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カードゲーマー現る!


 10月3日、午前10時――この日は曇り気味とも言える天気だった。

ゲーセンだと曇りだろうと雨だろうとゲーセンへ行く道のりが大変で済む話かもしれないが、ARゲームでは違っていた。

ARゲームの場合、リアルに雨が降ると言う事は一部のゲームにとっては不利な状況を生み出す事を意味している。

レースゲーム系では路面の状況や雨対策が必要であり、サバゲ―では天気の変化に応じた装備をプレイ前にカスタマイズする手間が発生する為、雨でも歓迎されるジャンルとされないジャンルがあった。

雨だろうと屋内でプレイするようなリズムゲームや対戦格闘に関しては無縁かもしれないが。

「――?」

 雨が降りそうと言う訳ではないが、空を見上げて天気を気にしていたのは一人の女性だった。

カジュアルな服装に巨尻の女性、これでも彼女はゲーマーとして有名な人物である。

その彼女が天気を少し気にした後、アンテナショップの自動ドアの前に立ち、そのまま入店した。

「彼女は確か――」

 ジージャンにジーパン、特徴的な野球帽には『YuKa』の文字が――。

彼女の名は美崎友香みさき・ゆか、彼女もまらARゲームのプレイヤーなのである。

元々は同じ環境のゲーマー女子が住むシェアハウス、そこで自分よりも上の実力者もいる中で生活をしていた。

近くにはARゲーム専門のゲーセンがあるので、シェアハウス内にゲーム筺体を置かなくてもプレイと言う点には支障がない。

そんな環境にいた彼女にとって、店内に入って行ったゲーマーには興味があった。

なぜなら、彼女が島風舞華しまかぜ・まいかだったからである。

「過去に様々なゲームで『大会荒らし』という二つ名を付けられた事もある、天才ゲーマーが何故にARゲームを――」

 友香にとって、島風が大会荒らしと呼ばれる程の天才だと言う事は、ネット上の情報以前に知識として知っている。



 シェアハウスで夕食を食べる際、アニメ及び特撮以外ではイースポーツの番組を視聴するのだが、その際に番組で聞く名前と言うのが――。

『格ゲーの大会でも、かなりの割合でレベルが上がっているようですが、ここまでレベルが上がった理由はなんでしょう?』

 テレビ番組で司会を担当する男性が、解説者として別席にいるプロゲーマーと思わしき男性に尋ねる。

プロゲーマーの人物は格ゲーの大会解説の為のゲスト枠だが、準レギュラーにも近いかもしれない位に出演しているだろう。

その外見はプロゲーマーと呼べるような物とはほど遠く、髪型や服装も普通過ぎてプロゲーマーと言うテロップが表示されないと、分かりにくい可能性が高い。

『やはり、数年前に島風という女性プレイヤーが突如として姿を現した事――それが大きいでしょう』

 数秒程の沈黙後、いくつかの言葉を選ぶかのようにプロゲーマーは島風の名前を出した。

実際、ネット上ではテレビで島風の名前を聞くたびに一種の祭りの様な状態になる。

ある種のゲーマーにとっては、島風と言う人物は今までのゲーム環境を一変させてしまったプレイヤーとして認識されていた。

またある種のゲーマーにとっては、島風の存在を『必要悪』として認識されている。

友達ごっこや一部の信者だけが集まったような環境を変えた事で、幅広いユーザーを呼び込むに成功した人物――と。

 友香は島風が乱入するようなジャンルのゲーム出身者ではない為、この辺りの話はネット上で聞きかじった程度である。

しかし、彼女が今までやってきた事はイースポーツ関係やゲーム関係のネット記事等でも書かれる事になり、ここから彼女は知る事になった。



 10月4日、友香はARゲームのフィールドにいた。

その手には偶然手にしたガジェットの方を――。

「これで決めて見せる!」

 しかし、友香のガジェットが起動する事はなかった。ガジェットに正しいプレイヤーとのデータが紐付けされている事も理由の一つだが――。

それ以上に起動しなかった理由は、使用したガジェットを本来使用するジャンルに違いがあったからである。

友香が使用しようとしたのはARデュエルで、カードゲームをモチーフとしたARゲームだ。

しかし、このガジェットでは使用できない。汎用ガジェットであれば、他のジャンルでも使えるのだが――これは違っていたのである。



 午前11時頃、友香はフィールド外のショップに来ていた。ガジェットが機能しなかった件を聞く為なのだが。

「あなたは確か――?」

 アンテナショップへ向かう友香の前に姿を見せたのは、島風舞華しまかぜ・まいかである。

友香の顔を見て反応したという事なので、おそらくはあのバトルを見ていたのかもしれない。

「ARガジェットを買いに来たのに、汎用型が品切れだったのよ」

 友香はスタッフではないのに、島風がクレームを叩きつける。

事情が読み込めない友香だったのだが、使えないガジェットを持っていても宝の持ち腐れなのは目に見えていた。

「これでよかったら、使うといいわ。使い方が分からないから、アンテナショップへ危機に行くところだったのだけど」

 まるで、欲しかったらあげる的な話し方で友香は島風にARガジェットを見せる。

その形状は汎用型とは大きく異なる為、おそらくはワンオフ関係と島風は考えていた。

「せっかくだから、その話にのってあげるわ!」

 島風は友香からARガジェットを受け取る。

受け取った次の瞬間にはARガジェットが反応したような起動音をするのだが――それに2人は気づかなかった。



 その後、島風が友香から受け取ったガジェットの正体が、実は八流のワンオフガジェットと知ったのは使用してからしばらくの事だった。

そして、島風はここから新たなゲーマー伝説を刻んでいくのだが――それは別の話となる。

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