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五十八話目 2の月、1日



 今日は2月1日。

 僕、シエロ・コルトの誕生日です。



 本当は1月31日が誕生日なんだけど…。


 僕は、この世界の閏年に当たる年に生まれたらしい。


 1ヶ月が30日で、1年は12ヶ月あって、閏年は3年に一度の周期でくるんだってさ。


 で、今年は閏年じゅないから、1月が30日しかないと言う事で、誕生日が今日になったと言う訳。


 あっ、そうそう、1月2月と数えるんじゃなくて、1の月2の月って数えるんだったね。


 とまぁ、何で今さらこんな説明をしているのかと言うと…。


 さっきまでのドレスからタキシード姿に着替えた僕は、この屋敷のエントランスに設けられたパーティー会場の、一番目立つ所に両親と3人仲良く座らされている。


 そして、一番目立つ、両親と一緒、という事は、ひっきりなしにお客さん達から話しかけられている訳で…。



「ご無沙汰しておりました、コルト辺境伯様、おぉ、此方が本日の主役のシエロ様ですな?おぉ、なんと愛らしいお姿か…。はて?何故にお嬢様にタキシードを?」



 とか…。



「まぁ、可愛らしいお嬢様ですこと…。まさに男装の麗人と言った感じが致しますわ?」



 とか…。



「タキシードを娘さんに着せるとは、変わった事をなさいますなぁ?何か、理由がおありなのですかな?」



 とか…、そんな客ばっかりだったんだよ!!


 誰がお嬢様かーーー!!


 タキシード着てるんだから、男に決まってるだろーー!!



 はぁ、そんな訳で、余所事でも考えていないと相手を睨みつけそうだったんだ。


 いくら今日の主役とは言え、お父さんとお母さんのお客さんに不快な思いをさせたら拙いでしょ?


 だから、頑張って別の事を考えてたんだよ…。



 後は…。


 あぁそうだ、ブリーズさんとクレイさんも、この日の為にっておめかししてくれてるんだよ?


 ブリーズさんは、プリムラの花に似た、紫色の花の花びらを段々に重ね合わせた様なドレスに、レースのリボンを髪の毛と一緒に編み込んでいて、凄く大人可愛い装いをしていた。


 クレイさんは、同じく黄色いプリムラに良く似た花びらを、フレアスカートの様にフワッと仕立て上げたスカートを履いていて、胸の所にワンポイントで付いているオレンジ色の小さな花がとってもチャーミング☆だった。



 あ~、会社の先輩がここに居たら、もっと2人の事を的確かつ大胆に褒めたんだろうなぁ~。

 僕も、先輩にもっとモテテクを教わっとくべきだったかな…((ボソッ)



『あら、よくプリムラの花びらだって分かったわね?』


『似たような花びらの花はいくらでもあんべからねぇ?』



 あっ、こっちでもプリムラって言うんだ…。


 うん、似たような花を付ける植物は確かにいっぱいあるけどさ?


 まだ2月に入ったばっかりで花なんか殆ど咲いてない時だからね。


 でもプリムラの花だったら、日当たりが良いところなら12月くらいから咲き始めるよな~?って思ったんだ。



『シエロって本当に物知りよね~?』


『1歳の赤ん坊とは思わんにぃくらいだもんねぇ?』


 そんな事ないよ?

 知らない事ばっかりで、覚えたい事が沢山、山の様にあるんだ。



「本日は、我が次男、シエロの為にお集まり頂き、誠にありがとうございました…」


 お父さんが来てくれたお客さんに挨拶を始めた様だけれど、その言葉は、僕の頭の中を滑っていった。


 妖精の事、精霊の事、月に居るって言う女神様の事…。


 そしてこの世界の事…。


 冒険だってしたいし、未知なる物にも遭遇してみたい。


 出来るならブリーズさん達も一緒なら、もっと楽しいのにと思ってしまう。


 多分、呆れられちゃう様な事沢山すると思うし、やっちゃうだろうけど、僕と一緒に冒険してくれないかな?



『あら?シエロの行くところへなら、何処へでも付いていくわよ?前にも話してたじゃない。それとも、あれは冗談だったのかしら?』


『シエロ君にくっつかってったら、面白ぇ事いっぱいやってくれそうだかんなぃ?此方こそ宜しくお願いするだよぉ?』



 断られたらどうしよう、何てドキドキしていた僕に、2人から笑顔付きで承諾の言葉をもらえて、ホッとする。


 ブリーズさんとあの話しをした時は、あんまり軽く返されちゃったから、本気にしてないのかな?って思ってたから…。


『あら?私はいつだって本気だったわよ?シエロ、これからも宜しくね?』



 うん、宜しくお願いします。


「息子のシエロを宜しくお願い致しますわ♪」


 お母さんの挨拶の言葉が、タイミング良く僕らの会話と噛み合って、ブリーズさん達と思わず笑い合った。



 僕は、知りたい事が沢山ある。

 いや、思い出したい記憶が沢山ある、と言った方が近いかもしれない。


 夢によく出て来る3人の女性達。


 死因すら分からない、欠けてしまった前世の記憶…。


 思い出せるのは、自分の名前と家族の思い出。

 それと、会社で一緒に働いていた仲間達の名前だけ…。


 日常生活に関する事は覚えてるし、知っている事だって、皆に言わせれば多いんだろうけど、それでも…。


 1歳になり、この世界で生きていくと決めた。


 けれど、それらの記憶をいつか取り戻したいとも思っている。


 それが、忘れてしまった方が良い様な思い出だったとしても、忘れたまま何て、嫌だから。



「シエロ、おたんじょう日、おめでとう」


「おめでとう~」


 でも、今は、僕の為にお祝いをしてくれる大好きな家族と共に、このパーティーを楽しもう。


「あい、あっと~」



 大好きな家族に僕が今返せるのは、笑顔だけだなんだから…。




これにて長かった赤ん坊編がお終いとなります。


閑話と数話を挟みまして、いよいよ学園編へと移って行きます。


生まれ変わっても~も、まだ長々続いて参りますが、少しでも皆様に楽しんで頂ける様に精進して参る所存です。


宜しくお願い致します。



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