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七十四話目 式典に出席した日



 僕達は今、入学式が執り行われる講堂に向けて、歩いているところ。


 並ぶ時に、女子はこっちだよ?何て周りから言われてキレるって一幕はあったけど、思い出しても腹が立つからカットだよ!カット!!


『ブフフフフ』


 クレイはもう5日間くらい飯抜きだな…。



 入場はA組からだと言う説明を先生から受けながら、大きな扉の前で一度止まった。


「新入生入場と言われたら、この扉が開きます。そうしたら、君達から順に進んで下さいね?」


 説明してくれたのは、他のクラスを誘導して来た、銀糸の如きサラッサラの髪の毛を持った、長身のエルフだった。


 エルフ。


 ファンタジーモノには必ずと言って良いほどの登場率を誇り、気高い森の一族として有名な種族。


 魔法や弓の腕に長け、気ぐらいが高い事でも有名な、妖精に近い一族。



 ふぉおーー!?


 この世界は何処まで僕を楽しませてくれると言うのか…!!


『シエロ、ちょっと落ち着いて…。あ~、駄目だわ…。聞こえてない』


『またシエロの悪い癖さ、でっちまったなや~…』



 ん?


 あのエルフ、何か時々目をしかめてるな…。


 もしかして目が悪い?


 あっ、あの顔はそうかも…。

 兄さんと同じ顔してるもんな…。


 エルフなのに、目が悪いって…(汗)



《新入生、入場》


「あっ、いよいよですね?それでは皆さん、扉が開きましたら、ゆっくり進んで下さい」



《ギィィー》


 エルフ先生が説明してくれている間にも、講堂と廊下を繋ぐ扉が開き始める。


 廊下が薄暗かった事もあって、講堂の中は光で溢れている様に見えた…。



 先生の視力の件についてはまた今度だな…。


 そんな事を考えつつ、僕は前の子達にならって進み始めた。



 既に着席している、他の列席者の方々からの暖かい拍手を頂きながら、講堂へ足を一歩踏み入れる。



 うわぁ…。



 僕達の進む道を示してくれるかの様に花が咲き、一歩進む度に光が零れ舞い上がる。


 天井近くには小さな花火がいくつも上がり、何処を見たら良いのか分からなくなる。


 上も下もと、欲張った子供達が目を回し始める頃、ようやく自分達の席に辿り着いた。



 かく言う僕も、目を回した子供の1人です。ハイ…。



――――――


 長い…。


 かれこれ2時間くらい経つけど、来賓の話しが終わらない…。


 後2人も居るのに、1人当たり3~40分くらい喋ってる…。

 この世界でも、偉い人の話しは長いと言うのか…。


 本当に偉い人は多くを語らない物なんだぞー!?



 あっ、やっと髭面の偉そうなおっさんの話しが終わった…。



 次も長いのかな。


 何て、辟易していた僕の目に飛び込んで来たのは、見知った鬼瓦だった…。


 はっ?


《続きまして、近衛騎士団元団長で在らせられます、アーサー・コルト様より、お言葉を賜ります》



 祖父さーーーーーん!?


 えっ?えっ?


 昨日も何も言ってなかったし、今日だって校門の所で別れた時も、「また後でな?」くらいしか聞いてないよ?



 えっ?ブリーズ達知ってた?


『完璧に思考を閉ざしてたから、分からなかったわ?』


『他の事なら読めったから、隠し事してる何て、分かんねかったべ…』



 それはつまり、妖精をも欺き通したって事か…。


 いつもは抜けてる様に見えるけど、流石は近衛騎士団の元団長って訳か…。


 どうやら僕は、祖父さんを見くびり過ぎていた様だな…。



《ご紹介に預かった、アーサー・コルトだ。子供達よ、入学おめでとう。皆が、この学園で学んで欲しい事は3つ。【仲間の大切さ】【仲間の尊さ】そして、【仲間を思いやれる心】じゃ。此処におる全員が戦場(いくさば)へ赴く訳ではないが、どの様な場へ行っても、この3つはとても大切な事じゃぞ?爺の戯言ではあるが、心の隅っこにでもこの3つの言葉を残しておいてくれればと思う。これからの、学園生活を多いに楽しんでおくれ?ワシからは以上じゃ》



 そう言い残した祖父さんは、上がってきた時と同様に、壇上から颯爽と降りていった。


 えっ?これだけ?


 いや、ダラダラ長い話しされるよりずっと分かりやすかったし、頭に残る様な事言ってたけどさ…?



 その後、優しそうな女性侯爵様からのお話しを聞いたけれど、話しが飛び飛びで、失礼だけど頭には残らなかった。



 周りの生徒達も、祖父さんの話しは真剣な目をして聞いていたし…。


 僕、初めて祖父さんを心から尊敬したかも…。





――――――


《是にて、入学式を終わります。御列席のお客様は―――》



 結局、式は4時間くらいで終わった。


 時計がないから、僕の体内時計頼りなのが心細いところだけど、だいたい4時間くらいだったと思う。


 式の中で一番長かったのが来賓の話しだったとか…orz


 あれ?そう言えば式に有りがちな校長か理事長からのお話しが無かった様な…?



 途中強烈な眠気に襲われた時にでも終わっちゃったかな?



「はい、では皆さんをこれから寮までご案内します。はぐれない様に注意して、着いて来て下さいね~?」


 エルフ先生の号令によって、また大移動が始まった。


 大移動何て言っても、今年は入学者数が少し少なくて、1クラス大体30人くらいだから、全4クラスでも120人くらいしか居ないんだけどね?



『シエロの新しいお家、どんなところなのかしらね?』


『あんまり、ボロっちくないといいけんじょ』


 クレイ~、行く前からげんなりする様な事言わないでよ?


 僕も確かにチラッと思ったけどさ…。



 長い廊下を抜け、広い中庭に出る。


 確か、ここからもう1つ建物を抜けると校庭に出るんだったよな?


 えっ?これ中庭?って思うくらいの広さの空間に出た僕達は、小さな森の中を抜けて広場に出た。


 どうやら、広場の中央にある小さな小屋の中に誘導されているみたいなんだけど…。


 えぇっ!?入っていく量可笑しくない?


 あんな小さな小屋にどんどん子供達が吸い込まれて行ってるけど、どう考えても、大人が2~3人くらいしか入れない様な小屋にどんだけ入っていくの?


 講堂への入場はA組が最初だったけど、出るのはD組からだったから、僕らがあの小屋に入るのは最後になる。


 だから、もう100人くらいの子供達があの小屋に入っていってる事になる訳だけど、小屋は広場の中央に建っているんだから、あの小屋が入り口ってだけで、別の建物へ繋がってる訳でもないし…。


 うわわ、僕の番が近づいてきた!?


『シエロ、落ち着いて頂戴?ちゃんと繋がってるわよ?貴方なら見えるでしょ?』


 えっ?ブリーズ、繋がってるし、見えるって何が…。


 ん?


 あっ、あれの事?


 小屋の周りには、白くてモワモワしたものが見える。


 もしかしてあれって、空間魔法?



『もしかしねっても、空間魔法だなぃ?』



 じゃあ、あの小屋から何処か別の場所に通じてるんだね?


 良かった…子供がみちみちに詰め込まれてるのかと思った。


 児童虐待で通報するところだったよ(笑)



 誤解が解けたところで、堂々と小屋の中に入る。


『シエロが勝手に勘違いしただけじゃない』



 聞こえませんね~。



 さ~て、中はどうなっているのかな~?



 おぉ!!




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