六十七話目 今代の魔王と…の日
今代の魔王の正体が、元妖精だった…。
衝撃の事実を知り、ブリーズや、クレイ達の顔が脳裏に浮かぶ。
もしかしたら、彼女たちが魔王になってしまう可能性だってあるって事だよね…?
「そう。あの子、は空間能力を持っていな、かったから、其処に影の残骸がある事に気が付かなかった…。止めたけど、間に、合わなかった…。私のせい…」
魔力の残滓は、僕みたいに【空間】属性を持っているものなら視る事が出来るのだそうだ。
でも、今代の魔王には【闇】と【風】の属性を持ってはいても、【空間】の属性は持っていなかった。
だから其処に、魔力の残滓が残っていた事に気が付かなかった訳だけど、そんなの誰に止められるものでもないじゃないか…。
それが例え、ブロナーだったとしても…。
「ん。ありがとう…。でも残骸を把握出、来たのにしなかった私のミス。これ以上、接触者は出さない」
「そうは言ったってさぁ…?」
「ん。大丈夫」
あっ、駄目だ。これは聞く耳持たないパターンだ。
仕方ない、別の事でも聞いてみようか…。
「さっきシルビアーナはさ?今代の魔王は妖精の姿を見れないから大丈夫、みたいな事言ってたけど…。元々妖精なんだったら普通に見えるんじゃないの?」
「あぁ、どうやら魔性の者になった時点で性質が変質した様なのだ…。かつての仲間が隣に居ても、奴には見えないだろうな」
「そう、なんだ…」
ブリーズ達の安全が分かってホッとする反面、魔王に同情もしてしまう。
だってさ?
いくら今は魔王だって言ってもだよ?
なりたくてなった訳でもないのに、仲間にすら会えなくなるなんて、悲しすぎるじゃないか…。
「そんな感情すら無くしている事だろう。シエロが気に病む事ではない…」
「うん…、ごめん。僕が何を思ったからって、魔王が元に戻る訳でもないのにね…?」
「ん。そう思って、くれるだけで充分。あの、子の事は私が何とかするから」
ブロナーは、真っ直ぐ僕を見つめながら、力強く頷いた。
ブロナーからは、強い意志の力を感じる。
「そっか、くれぐれも無理はしないでね?」
「大丈夫。私の手、足の代わりに動いてく、れてる子達もいるから、1人ではない…」
「ブロナーがこの家に居ることも分かった今、1人で無理などさせはせんよ」
そっか、なら良いんだけどさ…。
「シルビアーナ様、何やら込み入ったお話しをされているご様子、私はこの辺りで失礼させて頂きたく存じます」
「む?そうか?何か、用があったのであろう?我等を気にする事はない。要件を話していきなさい」
あっ、そう言えばクラレンス神父が居たんだったよな…。
最初は凄いビックリしたけど、その後の話しが強烈過ぎて、すっかり忘れてた(笑)
「いえ、本日はシルビアーナ様にご挨拶を、と思っただけでしたので…。昼間面白い子供が来た、と言うご報告がてら参った次第で御座います。よもや、此方で本人に会うとは思いもよりませんでしたが…」
へぇ~、面白い子供ねぇ…。
僕以外にも教会に出入りした子供が居たのか…。
ん?何で皆変な顔してるの?
「貴方様の事で御座いますよ?シエロ様…。本日私の教会で洗礼の儀を行ったのは貴方様だけで御座います」
あっ、僕の事だったの?
1人驚く僕を見ながら、周りの大人達は苦笑をもらしている。
うぅ、皆の生暖かい目が酷い…。
「今時、クアルタ持ちの子供は珍しいですからね?しかも、女神様のご加護を、それも御姉妹全員のもので御座いましたから、お話しを伺いに参った次第で御座います」
「それぞ、れが加護を与えた時に、少し、ずつ入っ、ちゃったからしょうがない…。でも、元々素質はあった。じゃないと、属性は根付、かない」
ブロナーによると、女神はそれぞれに司る属性を3~4つ持っていて、僕に加護を与えた際に、それぞれが司る属性の魔力の一部も取り込まれたんだそうだ。
ただ、取り込んだだけでは能力は開花せず、それぞれの魔法の素質がなければ、人より魔力が多い程度に落ち着くんだとか。
うちのお母さんは、スカーレットの加護を受けて、かつ素質もあった為、【水】と【樹】の魔法属性能力が開花し、ダブル持ちとして宮廷魔法使いとして頑張っている、と言う事らしい。
あれ?お母さんはダブル持ちでもあるけど、持ってる魔力量も多いような?
