七話目 デジャヴった日
次の日の朝、いつもの様にベビーベッドの中で目を覚ますと、デジャヴを感じさせる瞬間にかち会いました。
いや、まぁ、昨日とは違って、殺し屋の様な顔の子供に睨まれてるとかじゃないんだけど…。
肩口で綺麗に切りそろえられた現お母さんよりも濃い茶色の髪の毛。
宝石のアクアマリンを思わせる、透き通った水色の瞳を持った、将来安泰だね☆な幼女が、ベビーベッドの格子越しに僕を見つめていた。
は、はろー?
僕の顔か、体のどこかしらに穴が空くんじゃないかっ、ていうくらいジーッと僕を見つめている女の子に、軽く手を振ってみる。
さっき、あまりにも吃驚しすぎて、思わずビクッてしたのは現お母さんに内緒にしてください。
お願いします。
「おかあさまー!シエロ、ビクってした~」
ケタケタ笑いながら、アッサリ現お母さんにばらされた…。
クスン。この人キライ。
「あらあら、ルーメン。そんな事言ったら駄目でしょう?ほら、見てご覧なさい?シエロが怒っているわよ?」
そうだよ?僕、大人げないから怒るよ!?
唸れ!僕の表情筋!!
思いっきり不機嫌です。
と、下唇を尖らせて、眉間に皺をよせながら、現お姉さんの方を見ると更に笑われた。
「あははははは、へんなかお~」
「こらっ、ルー!シエロは赤ちゃんなんだよ?イジメたりしちゃダメじゃないか!!」
あっ、プロクス現お兄さんもいらしたんですか?
そうそう、もっと言ってやってくださいよ。
えっ?幼女相手に何言ってるんだって?
しょうがないじゃん。
僕、赤ん坊だしー、まだ喋れないしー。
「えー!?ルー、シエロのことなんかイジメてないもん!」
「じゃあ、どうしてシエロがこんなすごい顔してるのさ?」
「ルーのせいじゃないもーん!」
「ルーメンがイジメたからだろ?」
あっ、アホな事考えてたら兄妹喧嘩が始まっちゃったよ。
しまったな、何てったって僕が原因だ…。
っていうかプロクス現お兄さん、凄い顔って…。
貴方にだけは、言われたくないよ!?(泣)
まっ、まぁ、いいや…。
とにかく、ヒートアップする前にどうにかして2人を止めないと…。
「あ゛ー!、うー!?」
とりあえず、叫びながら手足をバタバタさせてみた。
とりあえずって言っても、これが今の僕に出来る精一杯なんだけどね?
さて、喧嘩の方はどうなるかな?
「ほぉら、2人共~?赤ちゃんっていうのは悪いことほど真似するのよ~?」
おっ!?現お母さんがのってきてくれた。
喧嘩していた2人は、現お母さんにそう言われると、驚いたような顔をして、此方を見る。
よーし。
「あー、うー!あー」
更に足をバタつかせてみた。
「ほらね~?2人が喧嘩してるのもシエロちゃんに真似されてるわよ?ほら~、2人はどうするのかな~?」
「んー、うー」
ルーメン現お姉さんは納得がいかないのか、僕とプロクス現お兄さん、それから現お母さんをキョロキョロと見比べている。
「うん。そうだよね。ぼくはお兄さんなんだから、シエロのおてほんにならなくちゃね?ごめんね?ルーメン」
流石はプロクス現お兄さん。
自分は悪くないのに先に謝って、ルーメン現お姉さんが折れやすくしてくれてる。
あれ?もしかして、僕よりもずっと大人じゃね?
「でもね?じぶんよりも小さなそんざいは、まもってあげなくちゃいけないんだよ?やさしくしてあげなさいって、お父さまがいつもおっしゃっているでしょ?」
更に、現お父さんからの教えを妹にご教授している…。
すると、今までブスッとした顔で、下を向いていたルーメン現お姉さんが、笑顔で顔をあげた。
「んっ、ルーわかった。シエロ、ごめんね?」
そして、弾けんばかりの笑顔をベッドに寝かされている僕に向けて、素直に謝ってくる。
あっ、はい、此方こそ大人気ない事をしてすいませんでした。
………、プロクス現お兄さん、僕を貴方の弟子にしてください。