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八話目 ガン見された日



 兄と姉の喧嘩が何とか収まったところで、僕のご飯の時間になりました。


 そう、苦行タイム再びである。



 なるべく、現お母さんの胸を見ないように、気をつけて飲むようにはしてるんだけどさ…。

 チラッと横を見ると、此方を見つめる、キラキラした目が4つ…。

 なんでこんなにガン見されてるのかな?


 そう、仲直りをした2人の兄妹は、そのままお食事中の僕をじーーっと見つめているのだ。

 赤ん坊の食事シーンが珍しいだけかも知れないけどさぁ…。

 そんなに見つめられていては、流石に少し恥ずかしい。


 ちょっと飲むのを止めて、口も放してみる。 そのまま2人の真似をして、じーっと見つめ返してみた。 何とか伝わらないかな…。



「あらあら、2人共、シエロちゃんがご飯食べにくいって言ってるわよ?ちょっと、見ないであげてね~?」



 現お母さん、グッジョブ

 解って頂けて、僕は凄く嬉しいです。

 しかし、そう言われて心底残念そうな顔をした2人はというと…。


「「はーい」」


 と渋々言いながら、手で目を覆った…。


 うぉおい!

 見ないように、って言われてそれかよ!!?


 2人共、指の隙間から見てるのは分かってるからな!!


 特にルーメン現お姉さん!貴方隠す気ないよね?

 どんだけ指の隙間開いてんの?

 それはもう、ジャンケンのパーだよ!?

 キラキラしたおめめ一つも隠れてないから!!



「こぉーらっ」



 あんまりにあんまりな兄姉達に狼狽えていると、現お母さんが指の隙間から此方を見ている2人に、軽めの拳骨を落とした。


 拳骨ともいえないくらい軽~く、ポンポンって感じだったけど、2人は拳骨を落とされた場所をおさえて驚いていた顔をしていた。


 えっ!?あんな軽くて優しい拳骨にそんな驚くの?


 前世の母さんだったら実の子供、余所の子供関係なく、強烈な拳骨落とされてたけどな…。


 友達に、お前の母ちゃん怒らすとすげー恐いよな?

 って、よく言われてたし。


 あんなに優しい拳骨始めて見たわ。 やっぱり、現お母さんは優しい人なのかな?


 いや、比較対照が違いすぎるか…。

 うちの母さん、色んな意味で規格外だったしな。



「人の嫌がる事をしてはいけません。と、この間教えたばかりでしょう?それに赤ちゃんにとって、お食事を取る事と、眠る事はお仕事なのよ?2人はお父様のお仕事の邪魔をするかしら?」


 2人はふるふると同じ動きで首を振った。



「でしょう?だったらお食事の間はシエロちゃんを見ないであげてね?プロクスは立派な騎士に、ルーメンは立派なレディになるのだもの、これくらい簡単に出来るわよね~?」



「「はいっ!!」」


 うん、今度は2人共、良いお返事だね。

 元気な事は良いことだし。



「それじゃあ、シエロちゃんがお食事を終えるまで、自分達のお部屋で絵本を読むか、お勉強するかしていらっしゃい?」


 終わったら教えてあげるわ。

 と、現お母さんに言われた2人は、良いお返事を残して、部屋を出て行った。

 まぁ、ルーメン現お姉さんは、チラチラと最後まで僕の方を見てたけど、それはしょうがないよね。


 ぱたんっ。

 と、部屋の扉が閉まったところで、僕を抱いたままの現お母さんは、にっこり笑いながらこう言った。


「さて、と、シエロちゃーん。お兄ちゃんとお姉ちゃんは行きましたよ~?さぁ、お食事にしましょうね?」



 はーい。




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