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六十四話目 3人の女神様に会った日



 実は女神様は、双子ではなく三つ子だった!?


 僕達が知っているのは、長女と三女だった事が判明しました。


 しかも、記憶を司るはずの中間子は行方知れずと来たもんだ。


 さぁ、どうなる僕の記憶!



 果たして無事に返ってくるのか!?




「………。落ち着いたかい?」


「あっ、はい。すいません、少し取り乱しました…。しかし、女神様の一柱が行方不明と言うのは、どういう事なのでしょうか?」



 シルビアーナ様は、一瞬悲しそうな顔をしたが、直ぐに元に戻って話しを続けた。


「君の世界の冒険活劇等にも出て来るとは思うが、【魔王】と言う存在がいるのは知っているか?」


「えっ?あっ、はい。魔王の存在は知っています。」


 小さい頃、よくプロクスお兄さんが読んでくれた本何か、勇者と魔王ものばっかりだったし、この世界にも魔王がいるのかと感心してしまった程だ。



「そうか、ならば良い。実はその魔王が発生したと言う事が、妹が行方不明になった原因なのだよ…」



 そう言って、深い溜め息を吐くシルビアーナ様。


 えっ!?まさか女神様が浚われたとかですか?

 いや、もしかしたら魔王が女神様とか…?


「そんな訳がなかろう…。君は突拍子も無い事を考えつくのだな…」


 あっ、違ったか…。


 そりゃあそうだよな。

 反省反省。



「すいません。では何故?」



「偶々ね?今代の魔王の持ち属性が【闇】と【風】だったのよ…」


 スカーレット様が、僕のマグカップにお代わりを注ぎながら答えてくださった。

 木のカップの中から甘い湯気が立ち上る。


「【闇】と【風】だと何かあるんですか?」


 【風】はブリーズ達の属性だから、もしもブリーズ達風の妖精が酷い目にあっていたら嫌だな…。


「今代の魔王に妖精を視る力は無い様だから、妖精が酷い目にあうと言う事は無いだろう」


「ブロナー姉さんは、【闇】と【風】、【記憶】と【時】を司っている女神なの…。魔王の属性が、二つとも自分の司る属性だったって変に気にしちゃってね…」



 そして、ブロナー様は自分に関する記憶と記録を全て消し、忽然と姿を消してしまったらしい…。


 あれ?


「さっき、今代【の】って仰いましたけど、魔王ってそんなに沢山いるんですか?」


「えぇ、当代の魔王が滅ぼされても、いつの間にか次が現れるのよね~。確かその前の魔王は【光】属性持ちの兎だったかしら?」



 兎ーーー!!

 本当に居たよ、兎の魔王…。



「うむ、奴は兎ではあったが、最悪、最凶の魔王であった…」


 兎、滅茶苦茶強かったーーー!?


 って…、あれ?魔王兎は【光】の属性持ちだったんですか?


「そうだ。彼は強力な【光】の属性持ちだったのだ。本来ならば、法皇の地位にまで登りつめられるような男だったのだよ…」


「【魔王】になる為には、色々な要因が必要なの。力の強い魔族が変化する場合も多いけど、本当に強力な魔王が誕生するには、【絶望】と【悪の波動】が必要不可欠なのよ」



 兎は法皇で、魔王になるには、【絶望】と【悪の波動】が必要不可欠?


 えっ?えっ!?


「落ち着け、木戸宙太…。その辺のところもキチンと説明してやりたいところなのだが、如何せんその話しをするにも、君の前世の記憶にも関係してくる故、どこから話すべきか…」


「ブロナー姉さんが此処にいれば話しは別だったんだけど、どこに居るのかも分からないのよねぇ~」



 あー!もう!!

 何で中間子居ないんだよ!!!


 僕の記憶は戻らないわ、兎の魔王は出て来るわ、結局話が堂々巡りするわ、どないせーっちゅうんじゃい!?



 ん?


