二十七話目 もう1人増えた日
水の妖精に火を近づけてはいけません。
プロクスお兄さんって、水の妖精が干からびる~って怯えるくらい力が強かったんだね?
『に~につよいよ~』
『スパークくんもいるし~』
『ひからびる~』
スパーク君…?
ブリーズさん、スパーク君って誰?
『ん?あぁ、プロクス君にくっついてる火の妖精よ?プロクス君の魔力が美味しくて離れないから、シエロもまだ会った事ないかもしれないわね?』
えっ?プロクスお兄さんにずっとくっついてると、何で僕は会えないの?
毎日お兄さんは僕の部屋に来るし、体の何処かにくっついているとしても、分かりそうな気がするけど…。
『あの子、体の中に入っちゃってるからね~…。私も最後に会ったのは1年前が最後よ?』
おぅふ…、えっ?何?体の中に火の妖精飼ってんの?うちのお兄さん。
いや~、魔力量が多い人はやる事が違うなぁ~。
『無断なのがちょっと問題だけどね?』
不法侵入ーーー!!?
それ、絶対駄目なやつ!!
えっ?何?妖精なら許されるの?
プロクスお兄さーん逃げてーー!!
あっ、ブリーズさん、呆れた様な顔しないでよ。
だってさ、うちのお兄さんの大ピンチだよ?
これが落ち着いていられる訳ないじゃないか!?
『はぁ、でも落ち着いてくれる?どっちにしても、プロクス君はまだスパークには会えないのよ』
はい?だって体の中に不法侵入されてるんでしょ?
それなのに会えないってどういう事?
『私達妖精の姿は、普通の人間には見えないのよ』
人間には見えない?
あぁ~、そういえばあの時、アクア達の姿はお母さんには見えてなかったっけ…。
じゃあ、何で僕には見えるの?
あれ?そういえば、アクア達が最初に僕の事【見える人】とかって言ってた様な気がするな…。
ブリーズさん、もしかして【見える人】って関係ある?
『えぇ、関係大有りよ?シエロみたいに見える人間は貴重なの。昔は沢山いたらしいんだけど、今はなかなかいなくてね~』
『シエロがはじめましてなにんげんだよ~?』
『だれともめがあわないの~』
『うらめしや~』
だから、最後可笑しいって!
お化けとか怖すぎるから勘弁して。
『お化けじゃないから!可愛い妖精ちゃんだから!?っていうか、何でそこで怯えるのよ!?』
ごっごめん、じゃあスパーク君っていうやつは、見えないことを良いことに好き勝手やってるって事?
『そんなこと、するわけねーだろぉが!!』
うわっ、びっ、びっくりしたぁ~…、誰?
急に聞こえた怒鳴り声に驚いて振り返る。
すると、髪の毛がメラメラ燃え盛っている、ブリーズさんくらいの身長の男の子が僕のベッドサイドに立っていた。
あ~、もしかして、君がスパーク君?
『おぅよ!俺様がスパーク様だ!シエロとか言ったか?てめぇ、プロクスの弟だからってナメてんじゃねーぞ?コラァ!!』
スパーク君は、黒いTシャツに黒い短パンを履き、その上に真っ赤なポンチョを羽織っていた。
真っ赤なポンチョと、つぶらな瞳がキュート過ぎて、ヤンキー口調が浮いている。
何というか、見た目とのギャップが残念すぎる…。
『うるせぇな~!普通に喋ると氷の野郎に馬鹿にされんだよーコラァ!』
はっ?何?氷の野郎って事は氷の妖精って事だろ?
そいつ、人んとこ馬鹿にする様な卑怯な奴なわけ?
『えっ?しっ、シエロ?』
『俺様が女の子みたいだとか、馬鹿にしやがるんだ…、許せねぇよ、こらぁ…』
威勢の良い口調だったのが、どんどん小さくなっていく。
僕に怒鳴った妖精と別人みたいに弱々しい。
っていうかさ…、今、何つった?
『えっ?馬鹿にするって…』
その前!!
『ふぇっ!?女の子みたいって…』
『しっ、シエロ?聞こえてる?』
そいつは許せねぇなぁ~?
氷の妖精つったかぁ?
OK、そいつは敵だ…。
おいスパーク、そいつが顔見せやがったら僕のところへ来させろよな?
少しばかり、痛い目見てもらおうじゃねぇか?なぁ?
『はっ、はい!!』
『シエロこわい~』
『シエロがあくまになった~』
『ぶーさん、シエロがこわいよぉ~』
シエロを怒らせてはいけない…。
と、この場にいた妖精達は思ったのでした…。