五十二話目 洗礼式の朝の日
明日はルーメンお姉さんの誕生日、つまり、洗礼式がある日です。
お祖母さんから魔法を見せてもらってから、20日くらい経つのか…。
仕事から帰ってきたお父さんと、お父さんの仕事を手伝っていたという祖父さんが、子供みたいに駄々をこねてから随分経ったんだなぁ…。
祖父さんは鬼瓦みたいな顔をして、血涙を流すし、お父さんは家族にどんなだったか詳しく説明させたがるし、お祖母さんはお祖母さんで、また今度ね~♪って部屋に戻っちゃうしで家中パニックだったよ…。
まぁ、お父さんの場合は、プロクスお兄さんや、ルーメンお姉さんと話したかっただけみたいだけどね?
そんなパニックデーから20日弱、明日は皆で教会に行くらしいんだけど…。
ブリーズさんとクレイさんは、教会へ行ったことある?
『ううん、私達は入った事ないのよ』
『宿主さんがいない妖精はあの中には入りづらいんだぁ~』
何で教会に妖精が入りづらいんだ?
教会に入りづらいのって悪魔とか魔物、魔族ってイメージだったけど…。
あっ?まさか退治されちゃうとか?
『何でそうなるのよ!』
うぅ、ブリーズさんに怒鳴られた~。
そこまで怒らなくても良いのに~(泣)
『教会には色々なモノを弾く結界が張ってあるだよ。一応妖精も、【魔族】の一部って事さなっちまってるから、弾かれっちまうのさ』
あ~、なるほど、結界か…。
確かに教会に結界ってお決まりかもしれないな…。
えっとさ、宿主がいれば入れるって事は、僕の体の中に入っちゃえば大丈夫って事なの?
『あぁ、それなら大丈夫だと思うわ?去年スパークがやったみたいだから』
そっか、んーでもさ、それだと悪い奴とかも入りたい放題にならない?
『う~ん。説明が難しいから簡単に言うとね?悪い心を持った奴は教会に入った途端に浄化されちゃうから、寧ろ教会から離れるわよ』
そっか…。
じゃあ、悪い奴に追われたら教会へ逃げ込めば大丈夫かな?
『え~?んー、絶対とは言えないけど、まぁ大丈夫じゃない?ほら、明日は朝早いんでしょ?また続きは明日教えてあげるから、早く寝なさい?』
あっ、うん。
そうするね?お休みなさい、ブリーズさん、クレイさん。
『はい、お休み~』
『良い夢を見んだよ~?』
うん。
ありがとう…。
――――――
ん?もう朝か…。
「シエロ!おはよー!!」
うわっ!びっくりした~。
あっ、ルーメンお姉さんか…。
おはよう、ルーメンお姉さん。
お誕生日おめでと~う♪
「あっ、お~っ。う~う♪」
今日も両手をお姉さんに向けてご挨拶。
お姉さん、今日は特別楽しそうだね~?
そりゃそうか、自分の誕生日だし、ずっと楽しみにしてた洗礼式の日だもんね?
「えへへ~♪シエロ~、シエロ~♪」
うん、本当に嬉しそうだ。
お姉さんから幸せオーラが溢れ出ているよ…。
「あっ、シエロおきた?ルー、おかあさまがよんでたよ?おきがえするんだって」
あっ、プロクスお兄さんおはよー。
扉から顔をひょっこり出すお兄さんの、その仕草は凄く可愛いんだけど、如何せんお顔が怖い…。
まぁ、祖父さんに比べれば全然なんだけどさ…。
本当に眼鏡がないのが悔やまれる。
あっ、それはそうとお姉さん、お着替えだって!
言ってこなくちゃ。
「あっ、おにいちゃん。うん、ルーきがえる~♪シエロ、またあとでね~?」
あっ、お姉さん!
走ったら危ないよ~?
「ふふふ。ルー、おきた時からああ何だよ?おかしいよね~?シエロ~」
そんな事言って~、お兄さんもご機嫌じゃないですか(笑)
いつもよりおめかししてるし、格好いいよ?お兄さん。
「プロクス?シエロちゃんは起きた?あぁ、起きていたのね?さぁ、シエロちゃんも食事をとったらお着替えしましょうね~?」
あっ、お祖母さんもおはようございま~す。
何か慌ただしいな(汗)
でもまぁ、こういう慌ただしさは大歓迎だけどね(笑)