四十六話目 家族会議の日
僕が魔力暴走を起こしたと聞きつけたお父さんが、文字通り飛んで帰って来てくれました。
窓からのご帰宅、凄い吃驚しました。
独りでに窓が勢い良く開いたら、誰だって驚くよね?
僕は格好いいと思ったんだけど、何処から入って来てるんだって、お父さん怒られてて可哀想だったな…。
ジュリアさんに…。
この家さ~、使用人と主人の垣根が恐ろしく低い気がする。
何だかんだお父さんが怒られてる光景を見るよ?
まぁ、この話しは今じゃなくて良いか。
今は僕のベッドを囲んで、家族会議の真っ最中です。
「シエロが魔力暴走を起こしたと聞いた時は、心臓が止まりかけましたよ…。それで?何故シエロは魔力暴走を?」
お父さんは、ベッドに横になる僕を心配そうに覗き込む。
お騒がせしてすいません。
僕も良く分かってません。
「それが、わしにも分からんのだ。暴走を起こす直前まで、わしらが持ってきた玩具でご機嫌に遊んでおったからのぅ」
祖父さんが、立派な口髭を手で撫でつけながら首を傾げる。
うん、服の上からでも分かるほど、筋肉が盛り上がっているバッキバキのおっさんが、首を傾げても可愛くないな。
しかも、その顔は鬼瓦みたいに恐ろしい顔だしね…。
「ベアード医師をお呼びしましたから、直ぐにお答えを頂けると思いますわ?」
「そうか、それならば、ベアードが来るまでシエロの様子を…!どうしたんじゃ?エリザベート!?」
えっ?
うわっ!おっ、お祖母様、さっきまでの、優しくてほんわかした雰囲気は何処で捨てて来たんッスか!?
顔は一応笑ってるけど、漏れる殺気が全然抑えられてない。
こっ、恐っ!?
「アナタは、シエロちゃんに何をしたか分かっておられるのかしら?」
「それはどういう、ぃみじゃ?」
最初は強気な口調だった祖父さんも、お祖母さんの殺気に当てられて、どんどん声が小さくなっていった。
お祖母様最強説…。
「母様、僕も気になります。それはどういう事ですか?」
「言葉通りよ?シエロちゃんの様子が可笑しくなったのは、アーサーがシエロちゃんを女の子と間違えた直ぐ後だもの」
『おぉ!お祖母様なかなか鋭いわね?』
『あん時、シエロ君を抱っこさしったからなぃ?よっくと顔が見えたんでねぇべか?』
ブリーズさん、クレイさん、楽しそうに話してるところ悪いけど、お祖母さんの殺気にあたってると危ないかも知れないから、良かったらスパーク君みたく僕の中に入ってる?
お祖母さんの殺気にあてられて、消滅したりなんかしたら嫌だからさ?
『うーん、いくら私達でもそこまで脆くはないと思うけど…。確かにアレは恐いわね?』
『シエロ君のお腹の中さ、退避させてもらうべ~?』
うん、そうして?
チラリとお祖母さんの方を窺う。
うわっ!?お祖母さんの背後から、恐ろしい顔をしたドラゴンが見える気がする!??
祖父さんの後ろには、あぁ、怯える兎が見えるな…。
『じ、じゃあ逃げさせて貰うわね?』
『すまねぇなっし…』
僕が了承すると、2人は揃って僕の中へ入っていった。
無断とは言え、プロクスお兄さんの中にいつもスパーク君が入ってるくらいだから、僕だって平気だろう、と思って許可を出した訳だけど、中ってどうなってるんだろ?
『結構快適よ~?』
『シエロ君に無断で魔力食べねぇから、安心してくんちぇ~?』
うわぁ、自分の中から声がする~。
気持ち悪い~(笑)
『も~、そこは我慢してよ!?許可してくれたのはシエロでしょ?』
うん~。
頑張る~。
「しかし、4ヶ月足らずの赤ん坊じゃぞ?わしらが話している事など理解出来るのか?」
おっと、大人組の話しは続いていた様だ。
自分のせいだ、と疑われた祖父さんは、お祖母さんの顔色を伺いつつも、ビクビクしながら不満を漏らした。
「シエロは賢い子供ですからね…。私達の話しも理解している様な節がありますし、有り得る話しではあるかと…」
しかし、お母さんが追撃をくらわす。
祖父さんは、筋肉バッキバキの大きな体を小さくしながら呻いた。
息子の嫁さんは庇ってくれると思っていた祖父さん、クリティカルヒット!!
祖父さんは大ダメージを受けた(笑)
「うぐぅ…、しかし、こんなに小さいんじゃぞ?本当に分かっとるかなんて分からんじゃないか…」
祖父さん、どんどん声が小さくなるなぁ…。
まぁ、祖父さんが何か言う度に、お祖母様から無言で殺気を飛ばされていたら喋れなくもなるか…。
さて、どうしようか?
何か可哀想になってきたし、どうにかして庇ってあげたいんだけど…。
「何やら、騒々しいですなぁ?」
あっ!?救世主キターーー!!