三十三話目 お屋敷探検(通過)をした日
安○大サーカスの団長の様な早着替えを終えた僕です。
『ねぇシエロ、あのジュリアって兎獣族、一体何者なのかしら…。有り得ない早さで貴方を着替えさせたわよ?』
ジュリアさんは最強のメイドさんだからね~。
メモ帳持って追いかけてくる人と同一人物だとは思えないよね?
『え?ちょっとよく分からないけど、まぁいいわ。それよりシエロ。今日の服、格好良いわね?』
服?
あぁ、確かに。
いつもはグレーのシャツに、紺色のサロペットって感じの、汚しても大丈夫な服ばっかり着てるからね。
それに対して今日は白いシャツと、白地に黒で、細かい花の模様が描かれたサロペットを着せてもらっている。
シャツにサロペットの組み合わせはいつもと一緒だけど、模様があるだけで、凄いおしゃれをしている気持ちになるから不思議だ。
あっ、ちゃんと股の部分が開くようになってるから、オムツ替えも安心!な仕様になってるよ?
『確かにそうね~。んー、私もたまには別な服着て見ようかしら?』
えっ?そのままでも充分、可愛いと思うけど…。
『駄目よ!女の子はね?いつでもおしゃれしたい生き物なのよ!?そう、聞いたことがあるわ!』
おっ、おぅ…。
一体何処情報なんだろう…。
『よし!それじゃあ早速、着替えてくるわ!シエロ、また後でね?』
あっ、ちょっと…。
そう言うとブリーズさんは、有り得ない早さで外へ飛び出して行ってしまった…。
そういえば、いつの間にか他の妖精達も居なくなっているし、うーん。
妖精は気まぐれ、ってこういう事なのかな?
あっ、天気良いなぁ…。
………。
ブリーズさんが出て行った窓から、目線を下へと移す。
着替えが終わって、緑色のフカフカの絨毯に寝かされていた僕を、嬉しそうに見つめているイケメンと目が合う。
着替えをジュリアさんに託してからも、ずーっと無言でこっちを見てる…。
うぅ、またかいお父さん…。
笑顔はもう見飽きたから、何かしゃべれ~。
「シエロ!おきがえおわった?」
そこへ、プロクスお兄さんが元気よく部屋に入ってきた。
あっ、プロクスお兄さん。
何て良いところに…!!
この空気に耐えられなくなってきてたから、凄く助かりました。
「あっ、お父さま、みんなしたくおわりました~」
「ははは、皆お待ちかねの様だね?それじゃあ行こうか」
はーい、お父さん。
お父さんは僕を片手に抱き上げ、もう片方の手でプロクスお兄さんと手をしっかり繋ぐと、部屋の出口を目指した。
あっ、そう言えば一昨日外に出掛けた時は、【外に行く】って事に夢中になっちゃってたから、屋敷の中を全然見てなかったんだよなぁ…。
「あっ、おかあさまー。シエロとおとうさまでてきたよー!」
子供部屋から出た所で、お母さんとルーメンお姉さんと合流する。
うわぁー、廊下が一つの部屋くらい広いんですけど…。
廊下に沿って、畳3枚ずつくらい敷けるんじゃないかな。
んー、僕って、本当に周りが見えてなかったんだなぁ。
普通気がつくよなぁ…。
こんなに広かったらさぁ。
お母さんとお姉さんは、子ども部屋と廊下を繋ぐ扉を出て、すぐの所に設置してあるソファーに、座って待っていた様だ。
って言うか、何で廊下にソファーが置いてあるんだろう…。
お金持ちの家って分からない…。
「リーベ、待たせてしまったかい?」
「いいえ?ルーメンやプロクスと一緒でしたから、寧ろ楽しかったですわ♪」
お父さんは、ソファーに座っているお母さんの頬に、軽いキスを落とした。
おぉう、子どもが見てるでしょーが(汗)
って、あれ?お兄さんもお姉さんも、特に気にした風でもなく、ケロッとしている。
あー、そっか…。
前世でも、外国じゃあこんなの普通の挨拶だったもんなぁ…、これが普通なんだね?
「さぁ、それでは庭へ行きますか?」
「「はーい」」
「えぇ」
家族皆で、ゾロゾロと廊下を進む。
廊下には、お兄さんの背丈くらいの大きな花瓶や、見たことがない動物を象った石像等が飾ってあった。
決して華美な物ではないけれど、僕の興味を惹くものが少し進む度に出て来るので、本当ならじっくり見たいところなんだけど…。
他の家族にとっては、特に珍しい物でもないので、雑談を交わしながらサクサク進んでしまう。
そうこうしている内に、エントランスホールへ出てしまった。
うぬぬ、1人で歩ける様になったら、絶対屋敷の中を探検してやろう。
僕はそう、心に誓うのだった。