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九十二話目 面倒事に巻き込まれた日



 入学式から2ヶ月が経った。


 あっ、そうそう、あの時先生に呼び出されたブロンデだったけど、何事も無くマルクル先輩と部屋に戻ってきたから安心してね?


 結果的にブロンデの村を救った事には変わりないからって事で、兄さんもエルドレッドさんもマルクル先輩も無罪放免って事になったらしいけど、学園の目を盗んで何やってんだって、先生達からしこたま絞られたそうだ。


 これで、少しは自重してくれるだろうって、ブロンデはマルクル先輩に感謝されてた。


 そろそろ命を懸けたとしても、学園に戻って来られるか不安だったんだって。


 うちの馬鹿兄貴がご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ないって土下座して謝ったのは言うまでもない。


 まぁ、そんなこんなで学園生活にもやっと馴染んで来たところだったんだけど…。



「やぁ、麗しの弟君(おとうとぎみ)。ご機嫌如何かな?」



 えっと、こいつ誰だっけ…。


 僕は教室棟の廊下で、知らないキザったらしい男から声を掛けられていた。


 あ~、え~、何か喉元まで出掛かってんだけどなぁ…。


 んーと…、駄目だ…。


 こいつ本気で誰だ?


『ほらっ、何とかって子爵のバカ息子よ!』


『名前はわすっちゃけどなぃ(笑)』



 えっ?


 あぁ~、はいはい、ブリーズので思い出した、思い出した。


 確かスティンガーって奴だ…。



「スティンガー先輩、ご機嫌よう。では失礼致します」


「あっ、ちょっと!!」


 誰が女の子と間違えてナンパしてくる様な奴と喋りたいんだよ。


 こういう奴は無視するに限るってもんだ。



「フッ、弟君はつれないねぇ…。良いのかなぁ?君に取って大事な情報を持ってきたんだけれど…ねぇ?」


「あっ、興味ないので。失礼致します」


 なので付いてこないで下さい。


 僕はぺこりとお辞儀をすると、再度歩き出した。


「いや、ちょっと待ってくれたまえ!話しは最後まで聞くものだよ?」



 ちっ、また回り込まれた…。


 こういうのに限ってしつこいんだよなぁ~。


 僕何か放っとけよ…、あぁ~あ。



「何ですか?スティンガー先輩」


 仕方ない、ちゃんと聞いた方が早く終わりそうだ。


 そう思った僕は、立ち止まってきちんと聞いてやる事にした。


「やっとこっちを向いてくれたね?マドモアゼル♪」



 あ゛?


 シメんぞ、コラッ!?


 誰がまどもあぜるや、っちゅーねん?


「そっ、その顔はちょっと止めてくれないかな?コルト君…。君にどうしても教えたかった事とは、君のお兄様の事だったんだよ」


 ちっ、これで諦めてくれれば良かったのに…。


 んっ?兄さん?


 何でここで兄さんの話しが出て来るんだ?


「うちの兄様がどうか致しましたか?」


「クク、やっとちゃんと聞いてくれる気になったんだね?実は君のお兄様が遠征先で大きな怪我をなさったそうだよ?傷が深いから、保健室の隣の処置室へ運ばれてくるらしいから、早く行ってあげると良い」



 は?こいつ何言って…。



 いや、確かに兄さんは今学園の遠足――と言う名の魔物狩り――に行ってていないけど、今回は日帰りだって言ってたからそこまで遠くへは行ってないはずだ…。


 瞬間的にそこまで考えた時だった、自分の事故現場の様子がフラッシュバックする。


 いや、いくらなんでも先生が引率して行ってるんだから、軽い怪我くらいはあっても死ぬ何て事はないはずで…。


 息が勝手にあがってくる。


 いや、でも…、そんなわけ…。


『シエロ、ちょっと、しっかりしなさい!シエロ!?』


『シエロ?ちっと落ち着かっせ!?聞こえてっかよ?』


 ブリーズ達の声がどこか遠くに聞こえる。


 マズい、早く兄さんの所へ行かなくちゃ…。


 早く、回復魔法をかけなくちゃ…。


 兄さん、プロクス兄さん、死なないでくれよ!?


 僕はスティンガーに何か構う事なく、保健室隣の処置室へと走り出した。



◇◆◇◆◇◆


 あれ?シエロ?


 先に食堂に行ったはずのシエロが、何か知らねー上級生と話していると思ったら、急に真っ青な顔して走って行きやがった。


 思ったよりも足が早くて、あっという間に見えなくなったけど、何かあったのか…?


 そう思いながら、その上級生の横を通りかかる。


「ククク、これであの子も僕と同じ目を見れば良いのさ…」



 あ?


 こいつ、今何て言った?


 思わず、立ち止まり振り返る。


「ヒィッ!?エルドレッド先輩!!ななな、何でここに!??僕は知りませんよ!あっ、あの子がどうなるか何て、しっ、知りませんから!!」



 そう言って、こっちも凄いスピードで走り去る胡散臭い上級生。


「ルドルフ、今のってどういう事かな…?」


「わかんねぇけど、シエロがどうなるか分からないって言ってやがった様な…」



 チッ、ちゃんと居場所まで聞き出すべきだったな…。


 どうするべきか…。


「ルドルフにブロンデ、2人してそんな怖い顔してどうしたんだよ?」


 声の方を向くと、アレックスが居た。


 おっ、丁度良いところに丁度良い奴が来やがった。


「アレックス、良いところに来やがったな。お前、シエロの匂いを追えないか?何かヤバそうな事に巻き込まれたみたいなんだ…」


「はっ!?学校内でどうやって…。いや、そんな場合じゃないんだよな?シエロの匂いはちゃんと覚えてるぜ?すぐ追うんだろ?付いて来いよ!?」


「ありがてぇ!ブロンデはランスロット先生に伝えてくれ。先生なら学園内の危なさそうな場所も良く知ってんだろ」


「わっ、分かった!!すぐ呼んでくるから、シエロ君の事お願いね!?」


 ブロンデが先生の部屋に向けて走りだしたのを見届けた後、俺らもシエロの匂いを頼りに走り出した。



 シエロ、何が起きてんだかは分からねーけどよ、無事でいろよな!?





シエロの運命や如何に!?


本日もお読み頂きありがとうございました(*^-^*ゝ



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