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閑話 続々・学園の七不思議


6月29日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。




「えっ?もしかして、この魚達生きてるの?」


 薬瓶の中を覗き込んだデイビッドの口から、ポツリと言葉が零れた。


 少年達が見つめる先では、銀色に輝く鱗と、その体からしたら不釣り合いな程の大きな尾びれを持った3匹の小さな魚達が、スイスイと薬瓶の中を気持ち良さそうに泳ぎ回っている。


「マジだ…。この液体もただの水だぜ」


 デイビッドが驚愕に満ちた声をあげる。


 よくよく嗅いでみれば、薬瓶の中に入っている液体がただの水だと言うことも分かったが、この薬臭さの中では、流石の犬族でも鼻がイカれてしまって、解りづらかったのだ。


 しかも本当に、本っっ当に小さくて見づらかったが、薬瓶の側面には空気ポンプの役目を果たしているらしき魔道具まで取り付けてあり、この薬瓶が【水槽】である事を裏付けていた。


「何だよ~。ただの魚かよ…。驚いて損したぜぇ~」


「本当で御座るな…。しかし、何故ゆえこの様な面妖な場所に普通の魚がいるで御座る?」


 ふか~いため息をつきながらワンダがブー垂れれば、魚を凝視しながら浅葱が首を傾げる。


 それにつられた七不思議探検隊は、同じ様に首を傾げるしかなかった。


「あはは。それはランスロット先生の愛玩動物(ペット)だよ?」


「「「「愛玩動物(ペット)?」」」」


 少年達の傾いた首が、更に傾いて行く。


 少年達の首の角度が、揃いも揃って80度を越えた辺りで、青年は耐えきれずに吹き出した。


「あはははは。何だよその顔は…揃いすぎだろ…うくく。あ~あ、笑った笑った…。その魚は珍種でさ?何年か前にランスロット先生が見つけてこられたんだ。最初はすぐに標本にする訳だったんだが、先生が魚達に愛着が湧いてしまってね?そのまま飼うことにしたんだそうだよ?」


「「「「へぇ~」」」」


 傾いた首を戻して、少年達は薬瓶…水槽の中の魚達に釘付けとなった。


 その際、またまた仲良く揃った少年達の反応に、青年は耐えきれずにまた吹き出したのだった…。



ーーーーーー


「本当に付いて来てくれるんですか?」


「おう。君たちをこのまま野放しにするよりは安心だからね?案外この学園の中は危険なんだよ?」


 一頻り笑った後、青年は少年達に付き合って七不思議スポットを巡ってやろうと言い出した。


 確かに大人が居れば安心は安心なのだが、何故彼がそこまでしてくれるのかが分からず、少年達は困惑していた…。


「大丈夫だって、そんな顔しなくても取って食やしないさ。ただ、見回り業務の一貫として、君たちを寮まで送り届ける義務があるだけだから」


「でも…」


「かといって、君たちはこのまま大人しく帰ってくれないだろ?送った後でまた抜け出されるくらいなら、一緒に回りきってからの方が俺も君たちを監視出来るからね?」


 何事か口を挟もうとしたアレックスの言葉を遮る様にして、青年は話し続けながら少年達の顔をぐるりと見回した。


 図星をつかれた少年達が押し黙ってしまったのを満足気に見つめながら、青年はもう一度笑った。


「分かりやす過ぎるだろ君たち!」


 と…。



ーーーーーー


「ここが、3番目の【目が動く肖像画】のある、職員室前だな」


 話しを勝手に纏められてしまった少年達は、何故か青年の案内で学園内を巡っていた。


 流石に学園内を見回りしているだけあり、先程迄よりもスムーズに此処まで来る事が出来た。


 しかしーー


「因みに、職員室前にズラリと並んだこの肖像画群。歴代の理事長のだと言われてるけど、実は理事長とは全く関係ない、顔が怖かった先生方の肖像画が並んでんだぜ?知ってた?」


「あっ、そうそう。この肖像画な?勝手に動き出してる訳じゃなくて、侵入者がいないか監視してんの。魔道具だから、怖がらなくても大丈夫だぜ?」


「あぁ、監視システムって言えばさ?次の【一段多い、特別教室棟の階段】もそれなんだよね?夜になるとさ、ウィーンって一段増えんだぜ?それ踏むと、登録されてねー奴は学園内から追い出されんの!なぁ、これってスゴくね?」


 とペラペラ怪奇現象の裏側を喋ってしまうので、まるで【聖ホルド学園真夜中見学会ツアー】と言った様相に変わってきていた。


 しかも青年が、あんまり軽い口調でネタバレしてくるので、最早怖くも何とも無かった。


 これでは本当にただの見学ツアーである。


「あっ!ほらっ、俺たちが近付いたから、肖像画の目が動いたぜ?あの人は特に説教好きで…」


「先生。次に行きましょう」


 浅葱が青年を遮る様に声をかける。


「ん?今やっと動いたとこじゃね?良いの?」


「はっ。時間もありませぬし、はよう次の【屋外実習棟にいる首が無い少年】が見とう御座いまする」


「え?次の一段増える階段は良いの?あっ、ちょっと!」


 七不思議だと思っていたものが五不思議になってしまった少年達は、少しガッカリしながら、次の不思議の舞台。屋外実習棟へと向かった。


 先に歩き出した少年達に、青年は置いていかれては大変だとばかりに慌てて追いかけてくる。


「次の話しもそのシステム何スか?」


 追い付いて来た青年に、アレックスが問いかける。


 すると、


「いや?次はわりとガチめかな?…ある意味ね(ボソッ)」


 と青年が答えた為、少年達は何だか背中の中がゾゾゾと寒くなった様な気がした。


 最後にボソッと呟いた言葉は、少年達の耳には入らなかった。




「どうした?黙り込んで…。着いたぞ?」


 青年の言葉によって、お気楽見学ツアーな気分は霧となって消えた。さっきまで感じていた怖さからくる居心地の悪さが復活したからだ。


 しかし、その居心地の悪さも、実習棟の中から聞こえてくる金属音によって霧散した。


《ガン、ガン、キキキキン!》


「誰かが戦ってる?」



 誰が呟いた言葉だったのか?気がつけば、少年達は凄い勢いで実習棟の中へと駆け込んでいた。



昨日は間に合わず、申し訳ありませんでした。


しかも三部作!とか言っていた割りに、三部では終わらなかったと言う…orz


と言うわけで、もう少し続かさせて頂きます。


明日も…更新出来る様に頑張りますので、宜しくお願い致します!


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