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閑話 メイドの思い出

10月31日2回目の更新です。


読んで頂いている皆様のおかげを持ちまして、生まれ変わっても~も50話目を迎える事となりました。


感謝の気持ちを目一杯込めましたが、グロ注意な場面が少々ございます。


ご注意願いますm(_ _`;)m





 (わたくし)、コルト辺境伯婦人、リーベ・コルト様にお仕えさせて頂いております、メイドのジュリアと申します。



 私は、兎族の獣人として生を受け、10を数えるまでは一族の村で平和に生きておりました。


 ところがその村は、大型の魔物を多数従えた1人の魔族により、一瞬にして壊滅させられたのでございます。



 まぁ、この様な事は何処にでもある事…。


 私だけが運良く生き残った、と言うの様な事も、この国ではよく聞くお話しでございます。



 とは言え、その当時の私には、よくある事だ、と頭を切り替える事は出来ず、ただ【絶望】という二文字だけが頭の中を占めておりました。



 母から頼まれたお使いを終え、村へ帰った私の目に先ず飛び込んできたのは、家や畑、そして天をも焦がし、燃やし尽くそうとする赤黒い炎。


 そして、村の広場に積み上げられた頭部のない死体達。


 そこに積み上げられた死体は、村の男衆の者でございました。


 近くに鍬や鎌などが散乱しておりましたので、魔族に応戦し、返り討ちにされたのでしょう…。

 当然、そこには父と思しきものもありました。



 しかしその中に、母や姉、村の女衆の死体が無い事に気がついた私は、村の避難所に指定されていた村はずれの洞窟へ向かったのでございます。


 一筋の希望を胸に洞窟へ向かった私ではございましたが、その場にあったのは、無残に食い散らかされたモノ(・・)だけでした。


 食い散らかされたモノの中に、母と姉らしき欠片を見つけた時、私はここにいてはいけない。


 ここに残っていては、私も殺されてしまう。


 と感じたのでございます。



 ですがそこから先、あの場所からどうやって逃げ出したのか、私はよく覚えておりません。


 ただ、気がついた時には、見覚えのない天井を見つめておりました。


 村では見た事のない、白くて高い天井に、清潔そうな、肌触りのとても良いシーツ。


 そこで、私は自分がベッドに寝かされているだと、漸く気がつきました。


『わたしはここにいてはいけない、逃げなくては』


 と、とっさに私は慌てて体を起こし、その場から逃げ出そうとしました。


 そんな私に、優しく声を掛けて下さった方がいらっしゃったのです。


 無理をしてはいけない、まだ寝ていなくては、と体中が酷く痛む私の体を気遣う様にして、ベッドに戻して下さる不思議な髪の色の美しい少女。


 その方は私の傷が癒えるまで、付ききりで看病をして下さいました。


 その方は、どう贔屓目に見ても、良家のお嬢様。


 森に囲まれた村に生まれ、田舎で育った私とは、住む世界が違う、高貴なるお方…。


 黄金色にも見える茶色という、不思議な色の美しい髪を持ち、キラキラと蒼く輝く美しい瞳。


 暗闇に怯え、夢の中でも怯えては、小さな子供の様に泣きじゃくる私を、彼女は時を選ぶ事無く、背中をさすり優しく優しく慰めて下さいました。


 そうして私の心と体の傷がすっかり癒えた頃、私は彼女に1つのお願いを致しました。



『私を、お嬢様のメイドとして、雇って下さい』


 と。



 今思えば、何と厚顔無恥な発言をしたのだろう、と恥ずかしくて顔が赤くなる思いではございますが、その事に後悔はしておりません。



「あーいぁ~、う~」


「ふふっ、シエロちゃんは元気ですねぇ~」



 何故なら、この様に素晴らしい主様に恵まれ、その主様の可愛らしいお子様方に囲まれて過ごす事が出来ているのですから…。



 唯一の誤算と言えば、その後何故か、旦那様のお母様であらせられるエリザベート様に見込んで頂いた事でしょうか?


 それも、メイドとしてではなく、大奥様直属の、特殊部隊へのお誘いだった事には、流石の私も驚きを隠せませんでした。



 しかし、そのお蔭で憎むべき魔族の存在を知ることが出来たのですから、嬉しい誤算だった、とも言えるのですが…。



 いつか、あの魔族をこの手で必ず葬ってみせる。


 奥様の元へ戻ってからも、変わらぬ私の目標でございます。


 【復讐】などと言う後ろ暗いものではございません。


 これは、未だ村に戻る事が出来ぬ私の【けじめ】なのでございます。



 とは言え、それは未だ先の話し。

 今は誠心誠意、リーベ様にお救い頂いた、この命を掛けて、お仕えするのみでございます。


 先ずは、リーベ様に【お願い】された、末のご子息、シエロ様をお見守りすると言う使命を全う致します。


 シエロ様は、まだ生まれたばかりの赤ん坊ではございますが、要所要所でその才能を発揮しておられるお方にございます。


 先程も、私が部屋の隅に立っている事をお忘れだったご様子で、思わずビクッと体を震わせておいででした。


 ふふふ…。

 可愛い…。


 おっと、失礼致しました。


 つい本音が…。


 とまぁ、ここまで長々と私の事を語らせて頂きましたが、私の話しなど、退屈でしたでしょう?


 お詫び、という訳ではございませんが、1つ、貴方様に良い事をお教え致しましょう。



 この屋敷に忍び込んだからには、どのような理由があろうとも、決して生きて外へは出られないのでございます。


 えっ?あぁ、そんなに怯えずとも宜しいではございませんか。


 大丈夫、すぐに貴方様も他の皆様の所へお送りして差し上げますから。

 では、そろそろお時間でございます。


 ごきげんよう。




 おや?

 私とした事がいけませんね、奥様に頂いた大切な靴に、血を付けてしまうとは…。


 例え一滴とは言え、怠慢の証しでございます。


 より一層の精進が必要ですね。


 さて、この芥を片付けたら、シエロ様の観察に戻りましょう。

 あの末のご子息は、私の主様によく似たあの赤ん坊は、本日は何をして私を魅せてくれるのでしょうか…。


 ふふふ、楽しみでございますね♪





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