三十八話目 綿アメの【正体】の日
草木も眠る丑三ツ時…。
か、どうかは時計が無いから分からないけれど、夜になりました。
よしっ!
今宵もやっちゃりますか!!
『今日は何をするの?』
あっ、おはよう、ブリーズさん。
『おはよ~』
『はよ~』
『こんばんは~』
皆もおはよう~。
目を開けると、妖精達が全員集合で僕の顔を覗き込んでいた。
うん、見慣れてはいる光景ではあるけれど、数が増えたから一瞬驚くな…。
周りは暗いのに、妖精の周りだけ淡く光ってるから尚更かも。
あ~…。
妖精達の姿が普通の人族には見えなくて良かったかも。
だってさ?こんだけの妖精に囲まれてるの見たら拐かされる瞬間にも見えるよ、絶対(笑)
『シエロ?』
あっ、ごめんね?
ついつい馬鹿な事を考えてしまった。
反省反省。
実は皆に見て欲しい物があるんだ。
『見て欲しい物?』
そう、ちょっと待ってね?
今、出すから…。
僕はいつもの様に目をつぶって、体の中に意識を集中させた。
今日は単色では出さず、初日に出した綿アメの形で出して、皆に見てもらおうと思っている。
この前【泥団子】を出した時、ブリーズさんは、僕がまだ体内でモタモタしている段階で、【土】の属性を集めていると分かっていた。
だから、綿アメを見てもらったらどれがどの属性なのかも分かるかもしれないと思ったんだ。
あっ、揺らぎを見つけた!
今日は全ての色を出したいから、そのまま回転させる。
『あれ?今日は、属性分けしねぇだな?なしただべ?』
『僕もこんな方法初めて見るよ。何が起こるんだろう…』
クレイさんとスパーク君が話している声が遠くに聞こえるけれど、集中しているからか良く聞こえない。
後で聞いてみよう…。
よし、回転速度もそろそろ大丈夫そうだ。
お腹から腕へ、と、いつもの順路を通って手のひらから外へ出す。
ちゃんと魔力が移動した手応えを感じ、目を開ける。
すると、そこには驚きに満ちた妖精達の顔と、前回よりも明らかに大きな【綿アメ】が鎮座していた。
えっ?何これ!?
前やった時こんなにデカくなかったよね?
えっ?えっ!?
倍くらいあるよ?
予想外に大きな【綿アメ】に混乱していると、ブリーズさんが驚きの表情を崩さないまま、口を開いた。
『凄い…、立派な属性雲ね…』
属性、雲?
この綿アメの事?
『はっ、ビックリし過ぎて固まっちゃったよ!本当に立派だねぇ~?僕、話しには聞いてたけど、初めて見たよ…』
『密度もすげぇべなぁ~?これが属性雲ってやつだか~』
えっ?何?
ちょっと!聞いてる?
皆で楽しそうにつついたり、匂いを嗅いだりしてるけどさぁ…。
これ何なのか、誰か説明してよ!?
『あぁ…、ごめんね?ついビックリしちゃって。』
ううん、大丈夫。
ブリーズさん、これって何なの?
僕知らないで出してたんだけど、危ない物だっりする?
『危ない物ではないから大丈夫よ?これは【属性雲】って言ってね?体の中にある魔力の塊だって言われているの』
魔力の塊…?
うん、確かに塊ではあるよね。
見た目も雲って言われれば雲みたいだし…。
僕には割り箸の刺さってない綿アメにしか見えてなかったけど(笑)
『普通はそれぞれの属性を帯びた魔力だけを取り出して、魔法を放つ訳だから、なかなか珍しい物ではあるけどね?』
えっ?あ~、言われてみればそうか…。
そのまま出す奴はいないよね?
あれ?じゃあこの間の泥団子も珍しかったの?
『う~ん。少し珍しいかもしれないけど、属性雲よりは良く見るかしらね?』
『そうだね?特に火と水は良く見るかもしれないね?』
『薪さ火を着ける時とか、水さ飲みっちぃ時とかは良くやってる人族見るかんな?』
あ~、なるほど…。
そういう時に使う技術ではあったのか…。
風出して涼んだりするのは有り?
『あり~』
『なし~』
『わか~んな~い』
分かんないのかよ!!
真面目に聞いてたのに…。
『4大属性、って言わっちる【炎】、【水】、【風】、【土】だったら大丈夫だべ~』
クレイさん、本当?
『私は嘘ばつかねぇよぉ~?んだから大丈夫だぁ~?』
クレイさんにお墨付きを貰ってホッとする。
なるべくなら目立たない方向で行きたいし。
あっ、属性雲に気を取られて、雲の中に入ってる属性を聞くのをすっかり忘れてた…。
もっ、もうちょっと続くんじゃ。