「リーベちゃんの場合は努力型だったから、ダブルの力を使いこなす為に、魔力量の底上げを徹底的にしていたのよ」
じゃあ、うちの兄姉達の魔力量が多いのは?
「君の兄上や姉上の場合は、リーベから魔力が分け与えられたからだな。一時的に魔力量が落ちていたから、間違いはないだろう」
は~、そうなんだ。
何か今日は疑問がポンポン解決してったから楽しかったなぁ~。
「良かっ、た、ね?」
「では、要件をお伝えする事も叶いましたし、そろそろ本当に失礼致します。シルビアーナ様、スカーレット様、ブロナー様、本日は久方ぶりにお3人様がお揃いになられた姿を見る事が出来、嬉しゅう御座いました」
クラレンス神父はそう言い残すと、ユラユラと象が揺らぎ、あっと言う間に姿を消してしまった。
まさかあのオッサンが光の精霊だった何て、正体を見せられた今でも信じられん…。
「まぁそう言ってやるな、奴は真面目なだけだ。何処から見ても、完璧な人族に見えるではないか」
いや、まぁね?
あっ、何でうちの祖父さんが嫌いなのか聞いとけば良かった!!
「シエロ君のお祖父様?あぁ、アーサー君ね?彼の顔が怖いからよ?」
はい?
「昔リュミエール…、クラレンスはシエ、ロ君のお祖父さんと一緒に、冒険者をしてた…。その時は、まだ可愛い顔してたのに、近衛騎士団の団長になってから、厳つくゴツくなった」
「えっ?うちの祖父さんゴツくなったから、嫌われたの?」
だとしたら、不憫過ぎる。
いくら祖父さんでも、友達から嫌われた理由がゴツくなったからじゃ悲しすぎる!!
「違、う。厳つくゴツくなっ、たからって訳じゃない。そうなったから、大嫌いな炎の精霊にそっく、りになったのが原因…」
「リュミエールとイフリートの仲の悪さは異常だからな…」
やっぱり祖父さん関係なかったー!?
せめて、祖父さんが熱すぎて苦手だ。
とか、祖父さん本人に、何か問題があるならしょうがないけど、全くの他人のせいかよ~。
「頭ではわ、かっているのにってやつ…。リュミエールも心の底か、らアーサー君を嫌ってる訳、じゃない…」
う~ん。
そう言われてみれば、祖父さんの方を見ない様にしてはいたけど、祖父さんと話してる事自体が嫌だって感じはしなかった…、のかな?
「だと…、思う…。さぁ、他に聞き、たい事は?」
聞きたい事、なぁ…。
「色々聞きたい事があったはずなんだけど…。パッと思いつけないなぁ…」
「そうか。なら今日はこのくらいにして、君も休むと良い。」
「色々詰め込み過ぎたから、シエロ君も疲れたでしょう?」
「ん。記憶も元、に戻したから、相当負担に、なって、るはず…。早く休んだ方が良い…」
素直に思いつかない事を伝えると、3人共に早く休む様にと言われ、両手を掲げたブロナーが僕の目の前に立った。
えっ?
何?
僕何され…。
「また、来ると良い。君が望めば、この場に夢を繋げよう」
「美味しいお茶とお菓子を用意して待ってるわ♪」
「じゃあ、ね…。シエロ君…。また…ね?」
突然繋がった女神の庭への入り口は、繋がった時と同様に、突然閉じられた。
3人の女神達の笑顔を最後に、僕の目の前は真っ白に染まったのだった…。




