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八十八話目 先生の眼鏡を作った日



 赤ん坊の頃から、僕の魔力は濃いけど、量は少ないって教えられて育って来ました。


 だけど、少しでも魔力量を増やして兄姉に心配掛けまいと頑張っていたら、いつの間にか学年トップになっていたよ(笑)



「妖精達から僕は魔力量が少ないと言われて育って来ていたので、自分の魔力量が多いと言われて、正直驚いています…」


「う~ん、妖精達は基本的に魔力の塊ですからねぇ…。まぁ、多いに越したことはありませんから…」


 僕がブツブツ言ってるのにも、先生は優しく返してくれる。


 うぅ、先生優しい…。


 うちの妖精達なら後ろ向き禁止って怒鳴られてそう…。



 っと、良し、フレームが出来た。


「先生は、お顔がシュッとしているので、横に少し広めの四角いフレームにしてみました。如何ですか?」


「ありがとうございます。へぇ…。本当に無詠唱で作るんですねぇ…。さっきのデイビッド君の時も思いましたが、不思議な形をしていますねぇ…。年甲斐もないかもしれませんが、格好良いです♪」


 うん、何とか気に入って貰えたみたいだから良しとしよう…。


「では、次は検査を致します。少し眩しいですので、お気を付け下さい」


「はい、お願いします」


 っし、そんじゃ本日2回目の視力検査と行きますか!!



 ………。


 結果が出た。


 先生、まさかの遠視だった…。


 いや~、視力検査の結果がさ、両方とも2.0なんだもん。


 最初はえっ?もしかして老眼?っても思ったんだけど(失礼)、再度光魔法の方で診察してみたら、どうやら先生の目は屈折異常を起こしてるみたいだって事が分かった。


 ん~、本当だったら眼鏡じゃなくて手術をするところ何だけど、この世界じゃ無理そうだし…。


 取り敢えず眼鏡で誤魔化して、他に方法が見つかったらそっちを試すって事にしようかな?


「シエロ君、どうかしましたか?」


 うぅ、黙り込んだままだと、さっきのデイビッド君みたいに心配掛けちゃうし、かと言って本当の事をそのまま話すのもなぁ…。


「いえ、すいません。先生の目がちょっと他の人とは違う症状だったので、その方針を練っていました」


「そうですか…」


「でも大丈夫です。眼鏡で何とかなりそうですから…(取り敢えずは(ボソッ))」


 嘘は付いてない!!


 と自分で自分を誤魔化して、レンズの作成に取り掛かった。


 先生、ごめんなさい。


 他に良い方法が見つかったら絶対すぐに駆けつけて治しますから!!


「【土変形:遠視用眼鏡レンズ1.0】ではこれをはめて…、出来ました。先生、どうぞ」


 出来立てホヤホヤの眼鏡を先生に手渡す。


 さっきデイビッド君が着ける所を見ていたからか、先生はすんなりと眼鏡を顔にかける事が出来た。


「そのまま少しジッとしていて下さい。調節致しますので…」


 先生に断りを入れてから、眼鏡が顔から浮いている箇所を点検、調節していく。


 顔にピッタリフィットしているのを確かめたら、今度は視力検査を行う。


 ピントもハッキリあってるし、うん、大丈夫みたい。


「では先生、ゆっくり周りの様子を見てみて下さい。何か異常はありませんか?」


 先生は、先ず少し離れた僕を目で追って、少し驚いた後周囲を見回した。


 あぁ~、嬉しそうな顔しちゃって…。


 でも、人が嬉しそうな顔してるのは見ていて気持ちが良いね♪


「シエロ君、君は凄いですね!?教師になってからこの症状に気がついて、それからずっと悩んで来たと言うのに…。一族の族長でも治せなかったのですよ?あぁ、本当にありがとうございます。そうだ、君にお礼をしなくては…」



 エルフの族長何て知恵の宝庫みたいな人でも眼鏡に行き着かないって本当にどう言う事なの?


 次に女神に会う事があったら、小一時間程問い詰めなければいけないな…。



 っと、今は先生を止めないと!


