七十話目 聖ホルド学園に入学する日
11月22日の更新です。
本日も宜しくお願い致します。
私事ですが、今朝の地震驚きましたね?
私は布団から飛び起きました(笑)
遂にこの日がやって来た。
今日は、僕が聖ホルド学園に入学する日。
うわぁ~、ドキドキするよぉ~。
前世も合わせると、32にもなるオッサンが、今更学校に通うだなんて思ってなかったよぉ~。
ベッドの中でゴロゴロ転がり続け、終いには落ちた。
――――――
麗らかな春の陽気に誘われると、何処かにフラッと遊びに行きたくなる。
『こらっ、逃げ出そうとするのは止めなさい!!』
『友達いっぺぇ出来っから、ちっと頑張って行ってきっせぇ~?』
分かってるよぉ~。
根がネガティブなもんだから、悪い方、悪い方って考えて深みにハマっちゃってるんだよね…。
はぁ、ハレの日に、こんなドンヨリした顔してたら駄目だよね?
うしっ!
一発気合いを入れ直す。
ドリル頭の高ビーお嬢様も、頭悪そうなイジメしか出来ない3人組も、何かと因縁をつけてくる頭おかしい奴もいない!!
楽しい学園生活が待ってるんだ!
祖父さん達と別れた僕は、1人で学園の立派な石の門を潜る。
門の上の方に居る、石象は夜中に動いたりとかするんだろうか?
何て馬鹿な事を考えながら学園の中をズンズン進んで行く。
聖ホルド学園は、一言で言えば街だった…。
全生徒2000人という規模もさることながら、教室棟、特別教室棟、食堂棟等々、それぞれが独立した建物になっている。
全ての校舎はほぼ円形になる様に建てられていて、中心部分に広大な運動場が設けられている。
のを、今僕は目の前に立っている案内図を見ながら確認していた。
よし、今何処辺に居るのかが分からない事が分かった!!
はぁ、とりあえず其処此処に立てられている看板に沿って行ってみるか…。
――――――
右手の方には、背中から立派な翼が生えた鳥人族の男の子。
左手側には、髪の毛が蛇な女の子。
他にも、下半身が馬の子供等、そこかしこに多種多様な種族の子供がうようよいる。
おぉ~、ファンタジー(笑)
「今年の新入生は此方へ、魔力検査を受けてもらう!!」
おっ?
頭がライオン体が人間のお姉さんが、何かの建物の入り口の前で叫んでる。
あっ、こっちに行けばいいのか。
「すいません。新入生は此方で宜しいですか?」
「ん?あぁ、そうだよ?新入生は、あそこに見える教室に行きなさい。魔力検査を受けるの。そこにいらっしゃる先生の指示に従えば大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
頭がライオンのお姉さんにお礼を言って、お姉さんの指差す先の、扉が開いたままになっている教室に入る。
教室の中には、他にも検査の順番待ちをしている生徒達が居た。
とりあえず、列の最後尾に並ぶ。
実は、入学時にも魔力検査をするって知っていたから、教会で測ってもらった時からステータスカードを見てないんだよね♪
実は、入学時にも魔力検査をするって知っていたから、教会で測ってもらった時からステータスカードを見てないんだよね♪
あれから約1年半経った訳だけど、どれだけ成長出来たんだろう…。
うぅ、後で父さん達とも会う約束をしてるから、悪い結果だったりしたらどうしよう。
『ほら、悪い方にばっかり考えない!!』
は~い、ブリーズ母さん…。
その後も、ブリーズから何度か叱咤激励を貰いながら順番を待っていると、不意に後ろから話し掛けられた。
「すいません。魔力検査をする教室は此方で合ってますか?
「えっ?あぁ、うん。そうですよ?」
列の進み具合を確認してから、後ろを振り返る。
声を掛けてきたのは、僕より頭1つ分背が高い、猫族の男の子だった。
癖の強そうな茶色の髪の毛はあっちこっち飛び跳ねていて、タンポポみたいな黄色の瞳は、好奇心と緊張感に揺れていた。
キジトラっぽい…。
僕が後ろの彼を見つめていると、彼が息を飲んだ事に気が付いた。
?
