四十七話目 救世主、熊爺
僕が魔力暴走を起こしたと騒ぎになりました。
そして、その原因は僕の祖父さんにある、と、魔王と化したお祖母様から追求される祖父さん。
果たして、祖父さんの運命や如何に!?
「何やら騒々しいですなぁ?」
救世主キターーー!
熊爺の来訪を、これほど心待ちにする時が来ようとは思わなかった。
祖父さんが、一方的にお祖母さんから責められている様子を皆で見つめていると、不意に熊爺ことベアード医師が姿を現した。
「あっ、これはベアード医師、お忙しいところ、急にお呼びだて致しまして…」
熊爺に気がついたお母さんが、慌てて挨拶をする。
「いえいえ、奥様。ちょうど此方の方へ往診していましてな?ちょうど良かったですわい。それで?シエロ坊やが暴走を起こしたと言う事でしたが?」
「ベアード医師、ご無沙汰しております。それで、シエロは大丈夫なのでしょうか?」
「おぉ、これは大奥様、ご無沙汰致しておりますじゃ。ちょっと見させて頂きますので、少々お待ちくだされ」
凄いなぁ。
爺ちゃんが部屋に入ってきたら、さっきまでのピリピリして殺気だった空気が少し、穏やかな物に変わった気がする。
ホッとしたっていうのかな?
お祖母様も張っていた気が緩んだみたいで、さっきまでとは全然表情が違う。
「よぅ、シエロ坊、また何かやらかしたのか?」
ちーッス爺ちゃん。
ごめんね?またやらかしました。
やらかしたと言う自覚はあるので、今日は大人しくしていよう。
さぁ、熊爺、どうにでもしてっ!!
「おぇぅ~え~」
「うん、シエロ坊は、元気じゃのう?ちょっと冷たいぞい?」
うわぁ!?マジで冷てぇーー!!
大人しくしてるって言ったけど、無理!爺ちゃんの手、氷みたいに冷えてる!?
「ほい、お終いじゃ。ふむ」
あ゛~、ちょっとチビった。
あんなに冷たい手で触られたらさ~、普通の赤ちゃんなら号泣してるぜ?
で?熊爺、僕、大丈夫だった?
自分では何の違和感も無いし、いつもどおりな感じなんだけどさ?
「どこも悪いところはなさそうじゃのう?普通、大なり小なり魔力暴走を引き起こせば消耗もするし、酷ければもっと衰弱しているもんじゃがな…」
「と言うことは、どうなんじゃ?わしがやっぱり悪いのか!?」
おっ!お祖母様に責められすぎて、何か薄くなってた祖父さんが復活したな。
でも、そんなにまくし立てたら熊爺喋れないよ?
「何じゃ、アーサー、お主居ったのか?全然気付かなかったぞ?久しぶりじゃな?」
「挨拶何かどうだっていいわぃ!?それより、どうなんじゃ?」
祖父さん、必死だな…。
あんまり熊爺に詰め寄ってると…、あぁ、お祖母様からまた殺気が漏れ出してる~。
怖いっ!恐いから、祖父さん、気付いて~(焦)
「ふむ、まぁお前さんがそう言うなら良いがのう?お前さんが何をやらかしたのか知らんが、シエロ坊は魔力暴走を起こしてはおらんようだぞ?」
えっ?マジで?
こんだけ騒いでて、魔力暴走じゃなかったの?
うわっ、どうしよう?
アレかな?今からでも起こした方が良いかな?
『馬鹿言うんじゃないの!!暴走じゃなかったなら良い事じゃない?』
いや、ブリーズさん。
それはそうなんだけどさぁ、何かしないと悪い気がして…。
『シエロ君は、本当におもしょい童こだべなぁ~?』
『いや、クレイ。全然笑い事じゃないわよ…』
妖精達が呆れて笑い、僕がオロオロ狼狽えていると、爺2人も似たような雰囲気で話しているのに気がついた。
「魔法暴走じゃなかったのなら、シエロが起こした光の爆発は、一体何だったんじゃ?」
「まぁ、落ち着かんか。光の爆発とやらをワシは見とらんから分からんが、その光の爆発とやらを起こして、誰も傷ついていないのが何よりの証拠じゃろう?」
「「あっ!?」」
祖父母揃って同じタイミングで声をあげる。
何だかんだ仲良いな(笑)
「ほれ見てみぃ?シエロ坊が起こしたと言うなら、大方この部屋で爆発が起きたのじゃろう?」
「うむ、ベアードの言うとおりじゃ」
凄いな熊爺。
皆テンパっるから大した説明出来てないのに、良くそこまで分かるなぁ。
「どうせ、寝起きにお前さんの顔を見せられて、シエロ坊が混乱したんじゃないのか?お前さんの顔は赤ん坊には恐すぎるからな」
苦虫を噛み潰したみたいな顔の祖父さんと、顔を天井に向けて大笑いしている熊爺。
対比が凄いな…。
んー、得意気な熊爺には悪いけど、女の子に間違われて頭に血が上ったのが原因何て、恥ずかしくて言えないしなぁ…。
まぁ、伝えたくてもまだ喋れないから無理なんだけどさ。
ってか、誰が女の子やねん!!