二十八話目 精霊の秘密を聞いた日
氷の妖精は敵です。
許すまぢ…、スパーク君を馬鹿にした奴。
『で?落ち着いた?』
うん、落ち着きました。
どうも皆様、お騒がせしましてすいませんでした。
『僕の事で怒ってくれたんだもん。ありがとうシエロ君』
『こわかった~』
『シエロはおこらしたら~』
『だめ、ぜったい~』
無理してヤンキー口調を使っていたスパーク君は、本当は大人しい口調の男の子でした。
大丈夫。
氷野郎に会う事があったら、僕がボコボコにしてあげるからね?
で?何でスパーク君はプロクスお兄さんの中にずっといたの?
氷野郎から逃げてたって訳じゃなさそうだし…。
『うん、僕ね?プロクス君が気に入ったの。妹や弟に優しくて、強くて、物知りで、僕に無い物みんな持ってた。だから、プロクス君の為に精霊になりたくなって…』
うんうん、プロクスお兄さんは本当に完全無欠のスーパー5歳児だもんね。
君が憧れるも凄く分かるよ。
だけどさ、妖精が精霊になるっていうのはどういう事?
『シエロはまだ知らなかったのね?ん~とね。分かりやすく言うと、精霊は妖精が進化した姿なの。自分の属性の力を充分に蓄えた時に、精霊に生まれ変われるってわけね』
へぇ~、じゃあ他の妖精でも精霊になれる?
あっ、それこそブリーズさんもなれるの?
『まぁ…、なろうと思えば大体誰でもなれると思うわよ?えっ?私?んー、シエロが毎日魔力吸って良いっていうなら、いつかはなれるかもしれないわね』
へぇ~、じゃあ、どのくらいの期間がかかるのかって言うのは別として、大体の妖精がなれるものなんだ…。
それでさ、精霊になると君達にとって何か良い事ってあるの?
『精霊になれば、普通の人間にも姿が見える様になるんだ…。だから精霊になればプロクス君と話しも出来るし。それに…、僕はプロクス君の力になれる様な精霊になりたいんだよ』
そっか、この場所には今、僕しか見える人族はいないけど、精霊に進化すればお兄さんにも会えるんだね…。
スパーク君、精霊になる為には後どのくらいかかりそうなの?
『ごめんね?実は僕にも分からないんだ…。精霊に進化出来るっていうのは分かっているんだけど、皆期間はバラバラで…。先輩はその時が来たら分かるって言ってたんだけどさ…』
う~ん、そうなのか…。
僕も何かお手伝いが出来ると良いなって思ったんだけど…。
『ありがとうシエロ君。気持ちだけでも嬉しいよ。何か分かったら、すぐに君に教えるね?』
そう言って笑ったスパーク君の顔は、プロクスお兄さんにそっくりだった。
うん。
スパーク君はプロクスお兄さんみたいに必ずなれる!絶対!!
『せいれいになったら~』
『けいやくできるね~?』
『たのしみ?たのしみ~?』
『うん、その為にも、早く精霊になりたいなぁ~』
えっ?契約?
『そうよ?精霊になったら何が何でも契約しないきゃいけないって訳じゃないんだけど、スパーク君みたいに、この人と契約したい!って思って精霊を目指す子も珍しくないのよ』
『契約が成立すると、お互いの魔力を貸し借りする事が出来たり、固有スキルを使わせてあげたりもできるんだ』
へぇ~、じゃあスパーク君はさ、プロクスお兄さんと契約出来たら、何がしたい?
『あっ、あの、ね?名前を付けて欲しいんだ』
スパーク君は自身の真っ赤に燃える髪の毛の様に、顔を赤く染めながらそう呟いた。
何この人~、か~わ~い~い~。
ん?あれ?君の名前ってスパークじゃないの?
『あ~、シエロ、違う違う。今貴方が呼んでるアクアも、ブリーズも、スパークも種族の名前なのよ。貴方達人族みたいに、私達固有の名前を持っていないの』
えっそうなの?それってすげー不便くない?
それじゃあさ、妖精同士はお互いをどう呼び合うの?
『んー呼び合うって事が、まずあんまりないわね…。そもそも仲間の見分けもつくし、欲しいと思う子の方が稀かもしれないわよ?』
『そう…だね。もし声をかけたい、とか思ったとしても、その子の特徴を口にして呼んだりとかくらいかな?例えばブリーズさんなら、【葉っぱのポンチョを着たブリーズさん】って呼ぶとか、かな?』
ふーん、成る程…。
妖精の世界はそれで通るのか。
あっ、ねぇねぇ、皆みたいに僕も固有名が無かったとしたらさ、何て声をかける?
すると、皆は少しだけ考えた後、口々にこう言った。
『『『『見える人』』』』
『たまのようなおこさま~』
んー、何か納得いかない。
特に最後…。