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二十六話目 戻って来た日



 えー、昼前に出て行った妖精達でしたが、夕方になっても戻ってきませんでした…。



 今はお母さんもお兄さんもお姉さんも、み~んな夕飯を食べに出て行ってしまったので、この広い部屋の中に僕独りきりです。


 ベビーベッドにしっかり寝かされている為、何も出来ません。


 僕はまだ寝返りもうてないし、本当に何も出来ない。



 魔法の練習をするにもまだ早いし、また誰かに見つかったらヤバそうだしなぁ…。


 ん~、かと言って昼寝もバッチリしちゃった後だから眠くもないし…。


 はぁ、仕方がない…。


 体操でもするか…。



 手足の指を開いて閉じて、パー、グー、パー、グー。


 しばらくやったら、今度は手足をブラブラ。


 それもしばらくやったら今度はえ~っと、身体をグニャグニャ左右に揺ら…『シエロ、それ不思議な踊りね?』


 !!!!!


『あはは~、ブラブラ~』


『ブラブラ~』


『ラブラブ~』


 うぉあ!?


 いっ、いっいっ、いつから見てたの!?


 声のした方に顔を向けると、ポカンとしたブリーズさんと、雫状の体をグニャグニャ揺らしている3人(?)が居た。


『うん。ごっ、ごめんね?シエロが手と足の指を開いたり閉じたりしてる所から見てたの…』


 全部ーーー!


 うぉあーーー!見ーらーれたーーーーー!?



『ごっ、ごめんね?そんなに恥ずかしい事じゃないし、落ち着いてちょうだい?ね?』


『しんこきゅう~』


『すって~、はいて~』


『はいて~、はいて~』



 うぎぎぎぎぎぎ…。


『死んじゃうから!!シエロ、息吸って!ちゃんと息して!!』


 ……。


 ふぅ、あっ、危なかった…。


『もう!あんた達、シエロで遊ばないの!!』


 あっ、遊ばれてたのか…。


 アクア達の方を見ると、彼?らはケタケタ笑いながらアクロバット飛行をしていた。


 うん、楽しそうッスね?


 グスン…。


『ほらっ!シエロ泣いちゃったじゃないの!?ごめんなさいは?』


『ごめんなさ~い』


『わるぎはないの~』


『なかないで~?』


 ブリーズさんがお母さんに見えてきたところで、涙も止まり、大分落ち着きを取り戻す事が出来た。


 この身体になってから、恐ろしく涙もろくなった気がする。


 赤ん坊だからなのか、僕が取り憑いてしまった、この子の性格なのかはまだ分からない。


 アクア達は本当に悪いと思ったのか、僕の周りを申し訳なさそうにフヨフヨと浮かんでいる。


 もう大丈夫だよ?


 僕こそごめんね?


『シエロやさし~』


『やさし~』


『やさいおいし~?』


 うん、全然違う話しになっちゃった(笑)


 でも、申し訳なさそうにされるよりは全然良いや。



 あっ、そうだ!


 何で急に飛び出して行っちゃったの?


 夕方になっても戻って来ないから、もう戻って来ないのかな?って思ってたんだよ?



『に~にきた~』


『ひからびる~』


『ぼくらやいてもまずいよ~?』



 はい?


 にーに、ってプロクスお兄さんの事だよな?


 何でお兄さんが来ると干からびるのか、全くわからないんだけど…??


 僕が困っているのを見かねたブリーズさんが補足してくれる。


『あのね、シエロ?貴方のお兄さんって、火の属性持ちなのよ。それでね?その、お兄さんは魔力量が多くてね?』


 あぁ、なんだ。


 お兄さんとお姉さんの魔力量が多いのは知ってるよ?


 もう少ししたら、魔力を制御する訓練が始まるって聞いたしね?



『あっ、それは覚え…んんっ!知ってたのね?それなら話しが早いわ?』


 ねぇ、今何か言いかけなか…『え~?何が~?』


 んー。


 何か怪しい気もするけど、ブリーズさんが言い間違えただけかもしれないしなぁ…。


『続けるわよ?』


 あっ、はい…。


『特にプロクス君は魔力量が多くてね?結構漏れるのよ』


 【漏れる】?


 漏れるって何が?


『魔力。そうだ、シエロもよく見ててごらんなさいな。ちょっと嬉しい時とか、悲しい時、気持ちがユラユラ揺れる時、きっと貴方にも見えるわよ?』


 へぇ~、そうなんだ…。


 今度よく見てみるね…。


 じゃなくて、魔力が漏れると何でアクア達が干からびるの?


『シエロ、この子達って、水の妖精よね?』


 え?うん…。


『水はね?火を消す事が出来るから何で?って思うかもしれないけど、余りにも高い火力で炙れば少量の水くらいあっという間に蒸発するわよ?』



 あっ!


 あぁ~…。


 そっか…。


 僕はフライパンに残った水が、カラカラと音を立てながら蒸発する様を思い浮かべた。


 なるほど、そりゃあ僕が水の妖精でも逃げるよ…。


 誰だって命は惜しいもんね…?



 僕は、ちょっと馬鹿にしてた事をアクア達に謝ったのだった。




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