際会議③
第5部 第67回緊急国際会議③
イギリスには数多くの王朝がある。エルドア朝や、ハイス朝。どれも有名なものばかりだが、それらよりも遥かに長く遥かに強い王朝がある。それがヴェンゴーン朝だ。1524年、イングランドの貴族のジェームズ・ヴェンゴーン公が当時の王女モードレッド3世と結婚したことにより始まり幾度の戦争を乗り越え約500年間続き今に至る。
現在は、賢王エドワード10世がこの国の国王であり、今の平和なイギリスがある。
そしてここにいるのがイギリス王室第1王女アナスタシア王女だ。
本名はアナスタシア・アン・メアリーで23歳という若さで父親に負けないぐらいの政治的センスで補佐をしていて王位継承順位1位だ。さらに、数多くの経済問題解決に携わっていて世界からも注目を浴びている。
(それで、何故俺はここに呼ばれたのでしょうか?俺みたいな一般人がここにいるのは不自然に思うのですが。ただのお茶会なら俺よりももっと社交的な人が沢山いますけど?)
(貴様!無礼にも程があるぞ!)
冗談半分で言ったつもりだったがとっさに王女の近くに居た側近らしき男が俺に怒鳴りつけた。
すると王女はまあまあとでも言うかのようにその男の前に手を出した。
(失礼。冗談半分で言ったつもりでしたが、まさかこうも真に受けられるとは。やはり王族の方には通じませんでしたか。)
俺はその男に少し挑発をしてみたらその男は顔が真っ赤になっていて今にも破裂しそうになっていた。
(いや、俺も何も言われず呼ばれたもので…
そういえばなぜ国王陛下ではなく貴方が?)
すると王女はただでさえ険しい顔がより険しくなり、口を開けた。
(少し事情があってな。)
(そうですか。では早速用件を伺ってもよろしいでしょうか?
(良いだろう新木海斗。単刀直入に言う…
今、この世界は裏で混沌の波が襲っている。それが何なのかは後で言おう。そしてもちろんその混沌が表世界に出るかもしれない。だから我々はその混沌の波に終止符を打つために最善を尽くしている。そしてその最善を尽くすには君の力も必要なのだ。だから今日、君をここに呼んだ。)
(なるほど。話はだいたい分かりました。ただ、1つ疑問に思うことがあるんですが………どうして俺の力が必要なのですか?)
(それは君が奴らと交戦した唯一の生存者だからだ。)
奴ら?
(てことはその混沌の波は人間の仕業という事なのですか?)
(いや、あれはもはや人間ではない………… 悪魔だ!)
それって…
(それってまさか…)
(ああ、そのまさかだ。新木海斗
奴らのグループ名はデッドアイズ。)
(……!)
そうか。そういう事だったのか。奴らの仕業か。
なるほどこれで全てつじつまが合う。この時を待っていた。これでやっと奴らに復讐できる!
(君、大丈夫か?)
(ええ。すみません。)
どうやら俺はいつの間にか不自然に笑っていたらしい。
(現在奴らは独裁国家シーヤと同盟を結びスエニアに侵攻したことにより中東大戦が勃発しエメク、アラン、ミマリ南部と次々に占領している。)
(シーヤが!まさか…確かにシーヤは経済や宗教問題で不安定でしたがサルバト首相が何とか平和を保っていたはずです!)
(ああ、ほんの少し前まではそうだった。しかし、次第に民衆はサルバト首相に不満を持つようになりアッスーラ派総主教アフメド・サルバンを中心にクーデタを起こし政府軍は敗れ実質今のシーヤの権力は全てアフメド・サルバンにある。)
そんな…
(メディアではそんな事一度も報道されませんでしたが?)
(我々がそうした。)
(そんなバカな!どうやってですか?)
(それは今は言えない。)
(そうですか…)
どうやって情報を消したのかは知らないが今はそれどころじゃない。
(現在中東ではキュロスとリービアで連合軍を結成し何とか持ちこたえている。これ以上奴らの侵攻を許したら中東だけの話ではなくなってしまう。)
(キュロスとリービアは50年戦争で停戦状態だったはずでは?)
(ああそうだ。しかし今はそれどころじゃないと我々が仲介し、和解させ共闘している。そしてこの会議の結果我々は特殊部隊だけを使った多国籍軍を結成することが決まった。そこで君が知っている限りの情報が欲しい。)
俺は即答した。
(良いでしょう。その代わり………
俺も戦いに参加させて下さい!)
(なっ!君、正気か!話を聞いていなかったのか?我々は特殊部隊だけで多国籍軍を結成すると言ったのだぞ!それに
我々は奴らの情報をあまり持っていないが、奴らは少なくとも数えられる数しかいないと聞く。どうやってそれで戦えたのかは知らないがそれぐらい奴らは危険なのだ。本当は君を関わらせたくないと思ったほどなんだぞ。)
王女は必死に俺に訴えた。
(それでもです!あの日から………
あの日から俺は奴らに復讐すると心に決めたんです!それに俺は死ぬ気何て早々ありません。ですが、一応死ぬ覚悟も出来ています。それにあなた方が知らない情報を俺は沢山持っています。ですが、戦いに参加させてくれないのならこの情報は渡せません。この大戦で苦しんでる人が大勢いる中奴らの情報を条件付きで渡している俺が悪なのは十分に承知です。それでも俺は奴らに復讐しないといけないんです。これが俺に課せられた唯一の天命で罰なのです!)
(良いだろう。私からは許可しよう。諸君!!よく聞いてくれ。危険だと承知の上でこの大戦に全てを賭けるこの少年に新木レオンハート海斗と名を授ける!)
(一生感謝します。アナスタシア王女。)
死んでも奴らを皆殺しにする。
今始まる俺のリベンジマッチ!