六話目 プロクスお兄さんと和解した日
パチッと音がしそうなくらいスッキリと目が覚めた。
さっき、お昼寝から寝覚めたはずの僕は、何故かまたベビーベッドの中に寝かされていた。
あれ?僕、何で寝ちゃってたんだっけ?
「シエロ、起きた?」
そんな事を考えていたら、不意に声を掛けられた。
ん~?初めて聞く声だなぁ。
子供特有の高くて、でも、キーキー甲高い訳でもなく、どこか優しそうな声。
誰だろ…?
声のした方へ顔を向けると、ベビーベッドの格子越しに覗き込んでいたのは現お兄さんでした。
おっ、おぅ…、そうだった…。
僕は現お兄さんの威圧に耐えられなくて大泣きしたんだった…。
あ~、なるほど、泣き疲れて寝ちゃってたのか。
さっきのことがあったから、一瞬怯んだけれど、
「シエロ、ごめんなさい。ぼく、きみをこわがらせてしまったよね?」
何て、さっきまでの威圧感もまるでなく、現お母さん似の優し気な眼差しで、そんな悲しそうな声で謝られたら許すしかないよね?
僕、一応中身は大人だし。
言葉と共におずおずと出された手を掴んで力の限り振ってみた。
まぁ、赤ん坊の全力何てお察しものだけどね?
「シエロ?ゆるしてくれるの?ありがとう」
そう言いながら笑った現お兄さんはキラキラ輝いていて、とっても可愛らしかった。
うん、母性本能をくすぐるってやつだな。
僕、男だけど。
その後、現お兄さんは色々僕に話してくれた。
まぁ、僕はまだ喋れないから、現お兄さんの話を聞くだけなんだけどね。
「シエロ?君にはぼくだけじゃなくて、お姉さんもいるんだよ?」
へぇー、お姉さんか~。
現お姉さんはどんな人なんだろう?
「その子はね?ぼくより1つ下の4さいなんだよ?」
へぇ、じゃあ、現お兄さんは5歳か…。
やったね!当たったぜー(棒)
「ぼくは、プロクス・コルトって言うんだ。それでね?君の名前はシエロ・コルトって言うんだよ?」
うん?コルトは名字って事かな?
名字があるって事は、やっぱり貴族様?
それともこの国は皆名字を持ってるとか?
プロクス現お兄さん、そこんところ詳しく!!
「後はね~?」
まぁ、僕の話し何て通じないよね。
まだ、あー、とかうーとか言ってるだけだし…。
よし、喋る練習しよ。
いきなり、赤ん坊が流暢に喋り出したのを聞いて驚愕するが良い!!
それはまぁ、この際いいとして、さっきの威圧感半端ない視線は何だったの?
この方、急にフレンドリーに喋り始めたんですけど。
えっ?あー、なるほどね?よくよく話しを聞いていると、現お兄さんは酷い近視みたいだ。
目が悪いから、睨んでるみたいになってたのか…。
あれ?じゃあ、もしかしてこの国って眼鏡ないの?
「でね?ぼくたち、一昨日の朝までおばあさまのお家にいたんだよ?」
あっ、そうだったんだ。
だから、今まで会わなかったんだね?
「お母さまがシエロをあんしんしてうめるようにってお父さまにおねがいして、おばあさまのお家につれていってもらってたんだ」
そうだったのか…、ごめんね?ありがとう。
しかし、優しい子達だなぁ~。
僕がこの位の歳の時ってこんな事考えられてたかな…。
「ルーもシエロに会いたがってたけど、ばしゃに長いじかんのったからつかれちゃったんだって、今はへやでねてるんだ」
ん?ルー?もしかして現お姉さんの名前かな?
しかし、それだったらプロクス現お兄さんも疲れてるだろうに…。
僕と喋ってて大丈夫なのかな?
「ぼく、早くシエロに会いたかったんだ。本当はもっと早く帰ってきたかったけど、それじゃあおばあさまのお家にいったいみがなくなってしまうでしょ?だからシエロがうまれてからひと月はがまんしてたんだよ?」
うぅ、何この子。
天使すぎるだろう。
ごめんよぉ、顔が怖いなんて言って大泣きして。
お詫びにプロクス現お兄さんの手を握っておこう。
「あはっ、またシエロに手をにぎってもらっちゃった。フニフニだね?かわいいな~」
いやいや、プロクス現お兄さんの方が可愛いッスよ。
こうして、僕達は和解する事が出来たのだった。