四十九話目 妖精が【見える】人の日
魔力暴走、改め、癇癪爆発事故から一夜明けました。
本当は疲れてもいなかったし、昨夜も魔力向上プログラムをやりたかったんだけどさ~?
ブリーズさんを初めとする、妖精一同にめちゃくちゃ反対されて、昨日は中止になった。
お蔭で昨夜は久しぶりにぐっすり寝ちゃったから、凄いスッキリと朝を迎えられたよ(笑)
今は、朝の日課を全て終え、お母さんの膝の上に座っているところ。
何をするでもないけれど、お祖母さんと遊ぶ兄姉を観察しながら時間を潰している。
『シエロ~、おはよ~』
あっ、ブリーズさん、おはよ~。
『シエロ君、おはよ~』
クレイさんもおはようございます。
ブリーズさんに続いて、クレイさんも僕の中から出て来た。
昨日僕の中に入ってから、彼女達に妙に気に入られてしまったらしく、昨晩から寝るときに貸すことになった。
まぁ、体の中に入ってるなぁ~っていう感覚は無いし、違和感も無いからOKを出したんだけどね?
『私、人族の中って始めて入ったんだけどさ、意外と快適だから驚いちゃった』
『シエロ君の中だからでねぇの?ブリーズちゃんの場合』
『なっ!クレイあんた、からかうのも大概に…』
あはは、2人とも仲が良いなぁ~。
真っ赤に顔を染めるブリーズさんを、嬉しそうにからかうクレイさん。
うん、今日も平和だな~(笑)
「あら?シエロちゃん…。もしかして…」
ブリーズさんとクレイさんのじゃれ合いを、微笑ましく見ていたら、兄姉と遊んでいたはずのお祖母さんから、名前を呼ばれた。
えっ?何?
僕また何かしでかしました?
お祖母さんの方へ顔を向けると、目をキラキラ輝かせながら、満面の笑みを浮かべるお祖母さんと目があった。
えっ?本当にどうしたの?
っていうか、近い!
この家族は本当に距離感が可笑しい!!?
思わず、ブリーズさん達に助けを求めて視線を動かしてみると、彼女達も、急に近付いてきたお祖母さんにびっくりしているようだった。
あ~、お祖母さんが近付いてくると、緊張するって言ってたもんなぁ…。
「やっぱり。リーベさん、シエロちゃんには妖精の姿が見えてるわよ♪」
あ~、そっちか…。
そういえばお祖母さんにも妖精の姿が見えるんだもんね?
僕、ブリーズさん達と話すの普通になってたから、特に隠すとかしてなかったし、今もそっち見てたしなぁ…。
どうせいつかはバレる事だし、ブリーズさん達も特に隠す必要はないって言ってたから、気にはしてないけど…。
「本当ですか?お義母様!?ジュリア!ジュリア!」
まぁ、こうなるよね?
喜色満面と言った感じのお母さんは、大声でジュリアさんを呼び出した。
そしてすぐ来るジュリアさん。
本当に何者なんだ…。
この人…。
「ジュリア!お義母様が、シエロちゃんは妖精が見えてるって仰ったの!!ジュリアもそう思う?」
ジュリアさん相手だと、本当に嬉しそうに話すよなぁ…。
お母さんってジュリアさん大好きだよね?
だって他の使用人さんと話してる時と、テンションが全然違うもん。
何かこう…、手の掛かる姉と、無口な妹って感じ?
「はい、私も、シエロ様には私には見えない何かが見えているご様子だと…。しかし、私では確証を持つことが出来ず、ご報告を見合わせておりました。申し訳ございません」
「そんな事ないわ。見えないものを証明する事程、難しい事はないもの。それよりもシエロちゃんよ!良いわねぇ?貴方にはこの世界がどう見えているのかしら?」
だから、お母さん!顔が近いって!?
そんなうっとりした顔されても、まだ喋れないから伝える術なんてないしさ~(汗)
どう?って言われてもどうしたらいいのさ?
あぁ、ほら!お母さんが騒いでるから、せっかく絵本読んで遊んでた兄姉達まで寄ってきたじゃないの!?
「お母さま?どうしたんですか?」
「シエロどうしたの?またぐあいわるい?」
『シエロ君具合が悪いって?』
ほら~、皆に心配させちゃったじゃんか~。
スパーク君、大丈夫、僕は元気だよ?
「いいえ、違うのよ?とっても良いことが分かったの♪お祖母様が教えて下さった事なのだけれどね?シエロちゃん、妖精さんの姿が見えているんですって!」
「えっ!?ほんとうですか?すごい…。すごいすごい!シエロはすごいんだね?」
「シエロいいねぇ~?ルーもみてみたいなぁ~」
何とか誤解は解いてもらえたけど…。
ブリーズさん、君達の姿を見るにはどうしたら良いのかな?
そんな魔法ってないの?
『そうねぇ…。何かあったかしら…?あるとしたらとっくにスパークが使ってるでしょうし…』
『勿論さ。でもそんな魔法、聞いたことないよ?』
んー、そうだよねぇ…?
そんな都合の良い魔法がある訳…。
「じゃあ、見てみる?」
えっ?
誰よ、そんな魔法使える人!?