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六十三話目 女神様に会った日

11月16日の更新です。


前回から、シエロの前世の記憶に関わる方々が登場しています。


本日も宜しくお願い致します。



 神様のいる空間には、極彩色に彩られた花畑も、風光明媚な天国感を感じさせる様な場所もありませんでした。



「此処は天国ではないからな」


「モノローグに突っ込まないで下さい」



 太くて立派な柱が並ぶ真っ白な道で出会ったシルビアーナ様は、僕と会うのは二度目だと言う。


 うぅ、こんなインパクトしかない人の事を忘れるなんて…。


「それは、そうだろうな。君の記憶を封じたのは我が妹ブロナーだ。彼女は記憶と時を司っているのだから、それは当然の結果だと言えよう」



 だから、僕の思考を読まないで下さ…。


 あれ?もしかして、僕の考えている事分かってます?


「ん?案外と鈍いな君は。さっきからそう言っているではないか?まぁ良い、案内しよう。付いて来ると良い」



 鈍い…orz



「あっ、待って下さいよ!?」


 僕が凹んでいる間に、サクサク進んでいくシルビアーナ様。


 付いて来いって言ったって、いくら進んでもあそこに辿り着かな…。


 あれ?


 さっきまではちっとも進んでる感じがしなかったのに、シルビアーナ様に付いて行こうと一歩、足を踏み出した瞬間には神殿の前に着いていた。



「えっ?」


「さぁ、着いたぞ?此処が我が家だ。スカーレット、客人を連れてきたぞ!?」


「は~い」


 神殿の奥から、シルビアーナ様に良く似た女性の声が聞こえた。


 シルビアーナ様が、月に居るっていう女神様なら、スカーレット様も…。


「や~ん、やっと会えたわね☆宙たん、久しぶり~♪」



 何で後ろから!?


 神殿の中から声がしたんだから、入り口の辺りから出て来るものだと思っていたのに、声の主は背後から僕に抱きついてきた。


 あっ、当たる!!


 柔らかいものが背中に当たってるから!!!


「スカーレット、悪ふざけも大概にしなさい。」


「はぁ~い♪それにしても久しぶりよね~?あっ、今は忘れちゃってるんだったわね?」


 やっと背中から離れてくれたので、慌てて振り返る。


 僕の前には、ピンク色にも見える金髪を足首まで伸ばし、ガーネットにも似た朱い色の瞳をキラキラと輝かせた、シルビアーナ様と同じ顔の女性が立っていた。


 シルビアーナ様とは違い、柔らかな表情をしていて、シフォンワンピースっぽいシルエットの出ない様な、ふんわりした服を着ている。


 ピンク色にも見える金髪に良く映える、若草色のワンピースは、彼女にとても似合っていた。


 いや、シルビアーナ様の軍服も凄い似合ってるんだけどね?


 凄く屈伏しそうになるほど…。



「アハハ♪褒めてくれてありがと~う☆今はシエロ君って言うのよね?私はスカーレット、シルビアーナの妹よ?宜しくね~?」




「あっ、初めましてスカーレット様。(わたくし)、シエロ・コルトと申します」


「やだ、堅苦し~い!さっ、立ち話も何だし、家の中に入りましょ?」


 あっ、ちょっと。


 一々スキンシップの過剰なスカーレット様に腕を取られ、そのまま神殿の中へと引きずり込まれる。


 神殿の中は、外見の荘厳さとは違い、意外にも生活感が漂っていた。



 女神様が住まう神殿の入り口に置いてある玄関マットが、可愛いクマちゃんなのは如何なものだろうか…。


 あっ、ランプシェードもクマだ…。


「私の趣味なのだが…。なっ、何か可笑しいか…?」



「えっ!?」


 意外とファンシーなご趣味をお持ちなんですね…。


「うるさいっ、さっさと中に入りたまえ!!」



――――――


「さて、シエロ・コルト。旧姓名:木戸宙太よ。先程までの会話から薄々気づいていると思うが、君の記憶は我々が預かっている」



 すいません、全く気が付いてませんでした。


「僕の記憶…。と言いますと…?」


 ヒット数が多すぎて、どれが預かって頂いている記憶なのか分からない?


「そうか…、気が付いてはいなかったのか…。まぁ良い、預かっている記憶というのは我々に関する記憶だ」



 勘が悪すぎた僕に、シルビアーナ様、スカーレット様が苦笑いしながら話し始めた…。


「君の死因や、その他それに関わる諸々も含まれている」


「多分大体全部だと思うんだけど、預かっている記憶は貴方にとって不利益になるものが多いの…。シエロ君、貴方はどうしたい?」



 どうしたい?って事は、返して欲しいか否か、って事だよね?


 あっ、言い忘れてたけど、今僕は、この家のリビング兼台所みたいな場所に通されて、女神様2人とテーブルを囲んでいる。


 女神様から、ホットチョコレートを貰った何て、誰も信じないよなぁ…。



 おっと、つい現実逃避してしまった。


 記憶を戻して欲しいか、欲しくないか…。


 まぁ、考える事もないよな…。

 答えは最初から決まってるんだし。



 僕は、女神様達に向き直りながら、答えた。



「例え、その記憶が不利益なものだろうと、僕はちゃんと思い出したいです」


 生きてる以上、思い出したくもない記憶や人っていうのは出て来るものだけど、【忘れたままで良い記憶】何て無いと思うから…。


 そりゃあ、辛かった思い出をいつまでも忘れないでいよう。

 何てマゾヒストでもないけど、辛かった思い出すら忘れちゃったら、同じ事を繰り返しそうで怖いじゃん?


 どうせなら、辛い事、悲しい事、苦しい事何かは回避したいしね?


「うむ、君の意見は分かった…。預かっている記憶を返そう」


「ありがとうございます」


 あ~、良かった。

 色々と大層な御託を並べては見たものの、ぶっちゃけ記憶が虫食いみたいに抜けてるのって、喉に魚の骨が刺さってる時みたいな嫌~な感じだったんだよね?


 酷い違和感がずっと続いている感じっていうかさ…。



 しかし、シルビアーナ様から続いて飛び出した言葉に、僕は驚愕する事となった。


「と、言いたいところだが、今すぐにと言うのは無理なんだ…」


 えっ?何か特別な理由でもあるんですか?


 例えば、知らなくても良い様な世界の秘密を知ってしまったとか…?


「そんな理由ではないから、安心するといい…」


「実はね?貴方の記憶を預かってる、ブロナー…。私のお姉ちゃんなんだけどね?今行方不明になっちゃってるの」



 はい?


 女神様が行方知れずって有り得るの?




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