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三十五話目 続お稽古日和な日

10月21日分の更新です。


本日の更新分にて、【模擬】ではありますが、戦闘シーンがございます。


筆者には戦闘経験がありませんので、読みづらい、ここは可笑しい等ございましたら、感想欄にてお知らせ頂ければ幸いです。


本日も宜しくお願い致します。



 麗らかな春の日差しが差し込む庭の一角で、長身の若い男性と、小さな男の子が模擬剣を持ちながら向かいあっている。


 っていうか、まぁ、お父さんとプロクスお兄さん何だけどね。



「やぁーーー!」


 先ずはお兄さんが剣道で言うところの【正眼の構え】から、腕を振り上げる【上段の構え】の形になって、お父さんへ真っ直ぐ突っ込んで行く。


 それをお父さんは片手に持った模擬剣で軽くいなす。


「たぁっ!」


 次は横一線に模擬剣を振るい、お父さんに一撃与えようとするも、軌道から体を少しずらしただけであっさりとかわされてしまった。

 あっ、お兄さんの体からユラユラと、湯気の様なものが上がっているのが見える。


 あれが、ブリーズさんとスパーク君が言っていた【漏れた魔力】なんだろうか…。



 いなされても、かわされてもめげずに突っ込んでいくお兄さんだったけれど、お父さんに切りかかる度に、型も構えもぐちゃぐちゃになっていく。



「ほらっ、プロクス、無闇矢鱈と剣を振っても僕には当たらないよ?」


「はっ、はいっ!!」



 お父さんに指摘されたお兄さんは、一度お父さんから距離をとった。

 息を整えて、仕切り直したいらしい。



「すーっ、はーっ、お願いします!」


 【正眼の構え】の様な構えを取り直したプロクスお兄さんは、今度は無理に突っ込まずに隙を狙っていく作戦にした様だ。


『プロクス君がんばれー!』


 うーん……。

 いくらお兄さんが相手だって言っても、お父さんには無駄な動きが一切ない。

 実は凄い剣術の使い手、とかだったりして?



『んー。ねぇ、シエロ君。あれってどうなると勝ちになるの?』


 えっ?あぁっ、分かってて応援してた訳じゃないんだね?


『うん。何回かプロクス君の中で見てた事はあるけど…。あれって、何やってるの?』


 んー。

 妖精は、武器を使って戦ったりはしないの?

 魔法だけ?


『ぶき?ぶきってあれでしょ?今プロクス君が持ってるのとか、大きなハンマーとかの事だよね?魔物と戦ってる人族が使ってるのは見たことあるよ』


 うん、そうだね。

 後は、槍とか弓、鞭何かもあるかな。


『なるほどね。僕達妖精は皆魔法だけで戦うから、ぶきは使った事がないんだよ』


 そっかそっか、じゃあスパーク君には、プロクスお兄さん達が棒を振り回してる様にしか見えないかな?


『うん。そんな感じに見えるかな?。あっ、あれは剣って言うんだっけ?』


 そうそう、でもあれは木剣って言って、木で作られた剣だね。

 本当は鉄とかの堅い金属を使って作るんだよ?



『へぇ~、それにしても人族は色々な事を考えつくよね~。ぶきとか道具とかさ』


 まぁね、そういうのを作り出すのも人族の武器みたいなものだし。


『あっ、作り出すって言えば、服だってそうだよね?僕達、人族と交流を持たなきゃ服なんて着てなかったらしいよ?』


 えっ!?じゃあ皆裸だったの?


『ううん。流石に裸じゃないよ?葉っぱとか、木の皮とか巻き付けるくらいはしてたみたい』


 あー、ビックリした。

 ん?らしいとか、みたいって事は大分昔の話しなの?



『うん。僕が産まれたのは人族と交流が始まってから大分経った頃だったから』


『昔は、見える人も沢山いたから、交流も出来たんだけど。今じゃ無理な話しよね~?』



 うわっ、ブリーズさん!?

 おっ、お帰りなさい。


 スパーク君の後ろから、ひょっこりとブリーズさんが顔を出した。

 も~、神出鬼没なんだから…。


『ただいま~。プロクス君とお父さん何やってるの?あぁ、剣術の稽古?』


 あっ、ブリーズさんは知ってるんだ?


『何が?稽古の事?あぁ、スパークには、プロクス君達が何やってるのか分からなかったのね?』


『正解。それで、シエロ君に色々教えてもらってた』


 うん。

 僕からもスパーク君に質問したりして、分からない事を教えあってたんだ。

 じゃあ、ちょうど良いし、脱線してた話しを戻すとね?


 剣術に限った事じゃないんだけど、使い方を練習しなきゃ上手くならないから、ああやって上手い人に稽古をつけてもらうんだよ。

 だから、基本的に稽古に勝ち負けは無いんだ。


 まぁ、強いて言うなら、指南役が終了を宣言するまでに1本取れたら勝ちかなぁ?



「やぁーー!」



 庭に目を向けると、何度も転び転ばされしながらもお父さんに向かって行く、お兄さんの姿が目に入った。


 疲労は溜まっているはずなのに、さっきよりもお兄さんの動きは軽くなっている気がした。


「ほらっ、プロクス、右側が空いているよ」


 ツンッと木刀でお兄さんの右わき腹を軽くつつく。


 バランスを崩され、転びそうになりながらも踏ん張り、何とか次へ繋げる様な動作でお父さんに模擬剣を突き出す。


 しかし突き出された模擬剣は、お父さんの模擬剣で絡め取られ、あっさりと奪われた。


「はい。今日はこれでお終い。うん、大分動きが良くなったね。その調子でよく練習するんだよ?」


「はぁ、はぁ、はいっ。ありがとうございました」



 お兄さんは辛そうに息をあげながらも、晴れやかな笑顔でお父さんに応える。


 んー、本当にお兄さんって5歳児なのかな?


 実は、中に大人が入ってんじゃないだろうか。 5歳の時の僕何て、鼻くそほじって母さんに怒られてた記憶しかないよ。



「シエロ~、見てた~?」


 稽古を終えたお兄さんが笑顔で此方へ走ってくる。


 お兄さんお帰りなさ~い。

 勿論!皆で応援してたよ!



 お兄さんの笑顔がキラキラと眩しい、春の日の出来事だった。




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