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八十六話目 眼鏡と妖精と精霊と…な日



 デイビッド君、反応プリーズ!!


「凄い…ね?シエロ君ってこんなに可愛い人だったんだ…」


 あい?


 いや、そういう反応が欲しかった訳じゃないんだけど…。



「あは、あはははは、凄い凄い!!ここから先生の顔まで良く見えるよ!?うわっ、シエロ君の後ろのトカゲ気持ち悪っっ!?」



 デイビッド君はポツリと呟いた後、興奮気味に辺りをグルグル見回しながら、笑ったりビックリしたりし始めた。


 そうそう、そう言う反応が欲しかった訳で…。


「シエロ君、外に出てみても良い?」


 近い!


 だから距離感が可笑しいってば!!


 チューしちゃうってば!?


「いっ、良いけど、慣れるまでは色々危ないから…」


 今、正に危ない訳だし、ね?


「俺らが見てるよ。それなら大丈夫だろ?」


「何かあったらすぐ戻ってくるから、ね?」


 ルドルフまで加勢して、そんな事言われたら駄目だとは言いづらいじゃないか…。


 まぁ、僕達全員で見てれば大丈夫かな?


「ん~、分かった。良いよ?その代わり、危ないから走るのは禁止ね?」


「うん!絶対走らない!!約束するよ!!」


「じゃあ、ちょっと出てきます。先生、魔法を使ったばかりで疲れてると思うんで、こいつは此処で休ませてやって下さい」


 は?


 ルドルフ君、君は何を言ってんの?


「いや、僕は全然平気だけど…」


「いーや!お前の魔力量が多いのは分かるけどよ?何発も連続で魔法を使ってんだぞ?デイビッドは俺らがちゃんと見ててやるから、ちょっと休んどけ!分かったか?」


「うっ、うん。分かっ、た…」


「うしっ、先生、お願い出来ますか?」


「勿論ですよ?シエロ君とお話しでもしながら待っていますから、後で感想を聞かせて下さいね?」


「わかりました!」



 僕の事なのに、僕が介入する隙も、間もないままに話がトントンと進んでいく。


 んー、前世分も数えたら僕の方が明らかに年上の筈なのに、ルドルフの兄貴力に太刀打ち出来ない…(汗)


 あれ~?確か彼、末っ子デシタヨネ?



「じゃあ、行ってきます。シエロ、ジッとしとけよ?」


 そう言い残して、ルドルフ達は部屋からさっさと出て行ってしまった。


「フフフ…」


 呆気に取られている僕を見ながら先生は笑った。


「すいません。2人があんまり可愛くて…」



 先生の透き通る様な青い瞳が三日月みたいに、細く歪んでいく。


 そんな眩しいものを見る様な眼差しで、優しく笑わないで~!


 うぅ、僕恥ずかしくて死にそう…(泣)


 たまらなくなって顔を俯かせると、上から楽しそうな笑い声が降ってきた。


「フフフ、すいません。では皆さんの帰りを、お茶でも飲みながら待っているとしましょうか…」


――――――


《コポポポポ》


 先生がティーポットからお代わりのお茶を注いでくれる。



「さぁ、どうぞ?」


「ありがとうございます…。ふぅ、美味しいです」


「それは良かった」


 うう、まだ笑ってるし…。



「フフフ、すいません。謝りますから、そんな怖い顔しないで下さい。実はね?シエロ君とお話ししたい事があったんですよ」


 睨んでるつもりはなかったけど、どうやら恥ずかしさのあまり、目つきが悪くなってたみたいだ。


 ヤベッ、先生睨み付けるとか、僕にそんな根性はないよ!?



 えっ?


 お話し?まさか先生を睨み付けたから退学ですか!?


『だから、何でそうなるのよ…。良く見てみなさい?ほら、ランスロットさんの右肩のとこ』


 えっ?先生の右肩?




 あっ!?


『やっほぉ、もう隠れなくて良いって言われたから出てきたわよ~♪』



 先生の右肩に、ブリーズとよく似た感じの妖精さんが座っていた。



「先生、その子…」


 いや、そんなイタズラが成功して喜ぶ子供みたいな顔されても…。


「フフフ、やっぱりシエロ君は【見える人】だったんですね?」


 先生の真っ青な瞳が楽しそうに揺れる。


「僕達【森の一族】には見える人が多いんですよ?そのおかげで彼女達と長い間、交流が持てているんです。」


『でも貴方ってフツーのヒューマン族でしょ~?しかも話しも出来る何て~♪そんな人族なかなかいないわよ~?』


『シエロは普通じゃないからね~?』


『んだんだ…』



 うちの子に若干ディスられた気がしてならないけど、まさか担任の先生が【見える人】だったとは…。


 こんな偶然って本当にあるんだね?


『あら?偶然じゃないわよ~?』


 え?

 偶然じゃないって、どういう…。



「アイレばっかりシエロ君と話してズルいですよ?何のお話しですか?」


「アイレ、さん?」


『あたしの名前よ?こう見えてもあたし、風の精霊さんなの~♪アイレって名前は、らーさんに貰ったのよ?』



 へぇ~、風の精霊…。


 えっ!?


