三十四話目 お稽古日和な日
扉を潜ると、少し熱気を含みながらも、心地良い風が吹き抜けていきました。
極彩色に溢れた庭の花壇に、何処までも澄み渡る青い空。
一昨日みた景色とさほど変わらないはずなのに、今日はお父さんに抱かれているからか、全く違う景色に見えた。
おっ?あれがプロクスお兄さんが産まれた時に、噴火したっていう山かな?
遠くに、もくもくと白い煙を吐く山が見えた。
山のてっぺんの方は緑が見えず、土が露出しているから、前の噴火の時に燃えてそれっきりなのだろう。
うわ~。
煙りもくもく出てるじゃん。
あの山、まだまだ元気に活動してるんだな…。
屋敷の周りとか森だらけだし、前の噴火の時、この家よく無事だったよなぁ…。
はっ!まさか今すぐ噴火とかしないよね?
『それは大丈夫、まだエネルギーが全然足りないから、最低でも十年は噴火しないよ』
ん?一体どこから声がするんだろう…。
『ここだよ~?シエロ君。ここ、ここ~』
ふむ、確かにスパーク君の声が聞こえるんだけど、何処にも姿が見えな……居た!
スパーク君はプロクスお兄さんの中から手を振っていた。
おぉう…、何と言う事でしょう…。
5歳の少年の背中から、人形くらいの大きさの白い腕が生えていたのです。
うん、怪奇番組に投稿できるレベルで怖い。
『えっ?うそ!僕怖い?』
うん、スパーク君っていうか、背中から手が生えてるのがめちゃくちゃ怖い。
プロクスお兄さんが悪いお化けに取り憑かれてる様に見える。
『う~ん…。お化けか~、あんな奴らと一緒にされるのは癪だなぁ~…』
スパーク君は何やらブツクサ言いながら、お兄さんの中から出て来た。
よっぽどお兄さんの中から出て来たくないんだろうか?
『あぁ、違うよ?そういう訳じゃないから大丈夫』
あれ?違った?
『うん、お化けってアンデットの事でしょ?あんな奴らと一緒にされたくなかっただけだよ』
あー、それはごめんね?
前にそんな話しを聞いた事があったもんだから…つい。
それにしてもアンデットなんているんだね?
ゾンビとかレイスとかでしょ?
うわ~、やだなぁ。
絶対会いたくない。
『夜の墓地とか、廃村とかに行かなきゃ大丈夫じゃないかな?この辺りじゃあんまり見ないから平気だよ』
あっ、そうなんだ。
それを聞いて、ちょっと安心したよ。
後、変な事言ってごめんね?
『もう気にしてないからいいよ?あれ?そういえば皆は?誰もいないの?』
朝起きたら、ブリーズさん以外誰もいなかったんだ。
そのブリーズさんも、何処かに着替えに行っちゃったしね?
『えっ?着替え?何で?』
スパーク君は首を傾げながら、顎をポリポリと掻いた。
何かこういう、ふとした仕草がプロクスお兄さんと似ているんだよなぁ…。
絶対この2人相性良いよな…。
『そっ、そうかな?そうだと良いなぁ』
あはは、照れた仕草までそっくりだね?
あっ、そうだ、スパーク君。
『ん?何?』
図々しいお願いなんだけどさ…。
もし、外にいる間に知らない事とかあったらさ、その、聞いてもいいかな?
『何だ、そんな事か。勿論良いよ?僕で分かる事なら何でも聞いて?』
ありがとう、スパーク君。
じゃあ、早速で申し訳ないんだけど…。
「お父さま!ひさしぶりに、けんのおけいこおねがいします!」
スパーク君に、精霊の事とか色々聞こうと思ったら、プロクスお兄さんに遮られてしまった。
いつになく目がキラキラ輝いている。
お~、剣の稽古か~、やっぱり男の子だね。
「おっ?やるかい?よーし、じゃあ、僕は模擬剣を持ってくるから少し庭で待っておいで?」
「はいっ!」
「そう言うわけだから、リーベ、シエロを頼むね?」
「えぇ、アナタ。お手柔らかにね?」
「あぁ、任せておいてよ」
あっ、はい。
流石に僕を抱っこしながら稽古をつけるのは難しいよね。
片手で稽古つける姿とか見てみたくはあったけどさ(笑)
おっ、やっぱりお母さんの抱っこの方がしっくりくるね♪
お父さんって細身なんだけど、何気に筋肉が凄いから、抱かれてて地味に痛かったんだよなぁ。
「プロクスお待たせ!さぁ、始めようか」
えっ?お父さん早くない?
もう模擬剣取ってきたの?
どうやらあっという間に戻ってきたお父さんと、プロクスお兄さんの稽古が始まるようだ。
しかし、お父さん嬉しそうだったな…。
――――――
花壇を抜けた先に芝生を敷き詰めた小さな広場があって、そこに笑顔のお父さんと、真剣な顔付きのお兄さんが対峙している。
僕とお母さん、ルーメンお姉さんの3人は、庭の木陰に設置してあるテーブルセットに腰をおろして観戦だ。
『シエロ君、さっき何か言いかけなかった?』
あっ、そうそう精霊の話しをもっと聞きたかったんだけどさ、後でお願いしても良い?
スパーク君も、お兄さん達が稽古してるのちゃんと見たいでしょ?
『精霊の話しか…。うん、僕も後でいいよ?プロクス君の応援しなくちゃね!』
よし、スパーク君も応援モードに入ったみたいだし、そうと決まれば、ガッツリ観戦しなきゃね?
フッフー、血がたぎるぜー!
『プロクス君、がんばれー!』
晴れ渡る空、青い芝生、剣を構え対峙する2人の男達…。
うん。
今日は絶好の稽古日和だね!!