「先生、お礼何か入りませんよ!?今まで誰からも受け取ってはいませんから…」


「それでは私の気持ちが済みません。年寄りの我が儘だと思って、貰ってやって下さい」


 そう言いながら、先生に握らされたのは一本の杖だった…。


 60~70cmくらいの長さで、直径2~3.5cmくらいの太さ。


 先端に緑色の大きな石がはまっている、緑がかった艶のある木製の杖。


 うわ~、見るからに高級そう…。



「いくら何でも、こんな高そうなお品は頂けません!」


 そう言って先生に返したのだけれど…。


「まぁ、そう仰らず。この杖は私が君のお祖父さん達と冒険者をしていた時に使っていた物なんですが、今は使う機会もなく、机の中で眠っているだけなんです。もう一度この杖に日の目を見させてあげて下さい。ね?」


 アーサー達との思い出が詰まってる杖を君に託したいんです。


 とまで言われて、それでも押し返す勇気は僕には無かった…。


 せめて、怖いもの無しくらいの勇気があれば、誰が落ち武者だって選択でき…、ゲフンゲフン。


「分かりました。有り難く大事に使わせていただきます。先生、ありがとうございます」


「お礼を言うのは此方の方ですよ?これで明日からの君達の授業もばっちりです♪」


 サラリと長い銀の髪が揺れる。


 うん、やっぱりフレームのつる(・・)の所に、ボールチェーンを付けて良かった。


 何か恋愛シミュレーションゲーム辺りに出てきそうなキャラっぽくなっちゃったけど、絶対ボールチェーン付けた方が似合う気がしたんだよね。


 そのまま首から下げておけるから無くす心配も無いし一石二鳥♪


 因みに、チタン製のフレームとボールチェーンには、ちょっと色を付けて見ようによっては金色にも見える様にしてある。

 銀色(髪の毛)に金色(眼鏡)、うーん、ゴージャス(笑)



《ガチャ》


「「「「ただ今戻りましたー」」」」



 おっ、ナイスタイミングで皆が戻ってきたな。


 丁度、先生から頂いた杖を異空間リングの中に仕舞った所で扉が開き、ルドルフ達が部屋の中になだれ込んできた。


 助かった~、先生、皆が帰ってきたから、異空間リングの件はまた今度にしましょう?ね?ね?


「あれ?先生も眼鏡してるッス!?」


「本当だぁ~」


 おっ、早速スミスさんとデイビッド君は先生の眼鏡に食い付いた。


 流石はお目が高い(笑)


 と、言う事は…。


「シエロ、お前ジッとしてろって言ったろ?」


「まぁまぁ、ルドルフ、先ずはこれを見てみてよ」


 やっぱり怒られそうになったので、慌ててステータスカードをルドルフに押し付ける。



「ステータスカードがどうしたんだよ?ん?魔力値1000!?はぁ!!?」


「えっ?どう言う事?うわっ!?シエロ君凄くない!?」


 ステータスカードを持っているルドルフに群がり、覗き込んでは驚愕の声をあげながら僕の方を見る。


 …を繰り返している。



 いや、それ1回で良くない?

 何回繰り返すの?そのルーティン。



「見ての通り、僕の魔力残量は700あるよ!全然無理はしてないよ!?」


「いや、そう言い問題じゃねぇんだけど…。はぁ、まぁいいや…」


 何か呆れられた気がするけど、まぁいいや。



 それよりもデイビッド君の様子を聞かなくちゃね?


「デイビッド君の様子はどうだった?変わったところは?」



 当のデイビッド君は、スミスさんと一緒に先生の眼鏡に興味津々だから、取り敢えず放置。

 本人よりも周りの目の方が役に立つ事は多いから、ルドルフ達からの話しを先ずは聞いてみる事にする。


「少し目が疲れたみたいだけど、それくらいかなぁ?」


「お前に言われた通り走らなかったし、遠くの森とか見ては喜んでたぜ?変わった様子はブロンデの言った事くらいだな」


「ありがとう、それくらいなら許容範囲だ…。デイビッド君、ちょっと来て?」


 今のところ、これと言った異常は外からは見受けられなかったから、次は当人に聞いてみよう。


 あっ、デイビッド君が終わったら先生にも説明しないと…。



 こうして、僕の学園初日は終わっていったのだった。


 あ~、明日からいよいよ授業が始まるのか~。


 楽しみ何だけど、ちゃんとついていけるか不安だ…。

 今回の事で魔力が人よりも多くなったって言うのが分かったけど、魔力操作は精密さが求められるって兄さん言ってたしなぁ。


 目標はなるべく目立たない様に、かつ悪い成績は取らないって事かな?



 よぉし、がっ、頑張るぞぉ~?






ランスロットは某恋愛シミュレーションゲーム風の容姿になりました(笑)


お楽しみ頂けたなら幸いです。


本日もお読み頂きありがとうございました。



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