 思わずアイレさんを二度見してしまう。


 だってさ、アイレさんってブリーズと殆ど変わらないし、前に会った光の精霊…、例のあの人(笑)と比べても何て言うか…。


 んー、あっ!!そう!もっと人族の体型に近づくと勝手に思ってたから、驚いたんだ!?



『あ~、それ良く言われるのよね~♪らーさんってば精霊持ちだと目立つからって、あたしが精霊になってからも妖精だったときの姿のままにさせてるのよ~。すっごい変人でしょ~?』



『シエロもそうなりそうで怖いわね?』


『んだんだ』



 何かやっぱりうちの子にディスられてる気がする…。


 でも、精霊持ちはやっぱり目立つのか…。


 心のノートにしっかりメモっておかなくてはね?


 目立つのはうちの兄姉だけで充分ッスよ!!



「ちょっとアイレ!シエロ君に変な事を吹き込むのは止めて下さい!!」


『えぇ~?あたし、真実しか話してないも~ん』


 うん、ランスロット先生がアイレさんに会って何年経つのかは分からないけど、何処のうちも妖精に翻弄させられるって構図は一緒の様だ。


 僕が聞いているのに気づいた先生は、すぐ脳内会話に切り替えたみたいだけど、アイレさんは普通に話してるから内容がダダ漏れ(笑)


 その内容を聞いているだけでも、先生がアイレさんにのらりくらりとかわされてる感じが伝わってくる。



『ちょっとシエロ~?いつ私達が貴方を翻弄したって言うのよ~?』


『んだんだ、されてるのはこっちだべ』



 え~?


 じゃあ、僕が君達を困らせてるって言うの~?


 僕達の間に見えないバチバチッとした静電気が起こる。


 やんのかこのやろ~。



「コラコラ、君達、喧嘩をしてはいけませんよ?妖精は幽玄なる隣人とも言われ、幽かに、しかし確かに私達の廻りを漂って守ってくれている存在です。そして、契約者は身体を保たない貴方達を守る殻となる存在です。貴方達は互いに互いを守護する存在です。些細な事で仲違いしてしまってはつまらないですよ?」


『そうそう、いつまでもあたし達みたいに仲良くしてれば精霊にだってなれるわよ~♪』



 先生とアイレさんが、今にも喧嘩のゴングが鳴ろうとしていた僕らの間に割って入る。


 長年を共に過ごしてきた先生とアイレさんの言葉には、とても温かな重みを感じて、そんなにも長い時間を一緒に過ごしている2人が凄く羨ましく思えた。


 改めて、2人の方に目をやり、向き直る。


 同じタイミングで向き直った事が、少し嬉しくなる。


 あぁ、我ながら単純だな~(笑)



「変な事言ってごめんね?ブリーズ、クレイ」


『私こそごめんなさい』


『ごめんなぁ~?』



「そうそう、そうやっていつまでも仲良く過ごして下さいね?途中で道を違えてしまう程、悲しいものはありませんから…」


 そう言って目蓋を伏せた先生は、今にも泣きそうな、見ているこっちの胸が締め付けられるような、そんな顔をしていた。

 一体、先生の過去に何があったんだろう?

 こんなにも辛そうに笑わなくてはいけない様な事って…?



 ……………。


 あのさ、こんな時にさ、しかも悲しそうな表情の先生を前にして本当にアレなんだけどさ…。


 こういう表情も含めさ、先生の方があの人よりも神父様らしくない?


 精霊よりも精霊らしい整った容姿だし、本職のハズのあの人より説法も様になってるしさ…。



◇◆◇◆◇◆


「ックシ…」



 くしゃみ?ですか…?


 光の大精霊たるこの私がくしゃみ等、珍しい事もあるものですねぇ…。



「神父様、お風邪ですか?」


「あぁ、シスターララ。いえ、風邪等ではないですよ?少し、鼻がムズムズしただけですから…。それより、今日は彼が来る日でしたね?」


「あっ、はい!神父様。そろそろいらっしゃる頃合いかと思います!」


「では皆で迎える準備を致しませんとね?フフ、楽しみですねぇ…」


「はいっ!!」


 そう言って走り出していくシスターララ…。


 あぁ、あんなに走ってはまたシスターアリシアに怒られてしまいますよ…、あぁ、言わんこっちゃない…。


 フフ、今日からこの騒がしくも楽しい日常に、仲間が1人増えるんですねぇ…。


 フフフ、こんなに楽しい気持ちになったのは一体何時ぶりでしょうか?



 さぁ、私の後継者(・・・)たる彼を、私の家族達と共に出迎えると致しますか…ね。





ランスロットの後ろに居たのは妖精ではなく精霊でした。


やっぱりな~と思われた方も多いかと思います。


分かりやすい小説を目指してみようかと…(笑)


本日も此処まで読んで頂きありがとうございました。



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