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二百二十八話目 シエロとゾルフの日


5月25日の更新です。


本日も宜しくお願い致します。



◇◆◇◆◇◆


※宇美彦目線



 荒れ果てた校庭のど真ん中で、ソラがゾルフとか言う、今回の騒ぎを起こした張本人と喋っている。


 俺の角度からだと見えづらいが、ゾルフとか言う奴は己がバラまいた瘴気の池にドップリ浸かっていて、何事かをソラに向かって喚いている様だ。



 ザワザワと声が聞こえた方へ目をやれば、急に戦闘が終わり静かになったからか、校舎の方から遠巻きにこちらの様子を伺っている人影がチラホラと見えた。


 まぁ、気を利かせてくれたルーナスちゃんとブロンデ君ってソラのクラスメイト達が、唯一まだ目を覚まさなかったルドルフ君を担いで救護所まで向かってくれたから、暫くしたら他の先生方もこっちに合流してくれるだろう。



 これで心配なのはソラだけになったが、いくらコロさんが近くで見張っていて、更に封印陣が効いているからソラに手を出す事は出来ないだろうとは思っても、それでも俺はあいつの動向を見張ることを止める事だけは出来なかった。


 ソラは出来れば助けてやりたい何て言ってたけど、あれだけ体を魔物寄りに変化させた相手だ。


 強い念を持って魔王軍の力を借りた事は間違いないだろう。



 どうやって軍の幹部クラスと知り合ったのかは知らないが、簡単に仲間を増やせた事から、【博士】と呼ばれている魔族の爺さんが関わってると考えて良いのかもしれない。



 博士は俺達が長年追っている魔族の1人で、好戦的な魔族の中では珍しく知性派と呼ばれている。


 まぁいくら知性的だと言っても、興味本位で人間をオモチャにする最低な野郎だけどな…?


 博士は人の体を切り刻んだり、培養して全く新しい生物を生み出したりする事に至上の喜びを感じるマッド野郎で、年間千単位の被害者を量産している。


 だからもし分かるのなら、あのゾルフって奴から何としてでも博士の居場所を聞き出し、今すぐにでもそこに乗り込んで退治したい。


 そう思わせる様な、ある意味魔王よりも優先討伐順位が高い魔族だった。



 まぁ、逃げ回るのが上手い野郎でもあるから、あんな末端の部下とも言えない使い捨ての駒なんかに居場所を教えるなんて事はないだろうが――。


「お前が何でも持ってるからだ!だから、俺はお前から何もかも奪ってやりたかったんだよ!!」


 ゾルフって野郎がソラに対して、寝ぼけた事をわめき散らしている声が突如聞こえた。


「あ゛?」


《ビキッ》


 っとしまった…。


 ソラが言い返さない事を良い事に、好き勝手喚くゾルフにイラッとして、両手剣の柄の部分に力を入れてしまった様だ。


 見れば柄の部分全体に罅が入って割れてしまっていた。


 あ~。やっちまったな…。



 裕翔や亜栖実に魔法チートがある様に、実は俺にも女神様から頂いたチート能力がある。


 それは力のコントロールが自在に出来ると言うもので、ソラにもまだ明かしてはいないが、小山ほどもある岩でも、片手の指先だけで摘まんで持てるくらいのパワー特化型チート能力だった。


 まぁ、その力もお察しで、感情が揺れるとパワーコントロールまで揺れてしまうのが難点だったりする。


 怒りで感情が揺れ、今両手剣の柄を粉砕したのもその力のせいなんだけど…。


「この両手剣、重量があって気に入ってたのになぁ…。しゃあない、予備のアックスに持ち替えておくか…」


 ソラから貰った【異空間リング(改)】と言う空間型の魔道具から、刃渡り2mくらい、持ち手の部分を含めると3mくらいあるバトルアックスを取り出す。


 ソラからやるよ!と軽い口調で渡され貰った品だが、下手するとすぐ武器や装備を破壊してしまう俺にはとてもありがたい魔道具だ。


 今までは、バカ高い割に対して入りやしない魔導袋を何枚も買って、それぞれに武器や防具を少しずつ分配して入れていたから、1つにまとめられるって本当にありがたいと思うよ。


「よっ、と…」


《ズドン》


 柄の部分をズルッと引っ張り出した時に、バトルアックスの刃の部分がくるんと回って地面に当たり、軽く地響きが起こった。


 と同時に巻き起こった砂埃を払いながら、取り出したバトルアックスを地面に立てかけて手で支え、そのまま前を見据える。


 両手剣と比べると、こっちの方が重量があるから地面に下ろした時に凄い音がしてしまったな…。


 まぁいいかとソラ達の方を向けば、何故かソラがこっちを睨んでいた。


「宇美彦!そんなもん出すからゾルフが怯えちゃっただろ!?」


「えっ?あ~。わりぃ?」


 何で怒られなきゃいけないんだか分からなかったが、エライ剣幕で怒鳴られたから、反射的に謝ってしまった。


 ………。俺が悪いのか?



◇◆◇◆◇◆


 何で僕に叱られてるのか分かりません。ってな顔をしている宇美彦を再度睨みつけてからゾルフの方に向き直ります。



 ゾルフが僕に対して【お前のせいだ!】的な事を言った辺りから、宇美彦の放つ気配に殺気が混ざり始めた。


 次いで聞こえた鈍い音に振り返ってみれば、得物がモ○スター○ン○ーにでも出て来そうな馬鹿でかいバトルアックスに変わっているし、明らかにゾルフを殺す気満々に見えます。


 お蔭で、やっと話してくれそうな雰囲気だったゾルフは顔を青ざめたまま黙り込んじゃうし、向こうから近付いて来ようとしてた先生方も何人か引き返して行ってしまいました。


 僕が怒鳴ったら、ダダ漏れていた殺気は静まったけど、僕的には勘弁してもらいたい状況には変わらないんだよねぇ~。


 真っ黒い水がパチャパチャと揺れるくらい震えているゾルフを見つめ、僕は軽く【ため息】を吐いた。



《バンッ!》


「うわっ!?ビックリした~」


 震えていたはずのゾルフが、急に壁――封印陣の効果で、透明な筒状の壁がゾルフの周りにある様に見える――に両手を叩きつけました。


 叩きつけたゾルフの両手が、封印陣の効果で溶けたとか、火傷したとかはなさそうだからちょっと安心したけど、いきなり何だって言うんだ!?


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」


「!?」


 何事かと俯いているゾルフの顔を覗き込めば、ゾルフはカタカタ震えながらずっと謝り続けています。


 目は虚ろで、歯も噛み合わずカチカチと鳴らしながら、今にも泣きそうな顔で謝り続けるゾルフは、まるで…。


《バンッバン!》


「僕を見て哀れんだ顔をするな!お前なんか嫌いだ!!いっつも楽しそうに笑いやがって!!!皆からちやほやされて、楽しそうに笑いやがって!!!!」



 壁を何度も叩きながら叫ぶゾルフに気圧されて動けなくなっていると、


《ズルッ》


 ゾルフの両腕だけが何故か封印陣をすり抜けて、そのまま近くにいた僕の首に彼の指が巻き付いた。





破壊魔宇美彦君。多い時は、大きな魔導袋を十数枚持ち歩いていました。


何気に金持ちです(笑)


本日も此処までお読み頂きまして、ありがとうございました。


尚、明日はお休みさせて頂きます。


お休みばかりで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。


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