二十四話目 増えてた日
夢を見た…。
いつも夢に出て来る2人の女性達の後ろに、此方の様子を伺う様にして黒いローブ姿の人物が立っている。
その人物は、目深にフードを被っていた為、その表情を窺い知る事は出来ない。
黒いローブの人物の口が動いた。
『ごめんね…』
全てが朧気な灰色の世界で、2人の女性のガーネット色の瞳、そして今回現れた黒いローブ姿の人物だけが色を持っていた。
――――――
あれ?僕、いつの間にか眠っちゃってた?
『おはよ~』
『おきた~?』
『あろ~は~』
んー、やっぱり1人、可笑しなやつがいるな(笑)
おはよう、僕寝ちゃったんだね?
『あかちゃんだからしょ~がないね~』
『ね~』
『あかくないのにあかちゃ~ん』
いや、最後のヤツ、何か悪口みたいになっちゃってるから!
生まれたての時は赤いんだよ?だから赤ちゃんって言うんだよ!?
まぁ、今はそれよりも気になる事があるからいいや。
目を覚ますと、4(・)体の妖精達が僕の顔を覗き込んでいた。
んー、大きさも、人種?も全然違うけど、寝起きによく見る光景だね☆
いや、現実逃避して見なかった事にしたらやっぱり拙いよな。
………あのさ、何か1人増えてんだけど…、どちら様ですか?
寝落ちする前は3人だったし、明らかに1人だけ趣が違うし。
『ヤッホー、お初にお目にかかるね?私ブリーズ、風の妖精ちゃんだよ♪』
あっ、今度は風の妖精なんだ…。
水の妖精はでかい水滴に顔がついてるって感じだけど…。
風の妖精は、リ○ちゃん人形だった…。
いや、ああいう造形の人形っぽいというか、何というか…。
だって、羽が生えた○カちゃんが、葉っぱで作ったポンチョを、黄緑色のワンピースの上に羽織ってる様にしか見えないんだよ?
ザッツ妖精って言っても、何となく分かって貰える気はするけど、とにかくそんな感じ。
で?その、風の妖精ちゃんが何でここに?
『え~?あぁ~、気まぐれ?』
えっ!?何?この人、気まぐれで人の顔覗き込んでたの?
何それ怖い。
『風はいつだって気紛れよ☆ここの前を通ったら、アクア達が呼んでたからさ、何してんの?って聞いたら貴方が寝てたのよね~』
『ぼく~がよんだ~』
『シエロ~、かぜもってるからよんだ~』
『くうきよんだ~』
最後のヤツはやっぱり何か意味が違う気がする…。
ん?僕が風持ちだって、何で分かるの?
自分でもよく分かってないのに。
『シエロ、きのうつかった~』
『いいにおいした~』
『くうきせいじょうき~』
へー、君達、鼻、あるんだね…(棒)
『こら、すぐ飽きないの!まぁそうね、基本妖精は鼻が利くのよ?私も、強い風の匂いを感じたからここら辺を彷徨いてたんだもの』
だってさ、空気清浄機はツッコむのめんどいだろ~?
どう突っ込んだら正解か分かんねーよ。
んで?昨日使ったって言うとやっぱりアレだよな…。
ちょっとしか試してなかったのに、あんなんでも匂いするの?
すると、ブリーズさんは凄い勢いで、首を縦に振った。
ちょっ、首折れる!?
『昨日の残り香がまだ残ってるわよ?貴方の魔力、濃度が高いのね~。昨日使った段階で、噂になってた程だもん』
濃度が高い?
えっと、量が多いとかじゃなくて?
『うん、量はまだそこまで多くないわ。そうね~、とにかく濃いのよ!!』
その濃いってのがイマイチ解らないんだけどさ、どれくらい他の人と違うの?
『え~?そうね~…。蜂が分けてくれる花の蜜と、泉の水くらい違うかな~?』
ブリーズさんは小首を傾げながら少し考えて、そう答えてくれた。
んー、確かに花の蜜とただの水じゃ~、大分違うか…。
『あまあま~』
『シエロのおいし~よ~?』
『うま~い、もういっぱ~い』
美味しい?えっ?甘い?魔力って味あるの?
『んー、シエロ君のは特別甘くて美味しそうかな~…。ついフラフラ探しちゃうくらいには、ね』
ふーん…。
あれ?だったらさぁ、僕毎晩の様に試してたのに今日まで誰とも会ってないよ?
ブリーズさんがわざわざ探してくれてるくらいだし、もっと早く誰かに会えなかったのかな?
『しらないよ~?』
『シエロのにおいかんじたらわかるよ~?』
『なぞはめいきゅういりだ~』
迷宮入りさせんな!?ばっちゃんの名にかけて、何とか解き明かしなさいよ!!
『私が感じたのも昨日が初めてよ~?』
えっ?あっそうなんだ…。
んー、何で昨日から急に分かるようになったんだろ…?
『そうね~、使ったのが上位属性魔法だったとか?風くらいなら他の子達も分かるだろうけど、上位属性だったりすると匂いが分からなかったりもするのよね』
上位属性?
『ん~、例えば…』
『あっ!にーにがきた!』
『たいへんだ!』
『いちじたいきゃく~!』
なっ、何だ!?
急にアクア達が慌てて部屋を出て行ってしまった。
誰?にーにって?
「あっ、シエロおはよー」
あ~、僕のにーにだったのか…。