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七十七話目 家族との再会と異変を感じた日



 ブロンデは本当に足が速くて、結局追いつく事が出来なかった。



 仕方なく、1人で待ち合わせ場所に向かう事に…。


 え~っと、確か校門近くの、理事長先生の銅像の前って言ってた様な…。


 あっ、あそこにやたらデカい鬼瓦が居る!!


 絶対あそこだ(笑)



「父様、母様!」


「やぁ、シエロ。来たね~?寮の部屋はどうだった?入学式の前に、子爵のご子息に絡まれてしまったと聞いたけど?」



 えっ?誰から聞いたの?と思ったけれど、父さんの後ろに兄さんを見つけたので、謎は一瞬にして解けた。


「マルクル・ソフィア先輩と同室だったので、何も問題も無く大丈夫でしたよ?兄さんと同じパーティーの方だとか…」


「あぁ、マルクルと同じ部屋なら安心だね♪彼は凄く頭が良いから、仲良くしておくと良いよ?」


 やっぱり【賢人】何て呼ばれるくらいだからか、マルクル先輩はいつも学年で常に1位の成績をキープしているらしい。



 何だ、やっぱり正しい意味での【賢人】何じゃないか…。


 あんなに謙遜しなくたって良いのに…。


 スパーク君?


 いつも兄さんの肩に座っていて、僕らの会話を楽しそうに聴いているはずのスパーク君の様子が、今日は何処か可笑しい。


 顔色も悪いし、何より呼吸が荒い。


『ごっ、ゴメンね?朝から、何か体が言う事、きかなくて…』


 いや、そんな事は良いから、無理しないで兄さんの中に戻った方が良いんじゃない?


 いつもは確かそうしていたはずなのに、今日は何故戻らないんだろう?



『うっ…うん。そうしたいんだけどさ…。実は…』




◇◆◇◆◇◆


 シエロも、もう学生か…。


 この前まで赤ちゃんだったのに、月日が経つのも早いものだね…。


 おっと、まるでお爺さんみたいになっちゃった…。


 フフフ、僕だってまだ小等科の生徒なのにね?



「プロクス、弟と合流出来たか?」


「あれ?エル…。親御さんは?ルド君だけかい?」



 声を掛けられたので、声のした方へ振り返ると、さっき別れたはずのエルドレッドが居ました。


 隣には笑顔のルドルフ君。


 良かった、無事にエルも合流出来たんだ。


 と、ホッとした反面、ご両親の姿は無く、2人しか居ないことに違和感を覚えました。



「うちの両親は忙しいからな…。入学式が終わったらとっとと帰っちまったよ?鍛冶屋はひっきりなしに客が来るからな」


「あ~、街一番の鍛冶師は大変だね?おじさんの腕が良すぎるのも考えものかな?」


「何言ってんだよ。それよりよ?お前の可愛い弟さんは、何やってんだ?」


 エルドレッドに言われて、シエロの方に視線を向ける。


 僕と父様の間くらいの、何もない空間を真剣な顔つきで見つめていた。


 もう一度確認してみるが、其処には何も無く、確かに知らない人が見れば、可笑しな光景に見えるのかもしれない。


「あぁ、実は――」


「何だよ、兄ちゃん知らなかったのか?シエロは妖精が見えるんだぜ?」



 ありゃ?得意そうな顔をしたルドルフ君に先を越されてしまったね。


 でも、ルドルフ君が嬉しそうだから、良いかな?


「そうなんだ。シエロは赤ちゃんの時から、妖精の姿を見て、言葉を交わせる能力を持っていてね。今も、妖精と話しをしているんだと―――」


「兄様!大変なんだ!!兄様の妖精さんが!?」


 さっきまで妖精と会話していたらしきシエロが、険しい顔をしながら僕の側までやってきました。


「シエロ?僕の妖精さんって言うと、炎の…?」



 シエロの言う僕の妖精さんと言う事は、いつかお祖母様に掛けていただいた魔法を通してやっと会う事が出来た彼の事でしょう。


 文字通り燃え盛る真っ赤な頭と同じくらい顔を真っ赤にしながら挨拶をしてくれた彼――、スパーク君…。


 彼に一体何が…?



「そう、そのスパーク君が、もうすぐ精霊様になるんだって!!その準備が整ったって言ってるんだ!」



 え?


 思ってもいなかったシエロからの答えに、僕の思考は完全に停止してしまいました。


 僕に、あんなにも頼もしい妖精さんが付いていてくれるという事実だけを切り取っても、奇跡が起きている様な気持ちになって嬉しかったのに、更にその子が精霊に?


 シエロが、自分の事の様に嬉しそうに説明してくれている姿を見ながらも、僕の頭が動き出す事はありませんでした。



 精霊様にお会いする事。



 それは、小さい頃からの僕の一番の夢でした。


 お会いして、出来る事ならお話しをしてみたい。


 その夢がもうすぐ叶う?


「兄様、ちゃんと聞いてますか?スパーク君はこれから少しの間、精霊に生まれ変わる為に安全な場所に隠れます。次に会えるのがいつになるかは分かりませんが、戻って来た時には、兄様にも姿が見える様になっているはずです。その時、是非彼に名前をつけてあげてください」



「な、名前?」


 姿が見えずとも、常に僕の側に居てくれた彼と別れるのは寂しいし、心細い事ですが、彼が無事に精霊様になれると言うのなら、僕は何年だって待つ事は出来ます。


 しかし、戻って来た彼に名前をつけるとは、一体?


 第一、彼の名前は【スパーク】という名前だった筈です。


「兄様、スパークと言うのは、種族名に他ありません。そして、精霊になった時、兄様の前に姿を現すと言う事は、兄様と契約を交わしたい。という気持ちの表れでもあります。その時に兄様から名前を貰う事が出来たなら、その時点で契約完了となるのです」



 シエロは、焦っているかの様にまくし立てる様な口調で、僕にそう説明してくれました。


 名前を付けると言う事は、彼との契約完了を表す、謂わば儀式、と言う事なのでしょう。


 そして、恐らくシエロは、僕にその覚悟が有るのかを問うているのだと、分かりました。


 聞けば、精霊に生まれ変わるのは命を掛けて行う事なのだそうです。


 そのまま孵化する事無く、消滅してしまう妖精も数多くいるのだとか…。



 そんな命懸けの儀式をこれから、僕の為に行ってくれようとしているスパーク君へ、僕の覚悟を伝えて欲しいとシエロは言いました。



 初めて会ったあの日から、姿を見る事は叶わなかったけれど、彼が掛け替えの無い友である事に変わりはありません。


 僕は、有りったけの思いを込めて、スパーク君に話し掛けました。



「いつまでも、君の事を待っているから…。無事に戻って来て下さい」


『ありがとう。絶対帰ってくるから…』



 妖精の声は僕達には小さすぎて、聞く事等出来ない筈なのに、この時だけは、確かにそう聞こえたのです。


 僕の思いを伝えた後、シエロの視線が僕の前から父様の前を通り過ぎ、空へと移って行きました。


「行っちゃいました。次会う時は、立派な精霊になってるからね?だそうです」


 きっと直ぐですよ!?


 と笑ったシエロの輝かしい笑顔に、僕も釣られて笑顔になったのでした。



 いってらっしゃい、スパーク君。


 またいつか、会おうね?





遂にスパーク君の精霊化への準備が整いました。


祖父さんの様なゴリマッチョにならない事を願う限りです(笑)

本日もお読み頂き、ありがとうございました。



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