八十四話目 初めての放課後は…な日
あ~、美味しかった。
うちのコックのマシューさんだけが進んでる人だったらどうしよう、とか内心失礼な事ばっかり考えてもいたけど、ここの食堂のオバチャンの作る食事も寮の食事も、それに負けないくらい美味しかった。
この食堂では昨日も食べたはずなんだけど、初日から色々あってくたびれてたからか、殆ど味を感じる間も無く食べ終わっちゃってたんだよねぇ…。
いや~、昨日の食事には失礼な事しちゃったよ、うんうん。
そんな益体も無い事を考えながら、返却口に食べ終わった食器を返却する。
「おばちゃ~ん、美味しかったで~す♪」
「あら、良かったわ~。お粗末様ね~?」
おばちゃんに笑顔で感想を述べる。
おばちゃんもニコニコ、僕もニコニコ。
良いね、お互いにハッピーだね♪
あれ?
何であの3人組は神妙な顔してこっちを見てる訳?
ん?
『シエロは気にしなくて良いわよ?』
『んだな、シエロは何も気にすっことねぇからな?さすけねぇから…』
えー?何それ、2人は何か知ってるの?
えっ?もしかして分かってないの僕だけ?
目茶苦茶気になるじゃんか~。
「はい、皆さん。昼食を食べ終わった人から、各自教室へ戻って下さい!まだ食べている人も、まだ時間はありますから、ゆっくり食べて下さいね~?」
「鐘が2回鳴る迄に教室に帰っていれば大丈夫だからね~?」
あっ、先生方から、教室へ戻っている様にと指示が出された…。
こうなったら、教室へ戻る道すがらにでも皆を問い詰めちゃうよ!?
――――――
何で誰も教えてくれないんだろう…。
えっ?2日目にしてまさかのハブ?
えっ?イジメ格好悪いよ!?
「おい、シエロ~。何落ち込んでんだよ」
「だって、何かした?って聞いても誰も教えてくれないんだもん…」
「えっ?ちゃんと答えたじゃない。シエロ君が凄すぎて、授業についていけるのか不安になったって…」
嘘だ~、皆優秀なのに、そんなはず無いだろ~?
机に突っ伏した状態から顔だけあげて抗議すると、僕の机の周りを取り囲む様に立っていた3人が深いため息を吐いた。
なっ、何だよぉ~?
「お前って、変なトコ鈍いよな?」
はい?
「さっき、シエロ君がやってたみたいな無詠唱での魔法の行使何て、6年生だって出来ない人の方が多いよ?」
えっ?無詠唱が出来ない?
えっ?
「シエロ君のお手本がプロクス様だから、しょうがないのかもしれないけど、1年生でアレが出来たら学年の首位クラスを目指せるよ?」
マジでー!?
「あっ、また突っ伏した…」
「シエロ君?大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫…。ちょっと自分の無知さに凹んでるだけだから…。すぐ立ち直るから…」
帰省して来た時とかに、兄さんが普通に無詠唱で魔法使ってたから、この世界じゃあんまり珍しい事じゃないと思ってたのに…。
かと言って、姉さんは攻撃魔法ってより回復系の人だから、あんまり見せてもらう機会がなかったし…。
あぁ~、父さんとか母さんにもっと詳しく聞いとくべきだったのかな~?
お祖母さんだって無詠唱でバカスカ魔法ぶっ放してたからな~…、祖父さん相手に…。
うわぁ~~。
今世はなるべく目立たずひっそりと生きよう何て思ってたのに、初っ端から大自爆してるじゃんか…orz
うあぁ~~~~(混乱)
《カラララーン、カラララーン》
「はい、皆さん戻ってます…。シエロ君はどうしたんですか…?」
あっ、2回目の鐘…。
――――――
「さて、今日は少し事故があった為、実験棟の見学は出来ませんでしたが如何でしたか?実験棟に授業で行くのは半年くらい後になりますが、その頃には直っているでしょうから心配はいりませんよ?」
いやいや、ガチでどんな規模の爆発だったんだよ!?
半年後には直ってんじゃない?
ってあんまり軽く言うもんだから、一瞬流しそうになったけど、実験棟半壊くらいしてんじゃないの!?
他の皆もそれ聞いて顔が引きつってるし…。
上級生パネ~。
「では、本日の日程は全て終了となります。寮の門限までは学園内ならどこで何をしていても構いませんが、あんまり危ない事はイケませんよ?それでは皆さんまた明日、元気にお会いしましょう♪」
「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」
《ガヤガヤザワザワ》
最初の一週間は午前中で学校が終わるっては聞いていたけど、あっという間だったなぁ…。
でもまぁ、お陰で工作する時間は取れるから良いのかな?
えっ?目立たない様に生きるんじゃなかったのかって?
もうバレてる相手に隠してどうすんのさ?
それに、僕がどうにか出来る問題なら解決してあげたいしね?
「デイビッド君、放課後になったし、眼鏡作りを本格的にやりたいんだけど、今日大丈「勿論だよ!!で?何処で作業するの?」
だから、返事が速い!?
とは言え作業場所か…。
「シエロ、いい場所知ってんのか?」
「シエロ君、なるべく目立ちたくないって言ってたもんね?まぁ、お兄様が凄い有名人だから、多分無理だと思うよ?」
うん、兄さんはやっぱり1回穴に埋めよう。
それにしても作業場所何て、考えてなかったな…。
僕の箱庭の中に連れてっても良いけど、またえらい騒ぎになりそうだし…。
でも他に場所何て、寮くらいしかないけど…
「おや?噂の眼鏡作りですか?先生も興味があるのですが、君達が良かったら私の部屋で作業しませんか?」
おっと、思ってもみなかった人から声を掛けられたぞ…。
4人揃って振り返ると、心底楽しそうな笑顔を浮かべたランスロット先生が立っていた。
「えっ、良いんですか?お邪魔では?」
「勿論ですよ。先程も言いましたが、私も眼鏡に興味があるんですよ♪まぁ、シエロ君達が嫌でなければ、ですがね?」
とんでもない!
ここでやるには目立ちすぎるし、寮の部屋でやるのは先輩に迷惑が掛かるし…って悩んでたから、寧ろ願ったり叶ったりだ。
その旨を先生に伝えると、先生はまた嬉しそうに笑った。
『ウフフ、ラ~さんったら嬉しそうな顔しちゃって♪』
ん?先生の後ろに何か居た様な気がしたんだけど…。
気のせいかな?
「あーーっ!?シエロ君達ずるいッス!あっしも先生の部屋、見に行きたいッス!!」
うわっ、すっ、スミスさん!?
だから、声がデカい!!そして近い!!
「フフフ。勿論ゾーイさんも一緒にどうぞ?5人くらいなら私の部屋にも入れますからね?」
「ヤッターッス!」
うーん…。
先生の部屋を作業場に貸して頂けたのは有り難い事だけど、何だか大事になってきた気がするなぁ…。
はい、何だかんだでランスロットの部屋にお邪魔する事になったシエロ達ですが、ランスロットの後ろに居るのは!?(笑)
本日もお読み頂きありがとうございました。