 余りの混乱ぶりに天を仰いだその時、首を上に上げる途中で、人影が見えた気がした。


 数瞬の逡巡ののち、改めて人影を見つけた辺りを見つめてみる。


 ………。

 あっ、何か居る。


「何かとは何だ?君が見ている場所にあるのは壁だけだぞ?」


「壁に何かあるの?別に崩れたりもしていないみたいだけど…?」



 どうやら、女神様達には見えていないようだけど、身体の中にある揺らぎの様なものが、僕の目にはハッキリと見えていた。



 そこに居る、人影の事も…。


 僕は彼女を知っている。


 度々、僕の夢の中に出て来ては謝り続けていた女性。


 ガーネット色の瞳の色だけが色を持つ、あの夢の世界に出て来ていた人…。


 フードを目深に被り、口元と、時折見える瞳の他は何も見えなかったけれど、彼女がそうだと何故か分かった…。



 目を離すことも出来ず、そのまま見つめ続ける事数分。


 いきなり、揺らぎの幅が大きくなり、その中から、人が姿を現した。



「見つかっ、ちゃった…。シエロ、君は、やっぱり鋭、い…」


 揺らぎの中から姿を現した人物は、黒髪にも見える濃青色の髪の毛を、前髪無しのミディアムボブにした女性だった。


 他の女神様と同じ顔、同じガーネット色の瞳。


 夢の中と同様に、黒くて長いフード付きのローブを着ていて…。



「ブロナー!」


「姉さん!?」


「は、ろー」



 女神様2人がもう1人の女神様の側に駆け寄る。


 スカーレット様は若干涙目になっていた。


 おいおい、どんだけ行方不明だったんだよ…。



「君が生ま、れてから直ぐ、辺り?」



 あっ、一応常識の範囲内だった…。


 5年ならまぁ、ねぇ?


 100年とか言われたらどうしようかと思った…。



「5年でも、100年でも、行方不明だったのに変わりあらん!!今まで何処にいたのだ!?」


「何処に、も行かない…。ずっと此処に居た…。」


「えっ!?此処って…。この家の事?流石はブロナー姉さん…。ちっとも分からなかった…」



 僕でも分かったのに、女神様が分からないとは…?


 話しぶりを聞くに、ずっとこの神殿の中に居たみたいだし。


「わたしは、【時空】を司る女神…。空間や、時間の認識をいじれる…。だから2人にも気づかれなかった。けど、シエロ君は、【空間】属性持ちだから…」


「【空間】属性を持っているから、ブロナー様がずらしたはずの認識のズレを僕が感知出来た…と?」


「そう」


 空間属性にチート説が出て来たな…。


 この間までちっとも使い方が分からなかったけど、これ使えば、【隠密(ハイド)】の魔法とかも丸見えになっちゃったりして…?


「君の場合は、教会に張って、ある結界ま、で見通せるから、そん、なの容易い」



 へぇ~。

 ん?教会に張ってある結界?


 あれ?僕そんなの見たっけ?


「教会の入、り口のところにかかって、る、カーテン。あれが結界…」


 あっ!?

 あれが結界?


 何であんな変な所にカーテン掛けてあるのかと思ってたけど、あれが結界だったとは…(笑)


「そんな事より、シエロ君の、記、憶…。欲しい?」


 コテンッと首を傾げながら、ブロナー様が僕に聞いてきた。


「そんな事って…。まぁ良い。後で問い詰めるとしよう…。木戸宙太は、前世の記憶を戻して欲しいそうだ」


「シルビ、アーナ姉さん…。彼は、シエロ・コルト君。あんまり前、の名前で呼ばない方、が良い…」



「あっ、あぁ、そうだな…。すまないシエロ。ブロナー、君にしか出来ない事だが、シエロ・コルトの前の記憶を彼に返してやって欲しい」



 僕はどっちの名前で呼んでもらっても気にしないんだけど…。

 何かブロナー様が気にしてるし、取りあえず謝罪を受け取った。


 どっちも大切な名前には違いないしね?


「シエロ、君は、前世で嫌な目にあって、いたとして、も、記憶、を取り戻したいのね?」



 さっきシルビアーナ様にも言ったけど、無くして良い記憶なんて無いと思うから、出来れば返して欲しい。


 ――だから…。


「はい、お願いします」



 僕は、ブロナー様に頭を下げた。




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