何かあったかな?
列の前の方を振り返って見てみるけど、特に変わった様子はなさそうだ。
???
「どうかしました?」
「えっ?あっ、いや、その…。うん、何でもないよ?」
そこまで慌てふためかれて、何もないって事はないだろう…。
訝しみながら、そいつを見つめてみる。
「うぅ、男の子かと思って話し掛けたのに、まさかこんなに可愛い女の子だったなんて…。どうしよう…」
「あぁっ?」
言うに事欠いて【女の子】だぁ?
『ブフォッ』
『シエロ、どうどう。落ち着いて?ほらっ、シエロ他の男の子に比べると、少し髪の毛長いからそう見えただけよ。ね?クレイも笑い転げてないで、何とか言いなさいよ!!』
クレイは夕食(寝る前にいつも泥団子あげてる)抜きな。
ブリーズ、ありがとう。
新しい学生生活一発目の生徒同士の会話がこれだったんで、ちょっとイラッとしただけだから。
爆発とかはしないから安心して?
『う、うん』
「ごっ、ごめん。僕、何か変な事言いましたか?」
意識を猫族の方に戻すと、真っ青な顔をして、小刻みに震えていた。
おっと、流石にガン飛ばしてたら誰でも怯えるか(笑)
「僕は、男ですよ。男子生徒用の制服、着てるんだから分かるでしょう?」
なるべく優しい口調で注意した後、改めて自分の服装をチェックする。
聖ホルド学園の制服は夏用、冬用の2着あり、今は勿論冬用。
冬用の制服は、薄目のグレー色のブレザーに、襟と袖口の所に濃い緑色の糸で、縁取りがされている。
ズボンは、緑色のタータンチェック柄。
ブレザーの左胸の部分に校章が入っていて、結構現代日本でもありそうなデザインとなっている。
女子は、ブレザーの縁取りが濃いめの青で、スカートもそれに併せて青色のタータンチェック柄になっている。
男女の制服は色すら違うし、男子は緑色のネクタイ、女子は青色のリボンを付けているんだから、振り返った時点で気づかない方が可笑しいのだ。
「えっ、あっ、本当だ…。ごめんなさい。あんまり綺麗な髪の毛と瞳の色だったから、女の子と間違えちゃったんだ…」
ほう。
髪の毛と瞳の色に目を付けるとはお目が高い。
この2つのせいで、女の子に間違えるっていうのはちょっと意味が分からないけど、自慢の髪の毛と瞳の色を褒められたんだから、許してやるか。
髪の毛は母さんとお揃いだし、瞳の色はお祖母さんとお揃いだからな♪
えっ?父さんと祖父さん?
細かい事は良いんだよ。
「髪の毛を褒めてくれたから、許す。僕はシエロ・コルト。男、ヒューマン族」
「あっ、許してくれて、ありがとう。僕、ブロンデ、猫族の男です」
ブロンデは、本当は別の学校へ入るはずだったのに、教会ので魔力検査を受けた時に、魔力量、質ともに優秀だって事が分かった為、急遽この学園への入学が決まったのだそうだ。
「周りに知ってる人がいなくて心細かったんだぁ」
入学式の為に着いてきてくれていた両親とも校門前で別れてしまったから、終始ビクビクしていたらしい。
分かる分かる。
僕もビクビクしてたから(笑)
そんな事を2人で話しあっていたら、あっという間に僕の番になっていた。
「シエロ・コルトです。お願い致します」
自分のステータスカードを担当の先生に渡し、自分の名前を名乗る。
神経質そうな顔をした、目つきの悪い…、――いや、ただ寝不足なだけかも、凄い隈だ――な先生が、手持ちの書類を捲り、僕の名前を探している。
あっ、あったみたい。
「シエロ・コルト。あぁ、プロクスとルーメンの弟か…。よし、その水晶に手をかざしなさい…」
先生が指差す先に、教会で見たものと同じ様な水晶が置いてあった。
おぉ~、この水晶久し振りに見たなぁ。
僕は、少しワクワクしながら、水晶玉に手を乗せた。